トンボノート
No.852. 日本のトンボが205種に.2022.6.26.

今年の「月刊むし」3月1日発行の613号に,「日本初記録のチョウセングンバイトンボを対馬で発見」という記事が載りました(尾園他,2022).これは飛来記録ではなく「日本未記録種」の生息地発見記事です.

一昨年与那国島で発見されたサイジョウチョウトンボは,台湾から飛来したものであろうと考えられていて,すでに当地で繁殖していると考えられることから,定着したかもしれないという位置づけでした(小浜,2021).一方,チョウセングンバイトンボは複数の場所で生息が確認されており,幼虫も見つかっています.またこの種のグループには移動性の強い種がいないことから,「対馬が地続きだった時代から分布していた在来種!」である可能性が高いと述べられています(尾園他,2022).

ヒヌマイトトンボが1971年に日本で初めて発見されたとき,The Last New Dragonfly Species from Japan. 日本で発見された最後の新種のトンボ」と記載論文のタイトルに書かれていました(Asahina, 1972).その後香港でも同種が発見され,日本固有種ではなくなりました.今回のチョウセングンバイトンボは,すでに韓国などに分布している既知種ですので,日本での発見が世界初発見というヒヌマイトトンボとは位置づけが違いますが,それでも,まだ日本に飛来種以外の土着トンボが発見されたという点で,驚きを隠せません.

環境省は,このトンボを,種の保存法に基づく緊急指定種に指定しました.

日頃の観察で,このトンボは少しおかしいと感じたら,新しい分布種かもしれないという風に考えることも重要ですね.全日本記録トンボで205種,亜種を別々に数えると,224種類ということになります.当サイトの関連ページのリストもこれを加えて書き換えています.

<引用文献>
尾園暁・二橋亮・境良朗・日下部満,2022.日本初記録のチョウセングンバイトンボを対馬で発見.月刊むし (613):2-7.
小浜継雄,2021.日本初記録のサイジョウチョウトンボ(和名新称)を与那国島で発見.月刊むし(601):34-36.
Asahina, S., 1972. Mortonagrion hirosei, the Last New Dragonfly Species from Japan. Kontyu, 40(1):11-16.