新 トンボ歳時記
No.434. ひっそりと夏を越しているヤンマの観察 2013.8.18.

今日は近場で「ひっそりと夏を越しているヤンマの観察」を行うことにしました.というのは嘘で,最初はハネビロエゾトンボを観察に出かけたのでした.例年の観察場所は水がほとんど枯れていて,オスが1頭通り過ぎたのを見ただけで,後は全くすがたが見られませんでした.同じ場所で鳥を撮影していた人は,「早朝にハネビロが産卵に来た」と言っていましたので,まだ産卵をやっていることは間違いないでしょう.

ところで,現地に着いてすぐに気づいたのが,さっと飛び立ったカトリヤンマでした.流れなのでミルンヤンマかもと思いましたが,カトリヤンマでした.追いかけていくと,あちこちからカトリヤンマが飛び立ちました.樹林の中で複数のカトリヤンマに出会うのは本当に久しぶりです.ハネビロエゾトンボの方は,もう毎年にように来ていますので,こちらの方がありがたい感じでした.見つけた個体をできるだけ全部記録撮影しようと思い,時間をおいては探索をしました.

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オスの方はどうやら2頭のようでした.写真で気づいたのですが,腹部の斑紋が緑色の個体と水色の個体があります.杉村ら(1999)や尾園ら(2012)の図鑑には,オスは,未熟なうちは緑色で成熟すると水色になると書かれています.が,胸部の色彩や複眼の輝きから判断して,どちらかといえば成熟した個体の方が緑色で,未熟な個体の方が水色をしているのです.ひょっとしたら緑色のままの個体があるのかもしれません.今後の探索課題ですね.

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一方メスの方は,写真で個体識別すると,合計3頭撮影していました.いずれも尾毛は切れていなくて,まだ新しい個体であることが分かります.ところでメスの方にも,腹部の斑紋が水色のものと緑色のものがあることに気づきました.杉村ら(1999)や尾園ら(2012)の図鑑には,メスは緑色であると書いていますので,これも水色になる個体があるのかもしれません.ということで拡大写真を載せておくことにしました.

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カトリヤンマは,どちらかといえば地味なヤンマで,トンボ屋もあまり注目しない種類です.淡色斑も小さいし十分な観察が為されずに放置されていたのかもしれませんね.

さて,ハネビロエゾトンボは来ないし,嬉しいことにカトリヤンマが見られたので,この勢いでミルンヤンマの未熟な個体をさがしに姫路市の方へ行くことにしました.ここからが「ひっそりと夏を越しているヤンマの観察」の始まりです.

着いたとたんミルンヤンマのメスに出会いました.ところが,カメラを構えましたがピントが合わず,どうしたものかと思っている間に飛び去ってしまいました.カメラがマニュアルフォーカスモードになっていたのです.武器はきちんと整えてから出かけないといけませんね.でも幸先がよかったのでいるはずという信念で約1時間,林の中を探し続けました.そしてやっとのことで,次の個体=オスを見つけることができました.

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ホームページ用のオスのいい生態写真がなかったので,慎重に撮影を繰り返し,現地を後にしました.こうなると,次はコシボソヤンマだと,またまた勢いで出かけました.でも現地はほとんど水が枯れて,ところどころに水たまりが残る程度の状態でした.それでもメスのコシボソヤンマが入っていたのですが,私が林に踏み込んだとたん,わずかに湿った程度の流れの上を2,3回旋回して飛び去ってしまいました.ちょっと時間が遅かったかもしれません.水たまりでは小鳥たちが水遊びをしているようでした.ヤマガラがこちらを見てなかなか飛び立たなかったので,今日のゲストに1枚撮っておきました.

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最後に今日見かけた外道たちです.夏の終わりによく見かけるオオシオカラトンボの未熟な個体,またアカトンボたちも,林の中でひっそりと秋の到来を待っていました.

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ということで,今年のお盆休みは終了です.今後は夏の終わりのトンボと,秋のトンボということになります.一年経つのは本当に早いと感じる今日この頃です.


尾園暁・川島逸郎・二橋亮,2012.日本のトンボ.文一総合出版.東京.
杉村光俊・石田昇三・小島圭三・石田勝義・青木典司,1999.原色日本トンボ幼虫成虫大図鑑.北海道大学図書刊行会.札幌.