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続 トンボ歳時記
No.661. トンボの生き残り調査(2).2018.12.15.

今日は午後から晴れたので,2時を過ぎそうでしたが,定点池に行ってみることにしました.現地に入って,一通り歩いてみましたが,トンボの姿はありませんでした.キトンボも姿がなく,今年はこの池ではキトンボの年越し観察の可能性が少ないかなと感じました.

気温は8度で,太陽も時々雲に隠れるようになってきました.今日はこれまでと思って帰ろうと車を走らせたとき,トンボが飛びました.池の少し先にあった水田から飛んできたのです.アキアカネでした.

▲アキアカネのオス.まだまだ老熟を感じさせない個体である.

▲アキアカネが飛んできた水田の状態.水がたまって,産卵環境ができている..

水田の方に近づいてみると,アキアカネはもう1頭飛んできました.こういう産卵環境から飛んでくるということは,まだまだ繁殖活動の意欲十分というふうに感じとれました.トンボはこれだけでした.今日はキトンボに出会えなかったので,また別の場所を探す必要がありそうです.また暖かい日差しが感じられたときに探してみることにしましょう.




続 トンボ歳時記
No.660. トンボの生き残り調査(1).2018.12.8.

いよいよ12月になりました.この時期,日を詰めて観察に出てもあまり変化がないので,1週間ほど空けてみました.今日はこのシーズン初の寒波襲来だそうです.観察地の外気温は9度でした.12月からは暦上の冬.冬の季節をトンボたちがどこまで生き延びるかの観察となります.前回と同じ定点に観察に行きました.空は快晴といっていい晴れ.気温は低くても,直射光の当たる地面の温度は軽く20度を超えます.

まず最初の池.ここには,キトンボ,アキアカネ,マユタテアカネが生き残っていました.キトンボは2頭いて,1頭は水辺に止まっており,水面を飛ぶこともありました.元気です.アキアカネは道ばたに4頭ほど止まっていました.そして多分アキアカネだと思うのですが,タンデムで水面を飛んでいるのを目にしました.遠くだったのでマユタテアカネの可能性もありますが....そして,マユタテアカネ.今日は顔面の眉斑も確認して,間違いありません.

▲キトンボのオス.これは道路横に止まっていて,日向で暖まっている個体.

▲キトンボのオス.池の岸に止まっていて,この個体は水面上も飛んだ.

▲アキアカネのオス.日向で暖まっている.

▲アキアカネのオス.暖かいからか,草の葉にも平気で止まる.

▲マユタテアカネのオス.マユタテアカネは前回に比べて数が減ったように感じられた.

次の池に行きました.今日一番の興味はオオキトンボが生き残っているかどうかです.兵庫県で今まででもっとも遅い私のオオキトンボの記録は12月4日です.オオキトンボは12月の声を聞くとだいたい姿を消してしまいます.でも,あっさりと記録更新,池に入るやいなや,1頭のオスが飛びました.まあ,この1頭だけしか見つかりませんでした.あと,アキアカネが1頭いました.

▲オオキトンボのオス.元気な個体で,アキアカネを追いかけ回していた.

この週末の寒波,そして来週の雨,これを乗り越えてどれだけが生き残るでしょうか.次の暖かい晴れの日にまた観察に来ることにしましょう.



続 トンボ歳時記
No.659. 晩秋のトンボたち(7) 定点観察.2018.11.30.

前回の観察からちょうど1週間が経ちました.11月も最終日を迎え,いよいよ明日からは暦の上での冬に入ります.昨日,今日と予報はあまり芳しくなかったのですが,実際は朝から晴れ間が出ていました.冬型の気圧配置のようで,いわゆる瀬戸内側の冬の晴れです.出発時の気温は11度でしたが,今日も前回と同じ2つの場所へ,定点観察に出かけることにしました.

まずは1つ目の池です.やはり池は満水で,アカトンボにはあまりいい感じではありませんでした.今日は周辺の農道での探索を行うことにしました.まずはマユタテアカネがいました.オスは5〜6頭見つけました.メスも1頭生き残っていました.

▲マユタテアカネのオス.道路横の日当たりのよいところに止まっている.

▲マユタテアカネのメス.

この場所では初めて見るのですが,ヒメアカネもいました.はじめはよく確認もせずにマユタテアカネだと決めつけていました.しかし撮った写真をよく見返してみると,腹部横の黒斑が大きいですし,尾部付属器も反り上がっていないように見えます.顔を見ようと前に回り込もうとすると飛び去ってしまい,結局最終確認はできませんでしたが,まずヒメアカネとして間違いないと思います.このオス,メスを見つけて,交尾しました.これらの個体は十分老齢化していますから,老いらくの恋という感じですね.

▲ヒメアカネのオス.この付近にはヒメアカネの産卵環境がないように思えるのだが....

▲ヒメアカネの交尾.メスの腹部が黒く,これはヒメアカネである.

あと,アキアカネが数頭止まっていました.前回見つけたコノシメトンボは今日見つけることができませんでした.キトンボはいましたが,飛ぶのを見ただけで記録には撮れませんでした.

▲アキアカネのオス.アキアカネは12月を目前にしても,どことなく若々しく見える.

ということで3種見つけて,次の定点池へ行くことにしました.着いたのは11:10ころでした.まず目についたのがアキアカネでした.アキアカネは結構数がいて,周辺の草地や水際を飛び回っていました.水際を歩くと交尾態が飛び立ちました.追いかけると飛び立ち,交尾態を解き,産卵を始めました.が,すぐにまた交尾態になって草むらへ隠れました.その後,水際で産卵しているペアを見つけました.近づくと,これも産卵を止め,交尾態になりました.今日のアキアカネは2組とも産卵を始めたものの交尾をやり直すといった行動をとりました.後者のアキアカネに焦点を当てて観察を続け,交尾・産卵の記録を撮りました.

▲草むらにいるアキアカネ.葉っぱに「ごろにゃん」をしている.

▲産卵を止めて再び交尾したペア.アキアカネの交尾.

▲交尾を終えると,池の水際の浅いところで産卵を始めた.

▲アキアカネの産卵.打泥した瞬間.

▲岸から離れて少し開水面のある方へ移動する.

▲今度は打水産卵をする.アキアカネの産卵.

アキアカネとほぼ同時に見つけたのが,キトンボとオオキトンボ.キトンボが飛び立つとオオキトンボがそれを追いかけて飛び,まだまだこの両種は元気に活動しています.まずはキトンボから.キトンボは2頭見かけました.キトンボどうしの追飛行動が見られたので間違いありません.

▲オオキトンボと追いかけ合いをした後のキトンボのオス.

▲池の岸の石に止まって休息するキトンボのオス.

次はオオキトンボ.オオキトンボは,少なくとも5頭のオスがいたことは間違いありません.池岸に止まり,オスどうしが追飛したり,元気に活動していました.この時期になるとメスが少なくなるのでしょう.「飢えた」オスたちは,オオキトンボが近くを飛ぶと,相手がオスであるにもかかわらずとりあえずタンデムになろうとします.そしてオスであることが分かると追飛します.今日はメスの姿を見ることができませんでした.

▲枯れ草に止まるオオキトンボのオス.この時期の体色は,完全に背景にとけこむ色になっている.

▲水辺の石に止まるオオキトンボのオス.光の色といい,土の色といい,やはり背景にとけこむ体色である.

▲明るい色のものに止まるのは,輻射熱に期待しているのだろう.

▲赤みを帯びて茶褐色になったオオキトンボのオス.鉄錆色というか,他に類を見ない渋い色である.

今日は,この池に以前いたタイリクアカネの姿を確認できませんでした.もう死滅してしまったのでしょうか.それともアキアカネが増えたせいでしょうか.トンボたちは寒くなってくると輻射熱を求めて白っぽいものに止まろうとします.この池はあまりそういった物がないので,すぐ近くに異なる種のトンボが止まることがよくあります.最後にそれらのツーショットを紹介して,今日の観察を終えます.

▲オオキトンボとアキアカネのツーショット.

▲アキアカネとキトンボのツーショット.

▲キトンボとオオキトンボのツーショット.

11月30日,暦の上での秋の最終日,今日の観察では5種類のアカトンボが生き残っていました.さて,12月に入って,最後まで生き残るのは,やはりキトンボでしょうね.




続 トンボ歳時記
No.658. 晩秋のトンボたち(6) 定点観察.2018.11.23.

これからますますトンボが少なくなっていきますが,いつまで生き残っているかについては,定点で観察を続けていくのがよいと考えています.その推移が見えるからです.ということで,オオキトンボやタイリクアカネの産卵していたNo.653の池と,キトンボやアキアカネが産卵していたNo.656の池を定点にしました.まず今日はその二つの池の現状を見てきました.

一つ目のNo.653の池には,オオキトンボ,タイリクアカネ,アキアカネがいました.キトンボも目撃しました.まだ,今日の時点で,先日と同様の種が生き残っていました.

▲オオキトンボのオス.今日は少し気温が低いせいか,2頭だけ姿を見た.

▲タイリクアカネのオス.

▲アキアカネのオス.アキアカネは池中央で産卵もしていた.

今日は生き残りの確認だけなので,特に繁殖活動を待つようなことはせず,もう一つのNo.656の池へ行きました.この池は以前と打って変わって水位が上がっていました.湿地状の池底はすべて水の中に没し,水際ももはや湿地状にはなっていませんでした.そのせいかどうかは分かりませんが,キトンボの数がとても少なかったです.仕方なく隣の池を覗いてみました.ここはまだ水が落ちていて,アキアカネが産卵していました.しかしここにもキトンボはいません.

▲水が落とされた池で産卵するアキアカネ.定点の隣の池.

その後,池の周辺の農道を歩いてトンボを探してみました.アキアカネ,マユタテアカネ,コノシメトンボがいました.池の中に降りてみましたら,キトンボとタイリクアカネがいました.いずれにしても,前回の観察とはようすが違っていて,トンボは環境変化に敏感に反応しているなと感じた次第です.

▲マユタテアカネのオス.マユタテアカネはメスも含めてたくさん見られた.

▲コノシメトンボのオス.オスは2頭いた.

▲キトンボのオス.今日はキトンボが少ない.遠くに産卵ペアを1つだけ見た.

これから生き残っていくのはキトンボなので,キトンボの数の多い池に観察地を変える必要があるかもしれません.今日はまだまだトンボたちは元気に活動をしているように見えました.12月上旬までは,いろいろなアカトンボが生き残っていることが多いのですが,12月中旬ころになると,一気に種類数が減ってしまいます.今年はどのような推移を見せるでしょうか...



続 トンボ歳時記
No.657. 晩秋のトンボたち(5) 平地・丘陵地の池めぐり.2018.11.18.

今日も朝から雲一つない快晴.今日は行く予定はしていなかったのですが,この晴天がもったいない気がして,「日当たりのよい平地や丘陵地の池のトンボ観察」ということで,池巡りをしてきました.全部で7つの池をほぼ午前中に回ってきました.家を出たのは9:00過ぎで,最初の池に着いたのが9:30くらいです.気温は14度でしたが,日差しと弱い風のおかげで暖かく感じます.この池は,夏に,アオモンイトトンボのカニバリズムを観察した池です.池を一周しましたが,トンボの姿をまったく見かけませんでした.ということで気にせず次の池に行きました.この池はほぼ完全に水を落としていました.

▲本日2番目の池.過去にはよく来たが,今年は初めて来た.水がほぼ完全に落とされている.

最近秋にほぼ完全に水落をするため池が増えました.でもこれだけ水が落ちていてもオオキトンボなら来ていると予想して池に入ってみました.案の定オオキトンボがいました.ただ,秋の朝のトンボは敏感で,なかなか近寄れませんでした.それ以外には,マユタテアカネ,ナツアカネが,水のない池の中にいました.タンデムのペアが来て産卵したそうに飛び回っていましたが,結局出て行きました.アキアカネかタイリクアカネのような感じです.写真にはありませんが,この池の外でタイリクアカネを見ています.

▲水の落とされた池の縁に止まるオオキトンボのオス.

▲干からびた池の底に止まるマユタテアカネのオス.

▲池の護岸に止まるナツアカネのオス.

次の池は,この池のすぐ隣にある池です.先の池がほぼ完全に水が落とされているのに,この池は満水状態でした.

▲本日3番目の池.コンクリート護岸されている.満水状態.

上の写真の左側の堰堤の上を歩くと,オオキトンボ,ナツアカネ,タイリクアカネ,マユタテアカネなどが飛び立ちました.オオキトンボが飛んで池の方に入っていくと,それを追い回す別のオスのオオキトンボがいました.他にも池の上をオオキトンボが複数飛んでいました.この池はコンクリート護岸した何の変哲もない池なのですが,オオキトンボが活動しているんですね.これの一体どこが絶滅危惧I類なんでしょう? 唯一いえるのは,この池は丘陵の麓にあって,これより上に農地がないということです.つまり薬剤が流れ込まないわけです.

▲堰堤の草地で休むナツアカネのオス.

▲オオキトンボのオス.この池にはオオキトンボがそこそこの数集まっていた.

▲人が近づくとこのようにすぐに飛び上がる.

▲腹部の色が鯛分赤茶色になってきている.オオキトンボのオス.

▲タイリクアカネのオス.本当にタイリクアカネはどこにでもいるという感じ.

次は,水が落とされているもっと大きな池をのぞいてみました.しかしこの池,トンボの姿をまったく見かけませんでした.池によってトンボの濃さがまったく違いますね.ただこの池のそばには,オオキトンボのメスが止まっていました.腹部先端に泥がついており,打泥産卵していたんでしょうね.ここは,さっさと引き上げることにしました.

▲本日4番目の池.管理が行き届いたコンクリート護岸の大きなため池.

▲池の中にはトンボがいなかったが,近くにオオキトンボのメスが止まっていた.

次に目指したのは,例年オオキトンボを観察に行く池です.今年も10月8日にオオキトンボを見に行ってきました.そのときはオオキトンボが来ていました.最近この池は水を落とさなくなりましたので,今日はどうでしょう.池の周りを一周しましたが,オオキトンボを見ることはできませんでした.ただ,池の片隅に抽水植物が茂っているところがあって,そこにマイコアカネが生き残っていて活動をしていました.4頭のオスを見かけました.マイコアカネ君も頑張っているようです.

▲マイコアカネが活動していた,本日5番目の池の片隅にある茂み.

▲マイコアカネのオス.顔面が青みがうすくなってもう白くなってしまっている.

▲日差しを受けて止まっているマイコアカネのオス.

次の池は,上の池の近くにあって,オオキトンボしかいないことがよくある池です.ここもコンクリート護岸されていて水も落とされておらず,なんでこの池にオオキトンボが来るのかよく分かりません.今日はオオキトンボは池の外の道路上に止まっていました.これは写真にはならず,代わりといっては何ですが,タイリクアカネが交尾をしているのを記録に撮ることができました.また別のタイリクアカネのメスが,単独で数回打水するのを見かけました.本当にオオキトンボとタイリクアカネはセットになっています.上の池でも2014年の観察では,オオキトンボとタイリクアカネがたくさん集まって産卵していました.

▲タイリクアカネの交尾.この本日6番目の池ではほとんどトンボを見かけずだった.

時刻は12:00になりました.もう一つだけ池を回ってみることにしました.この11月2日に出かけていった池で,オオキトンボやタイリクアカネがたくさん活動していました.池に着くと,早速打水産卵するペアが目に入りました.タイリクアカネかとも思いましたが,打水後の上昇が小さく,例のアキアカネのチョンチョン産卵に似ています.写真を撮って確認してみましたら,どうやらアキアカネのようです.先日はアキアカネの姿が見られなかったのですが,やっとアキアカネが姿を現しました.アキアカネは,兵庫県南部では,本当に時期的に遅く出現するトンボになりました.

▲池に着いたとき打水産卵をしていたアキアカネのペア.

池の周囲を歩いてみますと,タイリクアカネ,オオキトンボが飛んでいました.ここは,以前来たときには,11:00ころが産卵のピークでしたので,もう繁殖活動は終わっているような感じでした.そんなとき目の前で,オオキトンボのオスがメスを捕まえました.池の上を飛びながら移精行動をしています.そして幸いなことに,すぐ近くの池岸に止まりました.そしてもう一度飛んで再び移精行動をしてから,交尾に移行しました.これもすぐ近くに止まってくれました.

▲メスを捕まえたオオキトンボのオスが移精行動に移行しようとしている.

▲移精行動を終えた止まったオオキトンボのタンデム.オスに比べてメスがでかい!.

▲オオキトンボの交尾.オス・メスの体色は赤茶色になって,渋い感じがする.

オオキトンボのペアが飛び去った後,池岸でまたアキアカネが産卵していました.動きの小さなチョンチョン産卵です.間違いなくアキアカネがやって来ていることが確認できました.この池には,キトンボも姿を見せていました.

▲アキアカネが水際で打泥産卵を行っている.

▲打泥後もあまり高く上がらないで飛ぶ.

▲アキアカネの打泥産卵.打泥の瞬間.

▲キトンボのオス.

今日は,晴天についついつられて,平地や丘陵に集うトンボたちを観察に行ってきました.全部で7種類のトンボたちに出会いました.その中でオオキトンボは7つ中5つの池で姿を見かけました.他のトンボに比べて最も多くなっています.オオキトンボは平地の池で普通に見かけるトンボになっていると言えるような感じです.

まだ11月の中旬,アカトンボたちは元気にしていました.しかし,夏のトンボの姿はすっかり消えてしまいました.今日これらに出会うことをちょっとだけ期待していたのですが,やはりもうほとんど出会うことはないんでしょうね.今日はここまで.




続 トンボ歳時記
No.656. 晩秋のトンボたち(4) 小春日和のトンボたち.2018.11.15.

今日のNHKの天気予報では,午後から少し曇るものの,小春日和の一日とのこと.小春とは旧暦の10月のことだそうで,太陽暦では11月上旬から12月上旬にかけての時期に当たります.ですから小春日和とは今の時期の暖かい晴天の日のことをいうそうです.先日田園地帯へ出かけたとき,まったくといっていいほどトンボの姿が見られなかったので,今日は確実にトンボが見られる場所へ行くことにしました.

▲今日の観察池.水落がかなり前になされていたようで,露出した池底には湿性の草がいっぱい茂っている.

池は写真のように底が露出していて,湿性の草が茂り,流れ込む水が小さな水路をつくって,全体が湿地状になっています.まさにこの時期のアカトンボにとって好適な環境といえるでしょう.しかもかなり前から水が落とされていたようで,アカトンボが集まってくる時間も十分にあったと考えられます.期待ができそうです.

池に着いてまず目についたのはマユタテアカネでした.池岸の石の上などに止まって,他のオスが近づいたら飛ぶなどして,あちこちで活動しています.普通なら産卵も見られるところでしょうが,今日は結果的にマユタテアカネの産卵にはお目にかかれませんでした.帰り際に歩いた農道で見つけたメスもあわせて,まず最初に紹介しておきましょう.

▲マユタテアカネのオス.オスは池畔でたくさん活動をしていた.

▲マユタテアカネのメス.池畔で見ることはなかったが,少し離れた農道で見つけた.

現地到着は10:20でしたが,水面上をホバリングしているアカトンボがいました.目を凝らしてみると,どうやらタイリクアカネのようです.もうタイリクアカネが内陸部にいるのは当たり前になっています.そしてさらによく見ると,露出した池底でアキアカネが産卵していました.近づいて行くと,数ペアがチョンチョンと小さな水たまりや泥状のところで打泥しています.兵庫県南部のアキアカネは減少傾向にあるといつも言っていますが,11月に入ると,環境が整った場所にはそれなりの数が集結しているようです.20世紀の末頃よりは明らかに出現時期が遅くなっていると思います.ということで,まずはアキアカネと時間をともにしました.

▲湿地状になった露出した池底で打泥産卵をしているアキアカネたち.

前にも書きましたが,この時期のアキアカネの打泥動作は最小限の動きという感じで,打泥した後も,ほんのちょっとしか飛び上がりません.10cm位の高さで上下動しています.動きが小さいので,記録に撮りやすいトンボです.さて,アキアカネと戯れているときに,キトンボが産卵に訪れました.最近キトンボはどこの池でも見るようになりました.20世紀末ころには結構珍しいトンボだったような気がするのですが....

▲湿地状の水際で打泥産卵をするキトンボのペア.2枚上の写真は打泥前の打水の瞬間である.

キトンボはその後も産卵にやって来て,少なくとも3ペアは産卵していたようです.途中でタイリクアカネの方に気をとられたので,正確な産卵数はつかめていません.キトンボは,上のような水際での打泥産卵の他に,池の中央や岸近くで打水産卵するペアもいました.

▲もっぱら打水産卵を行うキトンボのペア.同じ池なのに産卵戦術が異なるのはなぜだろう?.

キトンボを追いかけているときに,タイリクアカネが産卵を始めました.開水面の中程で打水産卵をしています.タイリクアカネは神経質なトンボで,なかなか近づかせてもらえません.今日のこのペアも同じでした.粘り強く近づくのを待ってみましたが,なかなか思うようにはいきませんでした.また打水後高く飛び上がるので,せっかく近づいてくれてもファインダーから出てしまうため,カメラで追いにくいトンボでもあります.このペアの打水産卵中,一度だけ,オオクチバスがジャンプして食いつこうとしました.しかし,うまく飛び上がりかわしました.こういうことがよくあるので,池の中央で打水産卵するトンボは打水後すぐに高く飛び上がるのだと私は考えています.オオキトンボもよく似ています.

▲打水産卵するタイリクアカネのペア.

トンボたちと遊んでいると,時間がすぐに経ってしまいます.気がつくと12時を過ぎていました.トンボたちの産卵活動も一段落したようです.晩秋のトンボたちの産卵は一時に行われ,あとは何もなかったように池は静まります.そしてオスたちが翅を陽に輝かせ,飛び回るだけの風景になります.私も,産卵活動を追いかけるのは止めにして,池周辺に止まっているトンボを探してみることにしました.

▲マユタテアカネとキトンボが同じ石に止まっている.

▲岸辺に沿ってキトンボのオスがホバリングして飛んでいる.

▲産卵を終えたメスを捕まえたのだろうか,キトンボのオスがメスを掴んで,交尾を始めた.

▲ネキトンボのオス.アスファルトの上に止まって暖をとっている.

▲ノシメトンボのオス.今年はこのアカトンボだけ繁殖活動を記録できなかった..

▲コノシメトンボのオス.アスファルトの上で暖をとっているが,よく飛ぶ.

これらのトンボを探して歩いているとき,ミツバチの巣箱を置いているところがあり,そこで面白いものを見ました.ミツバチの天敵はオオスズメバチです.以前のテレビ番組では,たった1匹のオオスズメバチが巣箱一つのミツバチを全滅させるというのを放送していました.巣箱のすぐそばにオオスズメバチがいたので,これは,と思ってい近づくと,なんと,養蜂家の方が仕掛けたトラップに捕まったオオスズメバチだったのです.オオスズメバチは10匹トラップにかかっており,1匹がまだ生きていて,粘ついた粘着剤の中でもがいていたのでした.他に,キタテハをはじめたくさんの昆虫も捕まっていました.ミツバチたちはそのすぐ横で悠々と飛んでいました.いや,すごい.

▲トラップにかかったオオスズメバチが粘着剤の中でもがいている.

ということで,昼過ぎに観察を終えました.空は予報通り雲が広がり始めました.やはり確実にいるところにやって来ると,まだまだこの時期,トンボたちは活発に活動しているものですね.今日は7種類のトンボを見ることができました.まだまだトンボたちは頑張っています.




続 トンボ歳時記
No.655. 晩秋のトンボたち(3) トンボがとても少ない. 2018.11.11.

今日は昼下がりにオオアオイトトンボとカトリヤンマを見に行きました.結果は惨憺たるもので,まったく見かけずでした.オオアオイトトンボには出会えるだろうと,近くの森林公園へ行きましたが,単独オスが1頭飛ぶのを見ただけで,まったくいる気配がありませんでした.それどころか,トンボ自体の姿がなく,森林公園ではヒメアカネらしいのが1頭だけ,そしてカトリヤンマを探しに水田地帯を歩きましたけれども,アキアカネが2,3頭とナツアカネが2頭ほどいたのを,やっと見つけただけでした.

▲アキアカネのオス.

▲ナツアカネのオス.

どういうわけか水田地帯というのはどこも,トンボがまったくいない感じで,不気味な廃墟をイメージさせられます.まさに「沈黙の秋」ですね.下の写真は,今日出かけた2つ目の,3年前までカトリヤンマを確認していた谷スジの田園地帯です.今日はホシホウジャクが飛んでいただけで,アキアカネ1匹いませんでした.天候といい,時期といい,アカトンボの一つや二つはいてもいいのに....トンボ歳時記では報告していませんが,実はここへは今年の10月20日にもカトリヤンマを探しに来ています.その日もまったくカトリヤンマの姿はありませんでした.この生息地からはカトリヤンマは完全に消えたように思えます.

▲かつてカトリヤンマが産卵していた谷スジの田園地帯.今日はまったくトンボが何もいない.

▲ホシホウジャクが飛んでいただけ.

▲以前この谷で撮影したカトリヤンマ.2012.10.27.

オオアオイトトンボにしてもカトリヤンマにしても,かつて生息していたところへ出かけても,ほとんどその痕跡さえ見つけられないのはさみしい限りです.今日はここまでにします.




続 トンボ歳時記
No.654. 晩秋のトンボたち(2) まだまだ元気なアキアカネ.2018.11.10.

今日は兵庫県は全域で晴れ模様.先月末にアジアイトトンボがまだまだ頑張って繁殖活動をしていたので,まだやっているかと,様子を見に行きました.

▲アジアイトトンボのオス.オスが単独で飛んでいるだけであった.

残念ながら,オスがポツポツと飛んでいただけで,2週間前とは打って変わった状況でした.しかし,アジアイトトンボというトンボは,4月にはもう羽化をして成虫が姿を見せていますし,産卵活動さえ見ることがありますから,足かけ8ヶ月間も成虫を見続けることができるトンボです.多分,もっとも長期間成虫が出現しているトンボの一つでしょうね.

さて,アジアイトトンボの観察地ではアキアカネたちがまだまだ元気に産卵を行っていました.

▲水位の下がった泥地で元気に産卵する茶色メスのアキアカネ.

日向を翅を輝かせて飛び回るオスやメスのアキアカネが唯一のアカトンボという感じで,他のアカトンボはまったく姿を見せませんでした.アキアカネの産卵の動きもペタペタという感じの打泥で,動きが小さくなっている気がしました.写真でも分かりますが,太陽の高度が低くなって,斜めから日が差している感じがします.これ11:00ころなのです.

▲アキアカネ赤色メスの産卵.体色もだいぶんくすんできて日齢が進んでいることが分かる.

別のアカトンボも見たかったので少し移動してみましたが,アキアカネばかりです.そんな中にキトンボがいました.いずれも晩秋のトンボです.

▲キトンボのオス.

今日歩いてみて,いよいよシーズンも終わりに近づいたなという感じがしました.今年は今までになく徹底的にトンボを追いかけたシーズンでしたが,それも終わりに近づいてきた感じがしました.また一年過ぎようとしています.




続 トンボ歳時記
No.653. 晩秋のトンボたち(1) タイリクアカネ,オオキトンボ.2018.11.2.

11月になりました.11月の上旬くらいまでは,いろいろなアカネ属やアオイトトンボ属のトンボたちはまだまだ活動を続けていくと思います.その後は,だんだんと生き残りが少なくなり,やがて,一種一種と姿を消していきます.これからはそういったトンボたちの姿を記録していくことになりますので,タイトルは「晩秋のトンボたち」として紹介をしていきたいと思います.

今日はノシメトンボを見に行くつもりで出て行きました.しかし,目指していた場所ではほとんどトンボが飛ばず,ここはダメだと判断し,別の池に向かいました.いちおう池岸に草地があってひょっとしたらノシメトンボが来るかもしれないということは考えましたが,特にねらう種はないといってもいい感じです.池に着いたのは11:00ころででした.気温は17度で,太陽が照っているので暖かかったです.池に入ると目の前にタイリクアカネが3ペア産卵していました.

▲到着時,池の水面で打水産卵を続けるタイリクアカネ.

タイリクアカネは,写真のように岸から離れた水面で打水産卵するペアとともに,岸辺で水際に打水・打泥産卵するペアもいました.

▲水際の草の生えている岸辺で産卵するタイリクアカネ.

▲わずかに出ている水際の泥面に産卵するときもある.

▲岸近くの水面を打水することもある.腹部先端から水滴が出ている.

▲連結打水産卵をするタイリクアカネのペア.

▲次に打水する場所を見定めているのであろうか.打水した後の水紋が見える.

タイリクアカネは比較的遅い時期まで繁殖活動を続けているトンボですので,これから後もしばらくあちこちの池で産卵している姿が見られることと思います.今後の歳時記に何度も登場してきそうです.産卵を終えると,オスはメスを放し,メスは上空へと飛んでいきます.タイリクアカネの産卵は一時に集中する傾向が強く,その後しばらく産卵に来ませんでした.オスたちは次のメスを待って,池面をホバリングしてパトロールをしています.

▲池面でホバリングしながらパトロールするタイリクアカネのオス.

そんな中,単独で産卵していたメスをオスが見つけました.私も見つけましたが,オスの方がちょっと早かった.メスは一気に上空へ逃げ,オスはそれを追いかけ,さらにそれを見た別のオスが追いかけました.

▲単独産卵していたメス(左下)を見つけ追いかけるオス(左上)と,さらにそれを見て追いかけるオス(右下).

このタイリクアカネの一時の産卵が終わるのと入れ替わるように産卵を始めたのが,オオキトンボでした.タイリクアカネとオオキトンボは同じ池で同じ時期に産卵しているのをよく見かけるようになりました.20年くらい前にはまったく見られなかった光景です.長期間観察していると,トンボ群集が変化していくのを感じます.ともにため池の生活者で,未熟時には分散して羽化した池から大きく離れ,繁殖時期には広い範囲を飛び回って繁殖場所を探し,産卵方法は打水・打泥どちらもできるというトンボです.考えてみれば,この2種は非常によく似た生活行動を行っています.

▲オオキトンボも,基本的には岸から離れた水面で,連結打水産卵を行う.

▲打水の瞬間..

▲複数のオオキトンボが産卵をする.

▲もう一方のペアの産卵.

▲遠くで連結打水産卵の瞬間.

産卵が終わるとオスはメスを放します.このとき,メスが上空へ飛び上がらずに池岸の草に止まりました.近づいてよく見ると,かなり色がくすんできています.オオキトンボは若いうちはきれいな黄色をしていますが,メスは成熟が進むと黄褐色になります.オスは茶褐色になりますが,これはもう少し季節が進んでからでしょう.

▲産卵を終えて止まったオオキトンボのメス.黄褐色にくすんだ色をしている.

オオキトンボも池から離れた水面で産卵するペアが多く,なかなか岸に近づいてくれません.追いかけるようにして近づくと,ますます逃げる始末です.こちらが動かずにいると,様子を見るように少し距離を詰めてくれます.

▲じっと待っているとやや近づいてくるが,距離はまだある.

この産卵が終わった後,いつも通り,メスが上空へ飛んで逃げました.これも毎度のことで,そのメスを追いかけて上空へ飛び上がるオスがいました.メスは捕まりたくないのでしょう.単に逃げるだけでなく,メスがオスの方につかみかかって,抵抗しているように見えます.

▲メス(左)がオスの翅につかみかかっている.

▲上がメスで下がオスである.

▲メス(下)がオスとつかみ合いをしている.

時刻は12:00近くになりました.産卵にやって来るのはオオキトンボばかりで,タイリクアカネはやって来ません.今度も2ペアが産卵しています.池の中に入らず,岸辺の草むらを通って近づきましたら,割合に近づくことができました.ただ曇ってきて,空一面に灰色の雲が広がって日差しを遮ってしまいました.薄暗い水面を逆光気味の位置で飛ぶオオキトンボは見えにくい.近づいたのになかなかうまく記録が撮れませんでした.

▲12:00近くに産卵にやって来たオオキトンボ.2ペアが混じっている.雲って水面もねずみ色になった.

このオオキトンボの産卵が終わってから,まだ産卵を続けているペアがありました.その観察を終えてから,池を後にしました.この池では,オオキトンボとタイリクアカネ以外のトンボを目にしませんでした.

天気のよい日に,また,晩秋のトンボたちを見に来ることにしましょう.




続 トンボ歳時記
No.652. 続コバネアオイトトンボの観察.2018.10.30.

「チャンスは徹底的に」ということで,今日もコバネアオイトトンボの観察に出かけてきました.実は10月28日にも今日と同じ目的で出かけています.目的とは,コバネアオイトトンボの繁殖活動をビデオに収めることです.絶滅危惧I類の共通の特徴として,ある年に突然姿を消すというのがあります.ここのコバネアオイトトンボもどうなるかまったく予断を許しません.そこで,記録だけはきっちりと撮っておこうということで,実に3回連続になりますが,出かけることにしました.

朝10:00過ぎに現地に入りました.周辺の草地には,今日はメスばかりが見つかりました.今までメスの姿を見ることがなかったので,今日は幸先がいいと感じました.

▲茶色型のコバネアオイトトンボのメス.

▲腹部が微妙に曲がっている.この個体群は遺伝的多様性が失われている可能性がある.

▲緑色型のコバネアオイトトンボのメス.

天気は晴れでいいのですが,今日は風がやや強いようです.到着してから1時間ほどは,トンボたちの動きがほとんどありませんでした.タイリクアカネやキトンボもポツポツといった感じです.実はコバネアオイトトンボ以外にタイリクアカネの打泥産卵の写真を必要としていたので,それもねらおうと思っていましたが,11:21にやっと産卵にやって来ました.今日初めてのアカネ属の産卵です.コバネアオイトトンボはもう少し遅いと踏んでいるので,その後入ってきたキトンボなど,しばらくはアカネ属の記録を撮っていました.

コバネアオイトトンボの方は,オスやメスがヒメガマの根際や,池の畔にやって来てはいますが,産卵の気配はありません.

▲わずかに生えているカンガレイの植生内でメスを待つコバネアオイトトンボのオス.

▲ヒメガマの根際に止まる金色型のコバネアオイトトンボのオス.

▲ヒメガマの根際に止まる緑色型のコバネアオイトトンボのオス.

▲ヒメガマの枯れ茎に止まるコバネアオイトトンボのオス.やはり腹部が曲がってしまっている.

▲池の周辺のスゲに止まる金色型のコバネアオイトトンボのメス.

時刻が12時を回りました.28日は12:30くらいに産卵を見つけたので,もう少し待たねばならないと思い待ち続けました.しかし,12:30になっても産卵が始まらず,ヒメガマが秋の暖かい日差しの下で風に揺られているだけです.風が強いのでダメかな...などと考えながら,諦めては何も手に入らないという言葉を思い出し,待ち続けました.そして,12:59,やっと,産卵しているペアを見つけることができました.

▲ヒメガマに産卵するコバネアオイトトンボのペアを見つけた.12:59.

▲上の写真で寄ったもの.

このペアの産卵を観察しているとき,もう1ペアがタンデムになって飛んできました.はっきりと確認はできなかったのですが,足下でオスがメスを捕まえた直後のペアだったようです.だとすると,移精行動から交尾を行うはずです.コバネアオイトトンボの交尾はまだお目にかかったことがありません.産卵中のペアは一時お預けにして,こちらの観察に切り替えました.移精行動,交尾は,予想通り行われました.交尾が始まった時刻は13:15です.

▲移精行動.2回ほど失敗して3回目に成功.継続時間は約1分.ビデオからの切り出し.

▲交尾.途中でカメラを動かしたため,交尾を中断して移動した.

▲中断時間も含めて約25分間継続した.

交尾の観察中,先ほどの産卵ペアが移動し,とても近くで産卵をしてくれるようになりました.3回目になって慣れたせいではないでしょうが,ものすごく神経質でなかなか近寄れなかったここのコバネアオイトトンボに,今日は割合簡単に近づくことができました.しばらくするとこのペアのオスはやがてメスを放して飛び去り,メスは単独で産卵するようになりました.

▲交尾の観察中に移動して産卵を再開したペア.

▲単独産卵をするコバネアオイトトンボのメス.

交尾ペアの方は,交尾後移動して,産卵を始めました.この基質が気に入ったのか,長い時間産卵を続けていました.最後まで見ずに,観察を終えました.

▲交尾後産卵を始めたコバネアオイトトンボ.

▲上の写真の裏側から撮ったもの.

コバネアオイトトンボは,アオイトトンボやオオアオイトトンボに比べて産卵管が頑丈でなく,柔らかい組織を持つカンガレイとかクログワイにもっぱら産卵すると言われています.ここの個体群は,それと異なりヒメガマに産卵しています.本当に産卵できているのか,産卵後のヒメガマの葉を持ち帰り,実体顕微鏡で観察してみました.すると,10個足らずの産卵痕が見つかりました.さらに,葉を切り開いてみたところ,中にきちんと卵がありました.ヒメガマの葉の中は空洞になっており,表面さえ突き抜ければ,卵は中にきちんと収められるようです.

▲産卵痕:顕微鏡で見た,コバネアオイトトンボが産卵していたヒメガマの葉の表面に穴が開いている.

▲コバネアオイトトンボの卵.葉を切り開いて,卵の存在を確かめてみた.

こうやって切り開いてみると,ヒメガマの葉の内部組織は決して固いわけではないことが分かります.もしコバネアオイトトンボにとって固いのであるとすれば表皮組織が固いということになるでしょう.実際ビデオを見ると,ノコギリを引くようにゴシゴシと何度も産卵管で表皮組織を切りつけています.写真で確かめても,産卵管は確かに表皮を突き破っています.ビデオもリンクしておきますので,よければ一度見てください.

▲産卵管が確かに表皮を突き抜けて入っているのを写真で確かめてみた.

▲ビデオ:コバネアオイトトンボの繁殖活動.

さて,14:30ころ帰途につきました.帰りに周辺の草むらを歩くと,西に傾きかけた陽を受けて,コバネアオイトトンボのメスが止まっていました.摂食をしているようです.それにしても今日はよくメスに出会いました.

▲昼下がり,ねぐらで摂食をしながら憩うコバネアオイトトンボのメス.

帰りに車を止めているところで,地元の農家の方に会いました.連日来ているので,「また来ました」と会釈すると,にやっと笑って返してくれました.先日話の中で,「池の下の方は農薬を使っているからトンボはおらんやろ」と言っていたのが印象的で,地元の人もトンボ減少が農薬と結びついているのを感じているのかな,と思ったりしました.

▲先日28日に見た,腹部が曲がったメス.カンガレイの中に止まっていた.2018.10.28.撮影.

ここのコバネアオイトトンボの個体群には,今日紹介したように腹部が曲がった障がいを持った個体がいます.もはや他の個体群とは交流のない分断された個体群であることは間違いないでしょう.しかも,主な産卵植物がヒメガマです.悪条件が重なっていますので,なんかの環境変動があれば突然姿を消すことはあり得ると思います.見守っていきたいです.


最後に今日見かけたアカネ属のトンボを紹介しておきましょう.今後の観察はこんな感じで,ポツポツ止まっているアカネ属をあちこちで記録するといった感じになります.

▲まずはキトンボのダブル産卵.キトンボは本当に一時に産卵にやって来る.

▲タイリクアカネの産卵.打泥産卵はうまく撮れなかったが,岸辺にたまる凹地の水に産卵していた.

▲ナツアカネの交尾.ナツアカネの交尾を近くて見ることはあまりないように思う.

▲マユタテアカネのオス.このトンボも12月後半まで見ることができる長寿のトンボだ.

▲コノシメトンボのオス.みんなこのように白い石に止まっている.今日はちょっと気温が低いからか....

▲リスアカネのオス.翅の先端に褐色部がかなりうすくなって,老熟を思わせる.