新 トンボ歳時記
No.498. ヤブヤンマの観察.2015.8.2.

今日はヤブヤンマの観察に出かけました.ビデオを撮るのが狙いです.新しいビデオカメラはハイビジョンで,映像素子が大きくなった分,ビントのボケがはっきり出てくるので,なかなか難儀をしています.はっきり言って,まだまだ使いこなせていません. さて,今日は現地に入ったのが11:30ころで,すでにオスが入ってメスの探索飛翔をしていました.本当に丹念に,メスが産卵しそうな場所を逐一検査しているような飛び方です.はじめはメスが来ているのかと思ったほどでした.オスのこういった行動は初めて見たので,新鮮な感じでした.今日はオスの活動が活発で,次から次へとオスが入ってきて,同じような探索活動をしていました.中には探索飛翔の後で静止するオスもいました. さて,12:30ころでしたか,メスが産卵に入ってきました.そっと近づきましたがメスが飛び立ち,産卵ポイントを移動したときでした.オスが目ざとく見つけ,50cmほど離れたところで一度短時間停止飛翔して相手を確認した後,一気にとびかかってメスを捕まえました.カメラを手にしていればシャッターが切れる位置でしたが,手に持っているのはビデオカメラです.絶対に撮影には間に合わないと思って,思わず左手をメスに乗りかかったオスの上にかぶせました.そう,2頭とも手づかみしたのです.そして証拠写真を撮っておきました.

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これはスチルカメラを持っていれば絶好のシャッターチャンスでした.残念です.その後,メスは2回入ってきまして,一応ビデオカメラに収めはしましたが,あまりいい絵ではありません.ビデオカメラに慣れることが必要なようですね.

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さて,今日の外道は,オオシオカラトンボです.こちらは面白い行動を観察できました.まずは縄張りオスが産卵に入ってきたメスを捕まえて,飛びながら交尾するところからです.今回はこれがうまくピントが来ました.このメスの複眼は灰褐色をしていることに注目しておいてください.

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そして通常通り,交尾を解いて産卵です.オスはいつも通りメスを上から押さえつけるようにして産卵を促します.

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このメス,私の足元で産卵し始めて,上から見下ろすような位置での撮影になりました.これはこれでめったにない位置ではあります.メスの腹部先端が上を向くほどにスナップをきかせて水を飛ばしているのがわかります.

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そんな時,もう1頭メスが入ってきました.オスはそのメスを捕まえるのに成功し,交尾をしました.このメス,複眼がやや緑がかっているので先のメスと区別できますね.

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やがて交尾が解かれ,緑眼のメスは,先の灰褐色眼のメスと同じ水溜りで産卵を始めました.写真のメスの複眼の色を比べると,緑眼と灰褐色眼がいるのが分かります.

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このオスは一夫二妻状態で,2頭のメスを同時に警護しながら,干渉してきたシオカラトンボのオスに体当たりしています.忙しいですね.

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そして緑眼のメスが先に飛び去り,残った灰褐色眼のメスだけが産卵を続けました.ところがこの後のオスの行動が意外でした.通常オスはメスを上から下に押し付けるように産卵を促すのですが,このオスは逆に,メスを下から突き上げるような動作をし,結局メスは上方に飛び去ってしまいました.「もう産卵するな」ということなのでしょうか!?

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警護のしかたには,連結状態で行う完全な警護に対して,オオシオカラトンボのように飛びながら警護する方法があります.後者は,もし別のメスが入ってきたらそのメスとも交尾できる点が有利である,と本などにはよく書かれているのですが,まさに今日の観察はそれを地でいっている感じでした.教科書的な事実を目の当たりにするというのも,なかなか面白い体験でした.ただ最後の行動だけはどんな本にも書いていませんが...




 夏の代表的なヤンマ,ヤブヤンマ.今年もその元気な姿を見せてくれた.オスはメスを探すように林の中を飛び回り,時々木にぶら下がって休む.そんなオスの姿から始まって,懸命に産卵するメスの姿を追いかけた.
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