トンボノート
No.821. タベサナエ羽化全開/成虫越冬種.2022.4.10.

掲示板に各地からトンボが出始めた書き込みが続き,気もそぞろの毎日でした.実はすでに2回観察に出ているのですが,いずれも空振りに終わっています.今年は,今頃まだ桜が散り始めというところで,羽化までの積算温量が足りていないのかもしれません.今日は予想気温25度.夏日状態です.さすがに出てくるだろうと言うことで,春一番のトンボの様子を,いつもの場所に見に行くことにしました.

まずはコサナエ属の状態を確認に行きました.例年ですと,羽化が始まるかどうかという日付ですので,出ているとすればタベサナエ.現地に着いて,池に降りようとしたときでした.1頭のサナエトンボが水際から飛び立ちました.羽化しているようです.


▲池から飛び立ってオオイヌノフグリに止まったタベサナエのオス.

水際に近づくと羽化している個体を踏み潰す危険性がありますので,慎重に池の岸辺にしゃがみ込みました.直ちに目に入ったのが,3頭そろい踏みの羽化でした.

▲右端の個体が一番早く羽化していたようだ.最初に処女飛行に飛び立った.

最初の3頭を見つけてから,次々と羽化個体が目に入るようになりました,実はタベサナエの羽化は今まで空振りがほとんどでした.来るタイミングが毎年ちょっと遅かったのです.今年は完全に当たりました.割合短期間で同調的に出てしまうので,タイミングを合わせるのが結構難しいのです.

▲静止期から腹部を抜くまで.タベサナエメス.

▲あちこちで羽化するタベサナエ.一番下は処女飛行するオス.

今日は処女飛行に飛び立つ瞬間をとらえてみようと頑張ってみましたが,タイミングが合いませんでした.処女飛行だけを見たものも含めると,全部で13頭羽化を見ました.これだけ羽化するとトラブル個体も見てしまいます.小さなカエルが羽化途中のタベサナエに跳びかかりました.タベサナエは思わず動いて水の中に落ちました.

▲このカエルが飛びついた.飛ぼうとしたのか岸から離れたところに落ちた.

もうだめかなと思って見ていますと,なかなかこのタベサナエ頑張り屋で,もう一度羽化を継続しようと枯れ枝に這い上がりました.そして,羽を伸ばそうと頑張っていました.春のサナエトンボはよく羽化不全個体を見るのですが,ひょっとしたらこれらは羽化途中で襲われ,羽化を再開した個体だったのかもしれません.

▲枯れ枝に這い上がって(右下),羽化を再開したが,翅はもうかなりよれよれ.

タベサナエとは十分一緒に過ごしましたので,次はシオヤトンボです.ところが,いつも春一番のシオヤトンボが,どこにも見当たりません.今年は春一番をタベサナエに譲ったのでしょうか.しかし,シオヤトンボの池に,成虫越冬種3種が集まっていました.オツネントンボはオスが2頭だけでしたが,ホソミオツネントンボとホソミイトトンボはたくさん産卵していました.

▲去年も見つけるのに苦労したオツネントンボ.今年も数が少ないのか...

▲ホソミオツネントンボ.とてもたくさん集まっていた.

▲ホソミイトトンボ.数はそこそこであった.

オツネントンボの産卵を見たいのですが,去年から,従来の観察地で見られにくくなっています.産卵をビデオ記録したいので,今年は数が少ないけど,ここに足を運んでみようかなどと考えています.でも成虫越冬3種が同じ池にいるというのは,珍しいわけではありませんが,それなりにラッキーという感じでした.

この後,アオモンイトトンボやアジアイトトンボが羽化していないか見に行きましたが,まだのようでした.ということでトンボシーズン開幕.また例年通りのパターンが始まります.