続 トンボ歳時記
No.581. アサヒナカワトンボの観察.2018.5.10.

今日は晴れの予報でしたが,朝から曇り,そしておまけに気温が低い.セーターを着てちょうどよいほどでした.ときどき雲の切れ間から太陽が顔を覗かせる程度で,トンボ観察は成果があまり期待できそうにありません.そこで,黄色い翅のアサヒナカワトンボがいると以前から聞いている場所へ,それを探しに行くことにしました.オスのアサヒナカワトンボなら,晴れ間に出てくるだろうという予測でした.

▲今日の空模様.ほとんど雲に覆われていて,わずかにある青空からときどき太陽が顔を出す.

10:00ころ,現地入りしたときの気温は14℃.さすがにトンボは何も見当たりませんでした.しばらく天気の回復を待つことにしました.晴れ間がときどき出て,日差しが暖かく感じられますと,樹上からアサヒナカワトンボのオスが降りてきました.まずは最初の出会いを大切に,1枚ゲットしました.

▲10:45,やっと目の前に姿を現したアサヒナカワトンボのオス.透明な翅である.

透明翅型のオスです.しかしその後が続きません.少し周辺を歩いてみますと,ヤマサナエの未熟なメスが飛びました.けれども結局11:30ころまで,ほとんどトンボの動きはありませんでした.先に昼食をとり,またしばらく待ちました.気温は18℃になっています.しかしやはり晴れ間が出ないとトンボに動きはありません.ヤマサナエの未熟な個体だけが,短時間の晴れ間に摂食するために,樹上から降りてきます.

▲ヤマサナエのオス.今日は延べ3頭の個体を見た.

▲ヤマサナエのメス.2個体を見た.わずかの日差しの間に出てきて,何かを摂食している.

アサヒナカワトンボは日差しが好きみたいですね.12:30を過ぎたころから,やっと,太陽が出ている時間の方が隠れている時間より長くなってきました.そうすると,樹上から次々とアサヒナカワトンボが降りてくるのです.やはり太陽の効果は偉大です.

▲次々に降りて来はじめたアサヒナカワトンボのオスたち.下の個体は翅がやや黄色い.

そんな中,今日初めてメスを発見しました.アサヒナカワトンボのメスなんて特別珍しいわけでもありませんが,なんか,やっと今日が始まった気がして,気合いが入りました.なおこのメスはすぐにオスに見つかって,交尾をしました.

▲12:35,今日初めてお目にかかったメス.

▲上のメスがオスにつかまった.移精行動.

▲同上.交尾態になった.

オスがたくさん出てきましたので,翅の黄色いオスを探すことにしました.それで見つけたのが下の個体です.空をバックにすると黄色翅に見えます.でも光の加減では,翅が褐色にけぶっているだけにも見えます.翅脈も黒いですし.まあ,かつてのニシカワトンボ時代のいわゆる esakii なる個体ではないようです.

▲翅の黄褐色が強い個体.単に透明翅が茶色にけぶっただけとも思われるし,むしろそうであろう.

▲角度によっては本当に濃い黄褐色であるように見える.

▲空をバックにすると,翅の色づきがよく分かる..

そうこうしているうちに時刻も13時を過ぎるころになりました.大分暖かくなってきましたし,太陽もよく顔を出すようになりました.次は産卵しているメスを探すことにしました.でも,なかなか産卵メスは見つかりません.産卵は日陰で行われることが多く,やはりまだ気温が低いせいかもしれません.そんなとき,メスの比較的新鮮な遺体が見つかりました.産卵途中で死んだのでしょうか,産卵基質の朽木の上に横たわっていました.

▲朽木の上に横たわって息絶えているアサヒナカワトンボのメス.

そして,13:48,足下からオスが飛んだのを見て,そのそばの朽木を慎重に調べたところ,やっと産卵しているメスを見つけました.

▲最初に見つけた産卵メス.この後すぐに飛び立ち産卵を再開しなかった.

ただ,このメスかなり神経質で,ストロボ一発で飛び上がり,その後産卵を再開しませんでした.アサヒナカワトンボの産卵メスは結構神経質です.静かに静かに流れを遡っていきました.ここのアサヒナカワトンボは,ほとんどの場合,オスが警護しています.ですすから,オスが水面近くから飛び立ったら,たいがい産卵メスがいます.その後で,オスが飛び立ったのを見てあわてたため,メスを飛ばせてしまうことがありました.さらにしばらくいくと,メスがオスの警護なしに産卵しているのを見つけました.この個体は神経質でなく,十分に観察と撮影ができました.これが14:15ころです.

▲オスの警護なしに産卵をしていたメス.よく移動しながら産卵していた.

▲上と同じだが,ストロボをつかわず,ISO1000で撮影してみた.体色はむしろ自然になった.

観察を終えて,さらに遡っていくと,今度はオスを先に発見し,そして産卵メスを見つけることができました.オスは少し離れたところでメスを警護していました.14:33でした.以前ここに来たときより少し時間的に遅いような気がします.またオス・メスとも以前ほど活動が活発ではありません.やはり,気温のせいでしょう.

▲オスが警護する産卵.左の白矢印がオス,右の白矢印が産卵しているメス.

▲腹部先端を水に沈めて,水面下に産卵する.

ということで,だいたい今日見るべきものは見ましたので,これで終わることにしました.