デジタルトンボ図鑑
モノサシトンボ科 Platycnemididae Tillyard et Fraser, 1938
 国内には,モノサシトンボ科は,3属7種1亜種(8分類群)が分布する.モノサシトンボPseudocopera annulata とグンバイトンボ Platycnemis sasakii を除いて,産地が限局される種が多い.

 ルリモントンボ属はいずれも南西諸島に分布している.リュウキュウルリモントンボ Coeliccia ryukyuensis ryukyuensis は沖縄本島とその周辺の島々に,その亜種アマミルリモントンボは Coeliccia ryukyuensis amamii は奄美大島と徳之島に,マサキルリモントンボ Coeliccia flavicauda masakii は西表島と石垣島に,それぞれ分布していて,分布域は重ならない.

 グンバイトンボ属のアマゴイルリトンボ Platycnemis echigoana は池沼性の種で,青森県,山形県,新潟県,福島県,長野県にのみ分布するので,原則的にそれ以外の都道府県では考慮する必要はない.

 同じくグンバイトンボ属のチョウセングンバイトンボ Platycnemis phyllopoda は2021年に対馬で発見された国内新分布種である.現在のところ対馬以外では考慮する必要がない.類似のグンバイトンボは島嶼(しょ)には分布していない(杉村他,1999)ので原則的に対馬で見つかるグンバイトンボは,まずチョウセングンバイトンボと考えて同定すると良いであろう.ただし過去に対馬でグンバイトンボが見つかったとの情報があるそうだが,これはチョウセングンバイトンボの可能性があるという.なお,対馬には過去にモノサシトンボの記録もあるが,1例だけだという(以上,尾園他,2022).

 モノサシトンボ属のオオモノサシトンボ Pseudocopera rubripes は,東京を中心とした関東一円と,東北,信越に分布する.具体的には,宮城県,新潟県,茨城県,栃木県,群馬県,埼玉県,千葉県,神奈川県,東京都の各都県である.これら以外の道府県では,原則的に考慮する必要はない.なお,オオモノサシトンボとモノサシトンボの中間的な個体が採集されているので,注意を要する.


グンバイトンボ属 Platycnemisとモノサシトンボ属 Pseudocoperaの区別

 以上から,同定上注意しなければならないことは,対馬では基本的にチョウセングンバイトンボとし,グンバイトンボやモノサシトンボではないことを確認する必要があること,アマゴイルリトンボやオオモノサシトンボが分布しない地域ではグンバイトンボとモノサシトンボの区別,これらが分布する地域では,これらを加えた区別ということになる.次の手順で判定するとよい.
  1. 後頭条がある(1).♂には中肢・後肢に軍配状の広がりがある(2)・・・・・・・・・・・・・・ 2.
    後頭条がない(3).♂に中肢・後肢に軍配状の広がりがない(4)・・・・・・・・・・・・・・・・ 3.
  2. 後頭条が後頭部後縁全体にある(5)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ グンバイトンボ
    後頭条が左右の端にあって中央部は切れている(6).生息地が対馬である・・・・・・
            ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ チョウセングンバイトンボ
  3. ♂である・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4.
    ♀である・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5.
  4. 腹部第9節・第10節はほぼ全体が淡色部である.第2側縫線上の黒条は細い(7) ・・・
          ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ モノサシトンボ
    腹部第9節の背面は黒褐色で腹面は淡色である.腹部第10節はほぼ全体が淡色である.第2側縫線上の黒条は細い(7) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ オオモノサシトンボ
    腹部第9節・第10節はほぼ全体が黒褐色である.第2側縫線上の黒条が太く明瞭(8)
          ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ アマゴイルリトンボ
  5. 腹部第10節は全体が淡色である・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6.
    腹部第10節の背面は大部分が黒色で腹面は淡色である・・・・・・ オオモノサシトンボ
  6. 複眼内縁部の淡色斑は大きく発達し(9),第2側縫線上の黒条は細い(7)・・・・・・・・・
          ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ モノサシトンボ
    複眼内縁部の淡色斑はほぼ認められないかあっても細く,第2側縫線上の黒条は太く明瞭(8)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ アマゴイルリトンボ

 グンバイトンボとモノサシトンボしか分布しない地域では,♂は,中肢・後肢の軍配状の広がりで,♀は後頭部の斑紋で区別するのがいちばんよい.グンバイトンボには後頭条があるがモノサシトンボにはそれがなく,淡色の斑紋が複眼内縁部と正中線近くにそれぞれ1対ずつある.


尾園暁・二橋亮・境良朗・日下部満,2022.日本初記録のチョウセングンバイトンボを対馬で発見.月刊むし (613):2-7.














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モノサシトンボ科 Family Platyenemididae

 ルリモントンボ属
 Genus Coeliccia
026. マサキルリモントンボ
 Coeliccia flavicauda masakii
027a リュウキュウルリモントンボ
 Coeliccia ryukyuensis ryukyuensis
027b アマミルリモントンボ
 Coeliccia ryukyuensis amamii

グンバイトンボ属
Genus Platycnemis
028. チョウセングンバイトンボ Platycnemis phyllopoda
VU 029. グンバイトンボ
 Platycnemis sasakii
030. アマゴイルリトンボ
 Platycnemis echigoana

モノサシトンボ属
Genus Pseudocopera
031. モノサシトンボ
 Pseudocopera annulata
EN 032. オオモノサシトンボ
 Pseudocopera rubripes