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続 トンボ歳時記
No.646. スナアカネの探索.2018.10.14.

今日は兵庫県南部地用は晴れの予報,北部は午前中雨!,ということで,南部で同じトンボの再挑戦もいいのですが,今日はそれは止めて,飛来種の探索をすることにしました.今日はスナアカネを探しに行くことにしました.じつは,今季すでに2回ほど,タイリクアカネのついでに,もしいれば...,という感じで出かけていたのですが,今日はスナアカネをメインに考えて出かけることにしました.出かけた先では,同じくスナアカネを探しに来ていた知人と出会いました.

▲はじめはスナアカネだとは気づかず,撮影後にそれと分かった.

上の写真は,明らかにスナアカネです.しかしこれを撮ったときは,やや離れていたので胸の部分がはっきり見えず,タイリクアカネかもと思ってとりあえず撮った1枚です.撮影後拡大して確認すると,スナアカネだったので,あわてて撮影をと思ったときには,すでに飛び去っていました.よく考えてみれば,タイリクアカネはあまり棒の先に止まることはありません.スナアカネを疑ってみるべきでした.

さて,到着してすぐに来ていることが分かったので,あとは探すだけです.しばらくあちこち探しましたら,知人が池の向こうの方に止まっている個体を指さして,「あれはスナアカネだと思う」と教えてくれました.確かに止まり方といい,色といい,大きさといい,スナアカネらしい感じです.しかし,深くてそこまでは行けません.

▲池の向こうの方の枝先に止まっている,スナアカネらしい個体.

しばらく様子を見ましたが,どうにもならないので,石を投げて飛ばすことにしました.ところがこれが大当たり! すぐ近くのボチャンと落ちた石に驚いて,この個体が飛び立ったのです.そして向かって左の方に飛んでいきました.そこで,飛んでいった方へ行ってみますと,なんと,水面をホバリングを交えて飛んでいました.「この飛び方といい,色といい,大きさといい,スナアカネに間違いない」と,知人と二人で確かめ合いました.

▲水面上をホバリングを交えて飛ぶスナアカネのオス.

やがて,この個体は,岸辺の草に止まりました.でも止まるのは短時間,飛んだりとまったりの繰り返しです.とにかく刺激しないように,カメラの撮影可能な位置に止まるのを待ちました.位置的には逆光ではありましたが,何度かカメラが届く位置に短時間止まってくれました.短時間というのは,止まっている植物の茎が細く,風で大きく揺れるからのようです.

▲禾本科植物の穂に止まるスナアカネのオス.

▲枯れた葉の先に止まるスナアカネのオス.

▲枯れ茎に止まる.いずれも風で揺れるので安定が悪いらしい.

しかし粘り強く待っていますと,すぐ近くのヨモギ(だと思う)の花のてっぺんに止まりました.ここも風で揺れてはいますが,気に入ったみたいで,長時間止まっていました.撮影もしやすい場所で,やっと,スナアカネだとはっきり分かる写真が撮れました.

▲風に吹かれて翅が上に持ち上がるので,胸側の模様からスナアカネとはっきりと分かる.

▲ヨモギ(だと思う)の花のてっぺんに,こういう感じで止まっていた.

▲顔の拡大とまではいかなかったが,頭胸部の拡大写真.額がさくらんぼ色をしている..

この個体以外にも,もう1頭,また先ほどの池の中の枝先に止まっていましたので,これがスナアカネだとすると,2頭来ていたことになります.

さて,スナアカネを探していて歩き回っているときに,交尾しているタイリクアカネを見つけました.他の静止写真といっしょに最後に紹介しておきましょう.

▲タイリクアカネのオス.

▲タイリクアカネのメス.珍しく?樹上に止まっている.

▲タイリクアカネの交尾.産卵は見ることができなかった.

ここ以外にいった2カ所も含めて,午前中だけという探索でしたが,まあ,成果があってよかったです.あと,アカネ属の飛来種と言えば,オナガアカネ,タイリクアキアカネ,マンシュウアカネなどがあります.しかしこれらは日本海側に行った方が成果が出そうです.本当に今年の秋は日本海側の晴天に日がない.行く気は満々ですが...



続 トンボ歳時記
No.645. キトンボ再挑戦.2018.10.13. Part-2.

今日は,キトンボよりは,オオキトンボの観察を中心に考えていました.オオキトンボ観察の合間にキトンボの記録も撮れればという感じで臨んでいました.オオキトンボの一番乗りが9:35でした.そのあと,キトンボの一番乗りが9:46でした.他の産卵するトンボがいませんでしたので,まず記録を撮りました.このキトンボは打水産卵専門のようで,岸から離れたところで産卵を続けています.

▲9:35,このキトンボのペアは,打水産卵が専門のようである.

▲連結で飛ぶキトンボ.

▲キトンボのオスが,産卵ペアに干渉しようとしている.

▲岸に近づきたいのだろうが,私がいるから来ないのか?.

この一番乗りのキトンボの産卵ペアの後,入ってくるのは,オオキトンボの産卵ペアばかりでした.今日はオオキトンボの方が多いように,そのときは思えました.オオキトンボを追いかけているとき,ふと,足下で,キトンボのペアが,打水−打泥の産卵を行っているのを見つけました.このペアは,本日もっとも私に貢献してくれたペアでした.まず,逃げない.近づいても全然逃げずに産卵を続けてくれます.次に,順光の位置で産卵をしていて,太陽は雲に隠れずさんさんと日射を産卵ペアに与えていることです.おかげで成功率の高い記録になりました.

▲打水−打泥産卵その1:まず水面に打水して,卵に水を含ませる.

▲打水−打泥産卵その2:飛び上がって身体を水平にし,ねらいを定める.

▲打水−打泥産卵その3:水際の泥などに卵を貼り付ける.

▲ほんの少し場所を移動するペア.

▲少し引いて打水−打泥産卵の1サイクルを撮影.まず打水する.

▲打水位置より飛び上がり,少し後ろに引いてねらいを定める.

▲水際の地面に打泥する.

▲そのまま後ろに引くようにして離れる.

▲この時期のキトンボは,オス・メスとも赤みが少なくて「キトンボ」の名にふさわしい.

▲打水して上昇したところ.

▲打泥の瞬間.やはり順光だときれいに写る.

▲メスの黄色味のなかに,うっすらと黄緑味が出ているのが,若々しい証拠.

▲打水の瞬間.メスの腹部先端に水滴ができているのが分かる.

▲打泥の直前の姿勢をやや背面よりから見たもの.

▲打泥の瞬間.岸辺に草が生えているので,草の葉の上に腹部先端が当たっている.

▲オスがメスを放した瞬間.途中から単独産卵を警護する形に変わった.

▲単独産卵をするメス.

▲上空で警護飛翔するオスと産卵を続けるメス.

▲メスが草の中に紛れ込んでもオスはしっかりと見ている.

▲産卵を終えたメスは,一気に上空へと飛び去っていく.

このキトンボのペアを撮影できたことで,多分今日はこれ以上の写真は撮れないという感じでした.打水−打泥産卵という,典型的な産卵をしていたこと,途中でメス単独のオスの警護産卵に移行したこと,など全部やってくれました.しかし,キトンボは,オオキトンボと違って岸辺で産卵してくれるので,どうしても見つけてしまうと撮影に集中してしまいます.次のキトンボは10:56に入ってきたペアです.初めのうち日が陰っていたので,日が当たり始めてからの記録です.

▲10:56,向こうの方で産卵をしているのを見つけ,ゆっくりと近づく.

▲打泥前のねらいを定めているところ.このペアも打水-打泥産卵であった.

▲打泥の瞬間.

▲オスがメスを振り回し始めた.

▲再び打泥.

▲打泥して離れていくところ.

▲打泥の直前.

▲そして打泥.以上打水の瞬間はうまく写っていませんでした.

11:00ころからは,オオキトンボよりキトンボの方が数が多くなってきたように思えます.あちこちでキトンボが産卵をしています.とりあえず近くのペアに絞って記録を撮りましたら,もう1ペアがやって来て,ダブル産卵になりました.キトンボは,個体数が多いときには,同じ場所で複数のペアが産卵することはよくあることです.

▲11:00,太陽が雲に隠され,日陰の時間が長くなってきた.

▲打泥する場所を探っている.

▲産卵途中,岸辺の草むらに上がって飛び回る.

▲飛んでいる途中で,一度だけ草に腹端を打ちつける動作をした.

▲もう一組の産卵ペアがやって来て,一時的にダブル産卵となった..

▲打泥直前の姿勢.

▲産卵を続けるペア.

▲打泥食前の姿勢.

▲打泥直前の状態.

▲若いペアできれいである.

次のペアは11:08です,と言いたいところですが,カメラを向けたのが11:08だというのが正しい言い方です.複数のペアがあちこちで産卵しているので,もう何組目のペアかは分からない状態です.さて,次のペアは,打水産卵専門です.この池のキトンボは打水産卵の専門家も結構多い.キトンボの複数の産卵戦術が見られる面白い生息場所といえるでしょう.

▲11:08,打水産卵をするキトンボのペア.

今日はもう食傷するくらいキトンボとオオキトンボを観察できました.キトンボはこれからまだ2ヶ月ほど観察ができるトンボです.この時期にこれだけ観察すると,11月に入ると見るトンボがないような気になります.

ところで,ギンヤンマに襲われるオオキトンボのペアを紹介しましたが,今日は,キトンボも食べられるところを見ました.産卵が終わって,オスがメスを放したところ,そのメスを複数のオスが追いかけて,ぐるぐる回るように飛びました.メスは逃げるのに必死でしょう.その隙を狙ってギンヤンマがメスを捕まえて飛び去ったのです.メスはオスに気をとられていたのでしょうね.




続 トンボ歳時記
No.644. オオキトンボ再挑戦.2018.10.13. Part-1.

今日は午前中晴天の予報で,これはテレビ各局の天気予報で一致していますので,アカネ属の観察にはもってこいの日となりそうです.今年まだ観察していないアカネ属はアキアカネとノシメトンボですが,これらは兵庫県の北部で観察しようと予定しています.兵庫県北部は今日は一日曇りの予報で一致していますので,南部で,すでに観察を終えたアカネ属の再挑戦ということになります.チャンスは徹底的にの信念のもと,先日出かけた池へ,オオキトンボとキトンボを観察に行くことにしました.今日は太陽光を生かして,できるだけ順光で記録することにしました.写真の枚数が膨大になりましたので,まずはオオキトンボから紹介していきます.

現地に入ったのは,9:20でした.池はまだ静かで,一見するとトンボはまだ飛んでいませんでした.空は青空,少し雲が出ていましたが,まずまずの天気です.10分ほどしたとき,オオキトンボが池面を飛び始めました.オスの停止飛翔です.

▲オオキトンボの活動の始まり,水面上をホバリングしてパトロールを始める.

9:35,早速オオキトンボの産卵ペアが入ってきました.先日は10:20ころでしたので,晴天のせいか,早い出勤という感じです.今日は太陽を背にする位置で撮ろうと,水に入ってトンボより太陽側へ行こうとするのですが,なかなか思うようにいかないものです.オオキトンボは岸から離れたところで産卵するので余計に難しいです.このメス,よく見ると腹部が曲がっているようです.多分羽化時に何か事故があったのでしょう.でも産卵は不自然なこともなく行われていました.

▲9:35,今日一番目のオオキトンボの産卵.メスの腹部が曲がっている.

▲岸から離れたところで産卵して,岸近くにはなかなかやってこない.

▲どういうわけか,逆光側へ行くのだ.

次に入ってきたのはキトンボの産卵ペアでした.これはPart-2.で紹介するとして,次のオオキトンボを待ちました.少し間が空いて,10:13,次のペアが産卵に入ってきました.今度は少しだけ岸近くで産卵してくれました.また,私が太陽を背にする位置に立っても,あまり位置を変えずに産卵を続けてくれました.でも,一定の距離を置くような動きは続け,近寄ることはなかなか難しい.この池のオオキトンボは非常に神経質な気がします.

▲10:13,今日二番目のオオキトンボのペア.

次のオオキトンボは,10:26に入りましたが,かなり岸から離れたところで産卵するばかりでした.このペアはギンヤンマに追われて,タンデムを分離し,途中でどこかへ行ってしまいました.そう,このギンヤンマ,オオキトンボの産卵場を狩猟場にしているギンヤンマなのです.

▲10:26,かなり岸から離れた場所で産卵するを続けるペアであった.

さて,この後怒濤のごとくと言ってよいほど,次々に産卵に入ってきました.まず10:29のペア.近づくことができず遠くから記録を撮るだけで終わりました.続いて10:31.もう複数のペアが産卵している状態になりました.こうなってくると,撮りやすいペアにカメラが向きますので,もう,どれがどれか分からなくなりました.

▲10:29,岸からかなり離れた位置で産卵を続けた.また私とも距離をとり続けた.

▲10:31,次のペアが入ってきたが,この時点で複数のペアが産卵している状態になった.

先の10:31のペアの後,11:00を過ぎるまで,途切れることなくオオキトンボが産卵に入ってきました.その間,撮った写真を確かめる間もなく,記録を撮り続けました.これほどたくさんのペアが産卵に来てくれると,トンボの観察も楽しくなります.トンボがいないと嘆いていたのが嘘のようです.

▲10:42.10:31のあと,少し間が空いたのは,キトンボを観察していたためである.

▲10:42.打水の瞬間をこの位置から見ると,相当の勢いで水を打っていることが感じ取れる.

▲10:45.間もなく打水に移行する直前の姿勢.

▲10:46.打水が終わった後の姿勢.オス・メスの角度が上と異なる.

▲10:46.打水の後かなり高く上がっていることが分かる.

▲10:46.水面に近づいて,打水に移行する直前.

▲10:49.複数のペアが産卵していることが分かる.

▲10:51.トンボより太陽側へ移動しようと岸を走ると,それを追い越すようにトンボも同じ方向に飛ぶ!.

▲10:55.もう,とにかく,近くにいたものを撮るという感じで撮影している.

▲11:00.今日は逆光にならないよう意識して撮影したので,明るい写真になっている.

▲11:00.引きずるように打水している.

写真に撮影時刻を添えておきましたが,間が空いているのは,2回ほどキトンボの観察をしていたためです.その間もオオキトンボは次々と飛来して産卵をしていました.結局11:30くらいまで産卵は続いたようです.11:00を過ぎると,キトンボの産卵の方が優勢になりました.オオキトンボは産卵を続けてはいますが,目立たなくなりました.そんななか,最後に,ギンヤンマがオオキトンボのペアを補食するのを見てしまいました.思わずシャッターを切ったのでピントが甘いのですが,大切な記録ですので,ここに収めておきたいと思います.

▲11:20,このペアがギンヤンマに襲われるのだ.オオキトンボのオスがペアを見ている.

▲この産卵ペアを襲撃するギンヤンマと,かわして逃げるオオキトンボのペア.

▲なおも執拗に追いかけるギンヤンマ.

▲ついにギンヤンマがペアの後ろのメスにつかみかかった.

▲もつれあう,ギンヤンマとオオキトンボのペア.

▲少しもつれながら飛び回った後,オスはメスを放して難を逃れた.

ギンヤンマは,このオオキトンボの産卵場を往ったり来たりしながら飛んでいます.見ていると,特にタンデムで産卵しているペアをよく追いかけています.カエルが跳ぶがごとく,打水するオオキトンボめがけて水面に飛び込んだこともありました.明らかに捕食しようとしているのです.タンデムで産卵するペアは動きが遅くなるので,狙いやすいのでしょう.オオキトンボのペアはうまくよけて産卵を続けていますが,時には捕まってしまうようです.絶滅危惧種が普通種のギンヤンマに食われるという構図は,人間にとってはなんとも皮肉な光景ですが,これも自然の食物連鎖なのですね.絶滅危惧種といってもかつてはたくさんいたわけですから,本来,他の捕食者の餌となっても立派に個体数を維持できていたわけです.そういう意味では,今後もこの池のオオキトンボの個体数が維持されていけるなら,絶滅危惧種を「維持」できる健全な生態系がここにあるということの証拠です.捕食者を人間の手で減らさねばならないようになれば,もはやその生息場所の生態系は壊れているという証拠でしょう.

帰る前,オオキトンボのオスが日向で休憩していましたので,一枚記録しておきました.

▲静止するオオキトンボのオス.


さて,この記事の最後に,その他のトンボたちを記録しておきます.キトンボとオオキトンボが優勢で他のトンボたちになかなか目がいきません.今日はコノシメトンボは少なく,オス数頭が水面に出てホバリングしていました.産卵は1ペアだけ目撃しました.タイリクアカネがやって来ていました.あと,アオイトトンボはたくさん活動していました.面白かったのはコフキトンボがまだ生き残っていたことです.小型の個体で,多分二化目でしょう.

▲コノシメトンボオスのパトロール飛翔.

▲タイリクアカネのオス.

▲アオイトトンボのオス.

▲アオイトトンボの交尾.

▲コフキトンボ.




続 トンボ歳時記
No.643. タイリクアカネの観察.2018.10.12.

なかなかすきっと晴れません.今日は空高く絹雲がうすく広がり,太陽にフィルターがかかっているような空模様です.気温は20度に届いていないようで,フィルター太陽では地面の輻射熱もあまり期待できません.おまけに少し風がきつい.やっと秋らしくなったのはいいのですが,秋のトンボ観察は,すっきりとした青空でないと,トンボがあまり出てこないのです.まあそんなで,内心欲求不満を抱えながら,今日は都市の公園へタイリクアカネを観察しに行くことにしました.

9:18に到着,町中では車を駐車場に入れなければなりません.まだ空は曇っています.西の方に青空が見えるのでそれがやってくるのを期待して,水辺を歩きました.トンボたちは何もいません.しばらく行くと,西の青空の部分がこちらへやって来て,太陽の力が強くなりました.なおも歩いて行くと,木製の手すりに,タイリクアカネのメスが止まっていました.そしてさらに太陽の力が強くなってくると,オスもちらほら出てきました.

▲まだ空は曇っているが,タイリクアカネのメスが手すりに止まって出動準備.

▲公園の石に止まるタイリクアカネのオス.

11:00ころになるとやっと日差しも強くなり,服を通して,トンボが活動しそうな暑さを感じ始めました.ずっと以前に観察したところへ陣取り,タイリクアカネを待つことにしました.その池の上をギンヤンマがパトロールしていました.

▲人工池の上をパトロールするギンヤンマ.

ふと足下を見ると,小さな黄褐色のトンボが,単独で打水しています.ちょっと見かけない色彩と大きさです.はじめはすぐに何か分かりませんでしたが,近づいて目を凝らしてみますと,タイリクアカネのメスでした.この時期・時間なら,普通は連結産卵をしているはずですが,単独でチョンチョン打水するのは,きっとオスに出会うことがなかったからでしょう.確かに水辺をずっと歩いたときに見たオスの数は,せいぜい2,3頭という感じでしたから.

▲ふと足下を見ると小さな黄褐色のトンボが打水産卵をしていた.

▲打水の瞬間.

▲打水後の水紋が写っている.

▲近づいて目を凝らしてみると,タイリクアカネのメスだった.

私が近づくと微妙に距離をとって産卵を続けます.私の動きが気になるようです.そこで,じっと待つことにしました.私が身体の動きを止めると,安心したのか,近づいてきて産卵しました.幸いこの産卵中は日が差していましたので,トンボが明るく撮れました

▲こちらが動かなければ,かなり近づいてきた.

▲旋回している.

▲打水の瞬間.水をかなり深くなでている.

▲また向きを変えて....

▲打水の瞬間.

やがて,産卵を終えて,上空へと飛び去りました.タイリクアカネの単独産卵はあまり見ることはないのですが,やはり連結産卵も見ないと気が収まりません.少し移動して探すことにしました.少し歩くと,別の場所で,また単独産卵をしているメスに出会いました.やはりオスが少ないのかなぁ.

▲少し向こうで,別のメスがまた単独産卵をしていた.

▲今度は水に入って記録を撮ることにした.

▲足下にやって来て,私の周囲を回りながら打水する.

▲日陰から出て日向で産卵し始めた.

▲チョンチョン打水を続ける.

▲私の周囲をあちこち移動するので,目が回りそうであった.

▲今度は逆光の位置に入った.

こうやって写真を並べてみると,タイリクアカネのメスというのは,本当に地味な色彩のトンボです.一番上の静止の写真を見ると分かりますが,メスの淡色部は,微妙にオリーブ色が混じっているのです.このオリーブ色が濃いメスは,なかなか渋い色彩に見えるんですけど,今日はそういった個体には出会えませんでした.というか,タイリクアカネ自体が非常に少ないと言ってよい感じです.ここまでで,オス5頭,メス3頭を見ただけです.この公園には,今年はタイリクアカネがあまり集まっていないようです.

連結産卵は見られないかと諦めかけていたとき,連結産卵をやっているペアを見ました.しかし,時すでに遅しといった感じで,近づくまもなく,産卵を終えてメスは飛び去ってしまいました.まあ,証拠写真という程度で,最後にそれを載せておきます.

▲やっと連結産卵しているタイリクアカネのペアに出会えたのに....

そうこうしているうちに空がまた曇り始めました.今日はもう一つ二つ都市公園の池に行こうと思っていたのですが,ちょっと気持ちが萎えました.スカッとした秋晴れは,まだしばらく望めそうもないようです.




続 トンボ歳時記
No.642. コノシメトンボ,オオキトンボ,そして....2018.10.9. Part-2.

今日の観察の主目的は,コノシメトンボです.コノシメトンボは各地で見られますが,「確実」に見られて,かつ撮影しやすい場所,というのが今の私にはありませんでした.そこで,15年も前に来ていた生息地にやって来たわけです.でも結果を言うと,コノシメトンボの産卵は3回だけ.オオキトンボやキトンボの方が圧倒的に多かったのです.まあ嬉しい誤算といってもいいかもしれませんが,以外と普通種に苦労するというのは,皮肉なものです.コノシメトンボのオスは結構いて,10頭近くが,水面に出てホバリング飛翔しています.きっとメスを探しているのです.

▲水面に出てホバリングしているコノシメトンボのオス.

コノシメトンボの色はどちらかというと暗い色なので,産卵していても,キトンボやオオキトンボほど目立ちません.しかも結構動きが小さいのです.また岸近くというよりは少し岸から離れたところで産卵します.これは,つまり,完全に逆光になるということです.

▲コノシメトンボの産卵.打水した瞬間.

▲コノシメトンボの打水産卵.

▲チョンチョンと軽く打水するのが特徴.打水後あまり高く上がらない.

▲打水の瞬間.

岸辺に止まっているオスの顔写真を撮りました.この後も産卵に入りましたが,あまりうまく記録ができませんでした.主目的のトンボがいちばん貧弱な結果でした.また,市街地の池などで,コノシメトンボの記録を撮りたいと思っています.

▲コノシメトンボオスの顔写真.コノシメトンボは顔面まで赤くなる,唐辛子トンボだ.

さて,次はオオキトンボです.キトンボとオオキトンボが同じ池にたくさんいるというのはあまりないことです.平地の池でありながらまわりに樹林があるからでしょうね.さて,池に到着したころのオオキトンボは,例によって,オスが岸辺に止まったり,ホバリング飛翔しながら,少し岸から離れた池面を飛んだりしていました.産卵時間帯が来る前の,朝のオオキトンボの飛翔です.たぶんメスを待っているんだと思います.

▲岸に止まっているオオキトンボのオス.

▲驚かせるとこのように樹上に上がることもある.

▲水面に出てパトロール飛翔するオオキトンボのオス.

▲ホバリングしてじっと同じ場所に停滞するオオキトンボのオス.

最初のペアが産卵に訪れたのは,10:20くらいでした.オオキトンボは普通水落をした池の,水際の泥上で,打泥産卵します.しかし,この池も,他の池にもれず,満水状態でした.こういうときは,だいたい打水産卵をします.そして,そういうときは,やや,岸から離れた場所で打水することが多いのです.今日もその傾向が強く,あまり近くで記録を撮ることができませんでした.

▲オオキトンボは,打水後,コノシメトンボに比べると結構高い位置に上がる.

▲オオキトンボの打水の瞬間.かなり深く水を掻いている.

▲キトンボといっしょに産卵するオオキトンボのペア.右がキトンボ.

▲打水直後のオオキトンボのペア.なんか水が泡だって汚らしい感じがする

▲岸近くにやって来ることもあったが....

次の産卵ペアは,結構岸近くで産卵してくれました.ただ,今日は,キトンボでもそうでしたが,ピントに弱い日のようです.あまりうまく記録が撮れませんでした.浅い水際で打水産卵しています.池の底が見えるような浅さです.

▲底が見えるような浅い水際で産卵をするペア.

▲打水直前のペアの姿勢.背中側のオス・メスの角度が180度より小さくなっている.

▲打水直後のペアの姿勢.背中側のオス・メスの角度が180度より大きくなっている.

▲やっとのことで近くでもピントの来た写真が撮れた.

▲浅い水際で打水する瞬間.

その後のこのペアは,私の動きがやや気になるのか,私から逃げようとする動きが多くなりました.そして少し岸から離れた位置で産卵しました.岸に近づくときは私から離れた位置でした.今日は白い服を着ていったのが間違いだったかな.

▲岸から離れた位置で産卵を続けた.打水後の水紋が見える.

▲岸近くで産卵するときは,私から離れている.

▲草が生えている間で打水するペア.

一つ特筆すべきこととしては,以前マイコアカネの観察でも書いたことですが,この池でも,やたらとギンヤンマがキトンボやオオキトンボの産卵場に集まってきて,飛び回っているのです.ときどき急旋回して産卵しているペアに近づこうとしたりしました.産卵ペアは狙われていることを知っているのでしょうか,さっとよけて,何事もなかったように産卵を再開しました.ギンヤンマは,アカトンボの産卵場を餌場にしているのは間違いないようです.というのも,産卵が終わった後,ギンヤンマたちはだんだんとその場からいなくなっていったからです.ただ今日は捕まったアカトンボは見ませんでした.

▲アカトンボたちの産卵場を飛び回るギンヤンマ.

さて,面白いもので,11:00を過ぎると,ぱたっと産卵が終わってしまいました.キトンボもオオキトンボもコノシメトンボも,産卵にやって来るペアはいません.11:15くらいまで待ちましたが,それでもやって来ませんでした.まあ,所期の目的もなんとか達成できたので,帰りに池のまわりを歩きながら,この池で見られたいくつかのトンボを記録しておきました.ナニワトンボ,マユタテアカネ,ナツアカネ,それ以外にリスアカネもいました.アキアカネがいないのが寂しい感じです.そして,タイワンウチワヤンマもまだ健在でした.このトンボ,兵庫県南部では,キトンボが飛ぶころまで生き残っています.

▲ナニワトンボのオス.これ1頭だけが,キトンボらに混じって止まっていた.

▲マユタテアカネのオス.交尾や産卵も目撃した.

▲ナツアカネのメス.付近の田んぼで産卵しているのだろう.

▲タイワンウチワヤンマのオス.10月まで生き残っている.3頭ほどいた.

この池を後にし,帰りに少し田園地帯に寄ってみました.キトンボの他,ナツアカネが稲刈り後のひこばえが出ている田んぼで産卵していました.近づくとペアは離れ,メスが止まりました.オスは産卵を催促するように,しばらくメスのそばでホバリングしていました.

▲ひこばえの中,産卵を終えたナツアカネのペア.オスがメスを催促しているように見える.

今日はあえて短時間で切り上げました.しかし中身の濃い観察にはなりました.トンボを撮影する光の状態をもうちょっと考えて撮影位置を決めないといけませんね.逆光位置ばかりで,ストロボに頼りすぎた写真が多くなりました.次はアキアカネだ.




続 トンボ歳時記
No.641. キトンボの観察.2018.10.9. Part-1.

今日は兵庫県南部地域は午前中が晴れということで,アカトンボの観察にはちょうどよい天気予報.コノシメトンボを目的に出かけることにしました.コノシメトンボは,どちらかというと海岸近くの池によく集まるように感じているので,15年以上も前にコノシメトンボの産卵をビデオに撮った池に行くことにしました.ここには,そのころ,キトンボやオオキトンボもいましたので,まだそれらが生き残っているかどうかの調査も兼ねています.

現地到着は9:45ころでした.まずは池の周囲を歩いてみました.すると,あちこちにキトンボが止まっています.私がそばを通ると,ぱっと飛び立ってホバリング飛翔をします.キトンボまだいたんですね.今日は複数のアカトンボを観察できそうです.特にキトンボの個体数が多かったので,これと,他のトンボを分けてまとめることにしました.

▲池岸に止まるキトンボのオス.

▲私が横を通過すると,パッと飛び立ってホバリングし,様子をうかがう..

▲しばらくホバリングすると岸に近づき,止まろうとする.

▲あまり脅かしすぎると,木の上に上がって止まる.

特にキトンボがよく集まっている,池の浅い部分に陣取ることにしました.ここにはキトンボ以外にもいろいろなトンボがいましたが,これらはPart-2.で紹介することにします.さて,一通り池の様子を確認し終わったころ,10:15ころです.キトンボが産卵にやって来ました.ほとんど退屈することもなく,産卵観察が始まりました.

▲キトンボの「重連」が,産卵に入った.

▲草の生えている岸辺での産卵である.

▲打泥あるいは打水のポイントを探っているのだろうか.

▲見ての通り,通常の打水産卵である.

キトンボの典型的な産卵様式は,まず岸近くの水面で打水し腹部先端に水を含ませた後,岸の泥部分に打泥して卵を貼り付ける,という打水−打泥の繰り返しの行動です.しかし,ここの池の岸辺には裸の泥が露出していません.見ていますと,通常の打水産卵を繰り返しています.ただ,腹端を打ちつけるポイントは,岸辺の水際です.

▲オスが下降の体勢をとると,メスは腹部をやや上方に反らし,打水の準備を整える.

▲まさに水際に打水する.

▲岸に沿って少し移動しているペア.

▲また水際に打水した.

▲さらに移動し....

▲また水際に打水する.このような行動を繰り返している.

このペアは結構サービス精神が旺盛で,長い時間産卵を続けてくれました.岸から離れることもなく,あちこち私から逃げるように遠ざかろうとはしますが,すぐにまた近づいてきて産卵をします.撮影場所が池の西岸なので,太陽が照りつけ,逆光になります.池に入って撮るべきでしたね.

▲私の動きを気にしながら,産卵を続ける.

▲旋回するキトンボのペア.

▲あっちへ行ったりこっちへ行ったり,飛び回るペア.

▲そしてまた打水するポイントを定めて....

▲打水する.

産卵の時間帯になったようです,次々にキトンボのペアが入ってきます.オオキトンボも産卵を始めました.コノシメトンボも産卵を始めました.こうなるともうどれを撮っていいのか分からなくなります.今日のねらいはコノシメトンボですし,オオキトンボはキトンボほどは多くないので,これらを優先し,その合間に次の産卵ペアをねらいました.次のペアは,少し池岸から離れたところでも産卵をしました.ほぼ完全な打水産卵をしています.

▲最初は,普通に岸辺の方をねらって,池に平行に飛ぶ.

▲そして,池岸の水際で打水する.

▲ところが,体を岸とは反対側に向けて飛び....

▲普通の打水産卵をした.腹部先端が水中に沈んでいる.

次のペアは,少し角度的に,順光になる岸辺で産卵をしてくれました.しかも全然逃げることなく,私の真下で産卵しています.ところが,近すぎてピントが合わず,ぼけピンの大量生産に終わってしまいました.いくつか写っていたものを最後に紹介して,キトンボの観察を終えることにします.

▲同様に岸辺近くで産卵をする次のペア.

▲目の前で産卵したので,かなり大きくファインダーに入った.

▲順光になる位置で産卵してくれたのでキトンボの色が出ている.

▲産卵している岸辺の微小環境はこんな感じである.

▲岸辺の水際に打水しようとするペア.

▲真下で産卵しているペア.

▲かなり長い間産卵してくれたが,これでほぼ終わりとなった.

この池での観察を終えた帰りに,ちょっとだけ別の田園地帯を歩きましたら,キトンボが止まっていました.太陽を浴びて輝く黄色い翅がうまく写っています.ということで,Part-2.に続きます.

▲別の場所で見つけたキトンボのオス.




続 トンボ歳時記
No.640. 絶滅危惧I類 CR+EN のトンボ調査.2018.10.8.

今日早朝のNHKのデータ放送の天気予報によると,兵庫県北部(豊岡市)は一日中晴れマーク.しかし,Yahooの天気予報では昼過ぎを除いて雨と曇りマーク.どちらを信じていいのやら,まあ人間というものは,自分の都合よい方を信じたがるもので,アキアカネの集団飛行を見たかったので,NHKを信じて兵庫北部へ出かけてきました.

▲兵庫県南部は文句なしの秋晴れ.

ところが,遠阪トンネルを抜けると,空はどんよりと,重たい感じの雲が一面に垂れ込めていました.でも,雲のすき間の一部に青空も見えましたので,そのままさらに北部へ進みました.しかし,豊岡市に入ったあたりから,なんとまあ,雨が降り出し,どうしようもない感じになりました.今日の相手は,繁殖活動が晴天の午前中だけという気難しいものなので,8:15,転進することを即断しました.Uターンして今来た道を帰ることにしました.

▲豊岡市.国道312号線からの景色.

真っ向から矛盾する天気予報を目にした場合,本当にどう判断していいのか分かりませんね.NHKのデータ放送にはよく裏切られている感じがします.とまあ,愚痴を言っても仕方ないので,転進しながら,今日のテーマを考えました.その結果,タイトルのように,兵庫県に生息し,今の時期に見られる絶滅危惧I類 CR+EN を探索することにしました.兵庫県には,CR+EN(Critically Endangered + Endangered)に指定されているトンボは5種います.このうち,ヒヌマイトトンボは今の季節にはもう見られないでしょう.またベッコウトンボはおそらく県内絶滅しています.残りの3種は,コバネアオイトトンボ,マダラナニワトンボ,オオキトンボです.これらは今がシーズンの種ですので,これらを探すことにしました.

▲兵庫県内に見られる絶滅危惧I類の5種.いずれもオスである.

まずはマダラナニワトンボから始めることにしました.マダラナニワトンボは県内減少が著しいトンボで,私は2016年を最後にその姿を見ていません.昨年2017年は事情があって調査に行けませんでした.さて,転進して,そのかつての生息地に着いたのが10:15,池には,アオイトトンボ,ネキトンボ,キトンボが飛んでいました.ここでは11:15まで待ちましたが,まったく姿を見せませんでした.2016年は12:00にオスが出てきたということを,今日は急な予定変更でチェックできていなかったので,まあしかたありません.

▲訪れた池にいたキトンボのオス.

▲ネキトンボのオス.ネキトンボは産卵も行われていた.

12:00までいなかったこともあり,マダラナニワトンボがこの場所で消滅したかどうかは断定できません.しかし,マダラナニワトンボがが舞う姿が定常的に見られるような状態ではなくなっています.個体数は0に近く,もう,県内絶滅もそう遠いことではないように思います.

▲2012.10.13. 今日訪れた池で観察したマダラナニワトンボの産卵.

さて,次はオオキトンボの様子を見に行くことにしました.兵庫県ではまだオオキトンボはどちらかといえば多く残っているように思えます.毎年必ず姿を見かけますし,あちこちの池で産卵しているのも見ています.今日は,例年の観察場所へ行ってみました.残念ながら,池は満水状態.今年は台風などで雨が多く降ったせいか,あちこちの池が満水です.以前,満水でもオオキトンボが産卵していたので,とりあえず池の周囲を回ってみました.すると,池の横の田んぼの電柵に4頭のオスが止まっていました.この池に来ているようですね.オオキトンボは打泥産卵だけでなく打水産卵もしますので,満水でもどこかで産卵しているのでしょう.それから,この池では以前にマイコアカネが少数見られていたのですが,今日,久しぶりにオスを見かけました.まだ細々と命をつないでいるようです.

▲電柵に止まるオオキトンボのオス.

▲電柵の杭に止まるオオキトンボオスの顔.

▲この池にはマイコアカネが健在であった.

さて,最後は,コバネアオイトトンボです.この5年間ほど,私はコバネアオイトトンボの姿を見ていません.もう探す場所がないといってもよいほどなのですが,ここならという場所を訪れてみました.すると,なんと,池の周囲の草むらに,複数のオスがもぐり込んでいました.コバネアオイトトンボはまだ県内に生き残っていたのです.これは今日の最大の発見です.これで,兵庫北部へ無駄足を運んだ悔しさが吹き飛びました.北部が雨でよかった,雨でなかったら,多分いないだろうと思っていたこの場所へは足を運んでいませんから.

▲他のアオイトトンボ属とは違った上品さがあるコバネアオイトトンボのオス.

▲胸側の薄緑色が独特である.

▲草むらにもぐり込んでいたオスたち.

▲コバネアオイトトンボオスの顔.

産卵していないかと探してみましたが,それは見つかりませんでした.なお,この池の草陰で,リスアカネが産卵をしていました.

▲コバネアオイトトンボを見つけた池で産卵するリスアカネ.

今日は絶滅危惧I類のトンボを探しに行きました.マダラナニワトンボが見られなかったときに頭をよぎったことですが,最近ものすごい喪失感に襲われています.私が本格的にトンボ調査を始めたのが1988年あたりでした.そのころは,次々に新しいトンボやその生息地を発見し,いわば宝物がどんどん増えていった時代でした.ところが最近は,その宝物を失うばかりです.今日のコバネアオイトトンボの発見は,そういう意味では珍しく得た宝物でした.




続 トンボ歳時記
No.639. オオアオイトトンボの三重連.2018.10.7.

今日の予報は午後に晴れるということですが,午前中は雲がどんより垂れ込め,夕方に所用があるという,タイトなスケジュールしか組めない日になりました.3時間ほどしかなく,今の季節,午後に観察ができるトンボといえば,オオアオイトトンボしかありません.まだ少し早い感じもしますが,まあ,大丈夫でしょう.ただ,産卵のピークは15:00以降で,私が引き上げなければならない14:30はギリギリというところ.さて結果は...

到着して,池にせり出している樹木の枝を見上げてみました.しかし何も見えません.やはりまだ早かったか,と思いました.そんなとき,足下を,オオアオイトトンボのオス−オス−メスの三連結が飛びました.そしてすぐ前のヒメコウホネの茎に止まりました.いやはや,珍しいものを見たということで,気持ちは一気に盛り上がりました.今日のタイトルを「三連結」とせず「三重連」としたのは,この三連結トリオ,結構よく飛び回って,蒸気機関車の三重連を思い出させられたからです.

▲ヒメコウホネの葉柄に止まるオオアオイトトンボの三連結.

程なくこの三連結は樹上に上がりました.障害物のないところに止まってくれるので助かります.ただ少し遠いので,ピントを合わせるのが大変でした.そうこうしていると,不思議なもので,樹上に止まっている別のオオアオイトトンボが目にとまり始めるのです.まずは三連結のすぐ横に交尾態のペアがいるのに気がつきました.さらに,単独オスも樹上を結構飛び回っているのも見えてきました.この単独オスは,交尾ペアにつかみかかりました.三連結が飛び立ち,そのすぐ横を通り過ぎました.樹上ではいろいろとオオアオイトトンボの戦いが繰り広げていたようです.

▲樹上に上がって,枝にぶら下がる三連結.

▲三連結は少し移動,そのすぐ手前には交尾ペアがいた.

▲この交尾ペアに,単独のオスが攻撃を仕掛ける.

▲交尾ペアを攻撃するオスのすぐ横を「三重連」が飛ぶ.

三連結はまた止まりました.交尾ペアは少し場所を移動して交尾を継続しています.カメラを引いてみると,三連結と交尾ペアが同じ枝に止まっているのが分かります.

▲メスが枝に止まるようにして静止した三連結.

▲交尾は継続しているが,....

▲場所を少し移動して,さらに交尾が継続した.

▲三連結と交尾ペア.

交尾ペアはやがて交尾を解きました.以前の観察では,この時刻,つまり14:00過ぎには,交尾を解いてから産卵に移行せず,じっと枝に止まっているというのを見ています.このときは,かなり待ちましたが,結局産卵はしませんでした.後日もっと遅い時刻にそこを訪れたときは,産卵をたくさん見ました.そういった観察から,早くても15:00を回らないと,産卵を始めないように思われます.そういう経験をしているので,今日はここまでかと思いながらも,若干の期待を持って見続けていました.なんと,神様はいるものですね.このペア,少し移動して,産卵の姿勢をとったのです.写真を見ると,固い樹皮に産卵管を突き立てる力を得るために,6本の脚でしっかりと枝をつかみ腹部を折りたたむように曲げており,実際に産卵しているとみてもよいと思います.

▲腹部を曲げて産卵行動を始めたペア.

▲腹部の曲げ方から本当に産卵しているようである.

▲反対側に回って少し引いてみるとこんな感じ.

しかし,この行動は長続きせず,やがてメスは腹部を伸ばしてじっとし始めました.このまま30分ほど待ちました.ここにいることのできる限度です.でも,産卵行動はその後見られず.やはりこのまま15:00を過ぎて,夕方の気配が出てくるころに産卵を始めるのでしょうね.普通ならそれまで粘るのですが,今日はこれで終えなければなりませんでした.

▲産卵をやめてじっとしているペア.このまま30分以上じっとしていた後,飛んで移動した.

この木の上には単独オスが3,4頭,連結ペアが3ペアほどいて,あちこち移動していました.単独オスは連結ペアによくちょっかいをかけます.オオアオイトトンボは,こうやって樹上で繁殖活動をしているんですね.なお三連結は,途中で見失い,その後の運命は分かりません.



続 トンボ歳時記
No.638. ヒメアカネの観察.2018.10.3.

今日も引き続き晴れ.明日から雲のち雨で,その後台風25号が接近するとのこと.アカトンボの観察にちょうどよいこの時期に4連続雨というのは,ついていません.今年まだ繁殖活動を観察できていないアカトンボは,8種類あります.今の時期なら,コノシメトンボかヒメアカネ.観察にストレスのかかるヒメアカネを先に見ることにしました.なぜストレスがかかるかというと,交尾しても産卵しないで逃げていくメスが結構いること,産卵を始めても,密に茂った草の中にもぐり込んで産卵することで,思ったように記録が撮れないからです.

さて,ヒメアカネの観察地は複数あるのですが,今日は春にサラサヤンマを観察したところへ行くことにしました.現地到着は9:21,これくらいかと思って出てきましたが,まだヒメアカネは湿地に2頭いただけでした.それとも数が減ったのかと思って,ちょっと心細く感じました.よく観察していると,ときどき木の上から降りてくるオスがいます.まだ気温が十分ではないのだろうと考えて,ここで粘ることにしました.

▲湿地の日向に止まってメスを待つヒメアカネのオス.

▲ヒメアカネのオス.

約1時間,待ち続けました.オスの数は,少しずつ増えてきました.7頭くらいになったでしょうか.そのとき,交尾態のペアが湿地に入り込んできました.あちこち飛び回っています.交尾時間は5分ほどでした.突然オスがメスを放しました.しかし,このメスは産卵を始めず,上へ上へと飛び,ついに姿を消しました.このオスは多分産卵意欲のないメスを捕まえてしまったのでしょう.長い間交尾終了を待ち続けてのメスの逃避,これがストレスの原因です.

▲10:20,湿地を飛び回りながら交尾を継続するヒメアカネのペア.

▲ある程度飛んだら葉っぱの上などに止まる.

▲なかなか近づくのは難しかったが,やっと寄ることができた.

次を待つことにしました.でもなかなか入ってきません.相変わらずオスたちはときどき飛んではホバリングを交え,メスが来ていないか確かめています.そんなとき,大型のヤンマが産卵に入ってきました.この時期に湿地に産卵するヤンマって一体何だろう,といぶかしく思いました.じっと目で追いかけていますと,独特のスタイルで産卵を始めました.オニヤンマです.オニヤンマは湿地でも産卵するのですね.湿地を流れる細流での産卵は何度でも見たことがありますが,まったく水が停滞している所での産卵は初めてでした.10:45のことでした

▲10:45,湿地の流れがないところで産卵を始めたオニヤンマのメス.

▲私が動いたせいか,少し場所を移動して,再び産卵を始めた.

▲アオミドロの上に産卵管を突き立てている.

▲向きをいろいろと変えて産卵するオニヤンマのメス.

11:16になって,次の交尾態が入ってきました.それも2ペアがほぼ同時に.こういうのって困ります.どちらを追いかけるか,二兎を追うものは...ということわざもありますし,腹を決めて,足下のペアをねらうことにしました.交尾時間の5分が長く感じられます.目を離したら見失うことも多いので,じっと交尾態を見つめ続けます.11:20に,交尾を解きました.メスが枯れ枝に止まり,オスも近くに陣取りました.しばらく待つと,メスが産卵を始めました.ついに来た! と思ってカメラを向けたとたん視野からメスが消え,どこへ行ったか分からなくなりました.同時に入ってきたもう一組のいたあたりへも行ってみましたが,どちらのメスも行方不明.これもストレスの原因です.他のアカトンボの場合,交尾後の産卵個体を見失うことはほとんどありません.だいたい連結産卵が多いですから.

▲11:16の交尾個体.

▲オスが翅を大きく後ろへ反らしている.

▲交尾を解かれたメス.メスは交尾が終わるとこのように1分ほど止まる.

まあ,しかたありません.次を期待することにしました.11:34,湿地の向こうの方でメスが飛んだように見えました.湿地を歩くのは,これまたストレスですが,急いで駆けつけることにしました.このあたりだったと思うが,...,とまわりを見渡しましたら,密生するササの陰で,メスが産卵をしていました.短時間だったので,産卵を始めてから少し経っていたのでしょう.でも,やっと観察ができました.

▲密生するササの陰であるが,比較的開けている場所で全身をとらえることができた.

▲ヒメアカネのメスによる打泥の瞬間.

▲打泥のあと少し後ろに飛び上がり,次をねらうように,つかの間ホバリングする.

▲そしてまた打泥する.

このあと,11:40,また交尾態のペアが入ってきました.複数のペアが入ってきて,いよいよ産卵のピークが来たようです.やはり,近くのペアに的を絞って産卵を期待しました.じっと待っていますと,やがてオスがメスを放し,例によってメスはしばらくじっと止まっていた後,産卵を始めてくれました.しかし,すぐに止まり,次に産卵をどうするか迷っているみたいな感じでした.

▲11:40に入ってきた交尾ペア.

▲あちこち移動して交尾を継続した.

▲交尾を解かれた後,メスは産卵を始めた.

▲しかしすぐに止まって動かなくなった.

このメスが産卵しようとした場所は,開けた場所だったので,期待は大きかったです.しかししばらく止まった後,草の中にもぐり込みような動きをしました.それを見たこのメスの相手のオスは再びメスを捕まえて交尾をしました.交尾時間はとても短かったのですが,これは自分が交尾したメスだからでしょうか.そしてオスはメスを放し,少し離れた位置に止まりました.

▲一度交尾したメスと再び交尾した.

▲交尾後,メス(下)が止まっているそばにオス(上)も止まっている.

▲交尾後,止まっているメス.

今度はメスも腹を決めたように産卵を始めました.しかし,草の中にもぐり込んだのです.オスも草の中にもぐり込んで警護しています.まあ,これがヒメアカネの生態なので,強引に写真を撮影しました.草の隙間から見える体の一部にピントを合わせてシャッターを切るのですが,思うように行かず,これがまたストレスの原因です.わずか1,2分の産卵でした.メスは上空へ飛んでいきました.

▲草の中にもぐり込んで産卵を始めたヒメアカネのメス.

▲打泥しているヒメアカネのメス.

▲草陰で産卵するヒメアカネのメス.

▲かろうじて全身が写っている.打泥しているヒメアカネのメス.

ということで,なんとか2頭のメスの産卵を記録することができました.12:00を過ぎましたので,ヒメアカネはこれで終わることにしました.湿地を離れて農道を歩いていると,観察した湿地の横に,産卵を終えたのでしょうか,ヒメアカネのメスが止まっていました.少し行って田んぼの横にさしかかりますと,ナツアカネがたくさん鹿よけ電柵の電線に止まっていました.このあたりの水田は稲刈りが終わっています.稲刈り前なら,たくさんのナツアカネが,稲の上で産卵している姿が見られたと思います.来年来ることにしましょう.

▲小径でくつろいでいるヒメアカネのメス.

▲電柵の電線に止まるナツアカネ.

帰りに,コノシメトンボのロケハンをすることにしました.20年近く前にコノシメトンボが結構たくさんいた池に行ってみました.午後に休息しているアカトンボたちの観察です.アカトンボたちは木のてっぺんに結構たくさん止まっていました.しかしコノシメトンボは見つからずで,この池ではダメですね.

▲キトンボのメス.

▲アキアカネのオス.アキアカネが来ていることに,なぜか安心.

▲ネキトンボのオス.ネキトンボは5頭ほど見られた.

ということで,今日は観察を終えることにしました.次の雨が通り過ぎたら,今度は,コノシメトンボでも見に行くことにしましょう.そうそう,最後に成熟したヒメアカネのオスの顔拡大です.なんか,ちょっと怖そうな顔をしていますね.

▲ヒメアカネのオスの顔.顔面は真っ白になっている.




続 トンボ歳時記
No.637. 都会の海岸にある人工的水辺の探索.2018.10.2.

昨日はガンガンの晴れでしたが,所用がありトンボを見に行けませんでした.今日も小さな所用があって,街の中に出かけていきました.それなら,ということで,所用の後,今日は都会の海岸近くにある人工の水辺に,トンボを見に行くことにしました.最近のエコブームに乗って,あちこちの海岸近くの公園には,人工的な水辺が作られています.

▲明石海峡大橋が見える公園.

▲その公園にあるビオトープ池.

最初の公園は,過去にも何度か来たところです.タイリクアカネがよく集まる場所で,今日もそれを期待していました.しかし,タイリクアカネの姿は皆無.いたのは,アオモンイトトンボ,シオカラトンボ,ギンヤンマでした.これらは,きっとこのビオトープで生活しているトンボたちだと思います.

▲アオモンイトトンボのオス.

▲シオカラトンボのオス.

この公園にはビオトープ以外にも,噴水池があります.こういった池によく集まるのは,ウスバキトンボ,コノシメトンボ,タイリクアカネです.ウスバキトンボは周辺を飛んでいました.そして池の周辺を歩いてみると,コノシメトンボが2頭見られました.ここにもタイリクアカネは来ていませんでした.

▲この公園にある噴水池.

▲コノシメトンボのオス.2頭いて,時に追いかけ合いをしていた.

この公園はこのくらいにして,次の場所へ移動しました.この公園の水辺は結構広く,上空からトンボが見れば多分降りて来るだろうと思われる場所です.ここには,タイリクアカネが4頭来ていました.タイリクアカネは10月中下旬に数が増えるのですが,すでにやって来ているんですね.

▲2番目に訪れた公園にある水辺.水辺はかなり広く,これはその一部である.

▲タイリクアカネのオスたち.翅の橙色の色づきが特徴である.

しばらく周辺も含めて探索しましたが,アオモンイトトンボ,ウスバキトンボ以外のトンボを見つけることができず,次の場所に移動することにしました.阪神間の海岸沿いにはたくさんの埋め立て地があって,それぞれに自然を取り込むようなビオトープや公園が造成されています.

次に行った公園は,かなり昔からビオトープ池があるところで,たくさんの人がここでトンボ観察をしており,いろいろなトンボが記録されているところです.着いた途端に見つけたのがマイコアカネでした.マイコアカネは産卵もしていました.カメラに収めることはできませんでしたけれども....ここではトンボ観察に来ている人と出会いました.その人が言うには,このビオトープ池には,かつてたくさんのマイコアカネがいたとのことでした.マイコアカネ以外には,リスアカネのオスが1頭,そしてアオモンイトトンボが産卵をしていたり,また羽化直後のテネラルな個体もいました.アオモンイトトンボは10月になっても羽化しているんですねぇ.

▲次の公園にあるビオトープ池.

▲マイコアカネのオス.減少傾向のマイコアカネはこんなところに生き残っているのだ.

▲リスアカネのオス.

▲羽化直後と思われるテネラルなアオモンイトトンボのオス.

このビオトープ池でいちばん嬉しかったのは,ギンヤンマが産卵に入ってきたことでした.ギンヤンマは,秋の初めのころがいちばん活発に繁殖活動をしているように思います.春から秋まで全シーズン見られるヤンマではありますが,連結産卵をしている姿を多く見るのはこの時期の昼下がりです.シーズンの終わり,全力で子孫を残す活動をしているのでしょうね.

▲浮かぶ枯れ枝に連結産卵するギンヤンマのペア.

▲メスとの連結の状態でも確かめているのだろうか.

▲ヒメガマの根際に産卵をしているギンヤンマのペア.

▲アクロバット的な姿勢で産卵するギンヤンマのペア.

▲メスはこっちをじっと見ている.

▲細い木の枝に止まって産卵をするギンヤンマのペア.

▲水面に横たわるヒメガマの葉に産卵するギンヤンマのペア.

この池には,私が訪れたときからギンヤンマのオスがメスを探して飛び回っていました.このオスが産卵ペアを見つけて,連結しているオスにちょっかいをかけました.捕まえて引き離そうとでもしているのでしょうか.こういった風景はよく見かけますが,連結産卵していても,メスを守るのは大変な仕事のようです.

▲パトロール飛翔しているギンヤンマのオス.

▲上のオスが,入ってきた産卵ペアのオスにちょっかいを出している.

このビオトープの近くには人工的な流れがあります.そこへ行ってみました.そこにはショウジョウトンボが3頭ほど見られました.またシオカラトンボ,ギンヤンマの産卵などが観察できました.ギンヤンマは,こんな町中にまでやって来て産卵しているんですね.本当にたくましいトンボです.

▲ショウジョウトンボのオス.

▲水に落ちている松の枝に産卵するギンヤンマのペア.

▲ふつう水面より低い位置に産卵するが,葉の高い位置に止まって産卵している.

▲この場所が好きなようで,何度もやって来て,長時間産卵していた.

▲コンクリート張りの流れに落ちている「ゴミ」の葉っぱに産卵するギンヤンマのペア.

今日は,埋め立て地に造成された水辺を探索しました.こんなところにも,長い年月の間にトンボたちはどこからともなく集まってきて,世代を繰り返しているのです.タイリクアカネのような移動性のあるトンボにとってはここは仮の宿でしょうが,ギンヤンマやショウジョウトンボ,マイコアカネたちはしっかりと住み着いているようです.マイコアカネが最近減少しています.こういった所に生活しているところを見ると,やはり平地の池の生活者であるようですね.いろいろと発見があり,また結構トンボがいて,面白かったです.