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神戸ブランドのムカシトンボ(2) /2011.5.21., a.m.-p.m.

2週間前羽化殻を見つけたので,そろそろ繁殖活動を開始するころだと考え,もう一度神戸のムカシトンボの産地へ出かけてきました.

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▲観察地の風景
 上:水の湧き出し口,中:産卵場所の全景.下:観察地に生えるフキ.

前にも紹介しましたが,この場所は,水の湧き出し口(写真上)があって,そこからわき出る水が流れる,流程100m程度の沢です.この湧き出し口より上側はよく水が伏流します.また,この湧き出し水も,100mほど下流へ行くとしょっちゅう伏流します.安定的に水が流れているのはこの100m程度の部分で,ムカシトンボはそこに生息しています.幼虫が発育を完了して羽化するのに5~8年もかかるので,水がしょっちゅう伏流して枯れると,幼虫が死に絶え,ムカシトンボはそこから姿を消します.そういう意味でここは貴重な環境です.この神戸の生息地はぜひとも守っていかねばなりません.

この生息地に着いたのは,9:20でした.着いたときにはもやが出ていて先行きが不安でしたが,現地に着いたときには,太陽が雲間から顔を出すようになりました.沢を一通り歩いてみることにしました.すると,上の写真中の部分に差しかかったとき,足元から1頭のムカシトンボが飛び出しました.とても幸先のよいスタートです.今日は待つ作戦ですが,そこに陣取る前に,一応下流の方も見てきました.しかし,産卵植物が一番豊富なのはこの場所でした.フキ(上の写真下)やウワバミソウ(下の写真上)が生えていて,いかにもムカシトンボの産卵環境という感じです.ここに陣取ることにしました.

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▲姿を現し始めたムカシトンボ.
 上:今日一番初めに見つけたメス個体.ウワバミソウに産卵している.
 下:オスのパトロール飛翔.

10:00ころから腰を落ち着けて待つこと30分以上.その後まったくムカシトンボは飛びません.しかし,10:40に,ついにメスが入りました.フキの下にもぐりこんだり,植物の茎に次々と止まったりしながら,産卵に適しているかどうか,腹部先端を接触させて探っているようです.そして,ついにウワバミソウの茎に止まって産卵を始めました.すぐにいい位置に移動してカメラを構え2,3枚シャッターを切ったとき,なんと足で石を蹴ってしまいました.がさがさと大きな音がして,メスはびっくり,ウワバミソウから落ちて,ばたばたと逃げていってしまいました.なんとまぁ,大いに落胆したのはいうまでもありません.

まあ,愚痴ってもしかたありませんので,次を待つことにしました.すると30分ほどしてから,また1頭ウワバミソウの所にムカシトンボが入りました.近寄ってみるとオスです.オスがホバリングしながらメスを探しています.フキやウワバミソウやジャゴケに近づき,メスがいないかなめるように探しています.追いかけていくと逃げるので,いい写真にはなりませんでした.

追いかけていったときに,不意にメスが飛び込み,ジャゴケで産卵を始めました.しかしストロボを1発焚いただけで,逃げていってしまいました.どうもいやな予感がしてきました.

今度はウワバミソウの前で待つことにしました.オスが2度ほど通り過ぎましたがメスは来ません.もう一度上流へ行って様子を見て帰ってきたときでした.ウワバミソウで産卵しているメスと出会いました.やはりこのポイントが正解でした.

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▲ウワバミソウに産卵するメス.
 上:飛び立って,止まる場所を探しているメス.
 下3枚:ウワバミソウの茎に産卵するムカシトンボのメス.
 下の写真には,産卵痕がはっきりと見える.

今までの失敗の轍は踏まないと,慎重に撮影を始めました.この個体は産卵に夢中になっていて,まったく私の動きにも反応しませんでした.やっと落ち着いて,200枚以上の写真を撮ることができました.メスは,Sの字を描くように少しずつ前進しながら,つまり茎を登っていきながら卵を植え付けています.葉っぱが邪魔になると,少し飛んで場所を変えて産卵します.おもしろいことに,一度産卵した茎に産卵をしようとすると,それが分かるのか,すぐに飛び立って場所を変えます.かなり神経質に卵を置く場所を選んでいるようです.

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▲ジャゴケに産卵するパフォーマンスも見せてくれた同じメス.

このメスは約30分産卵を続けた後飛び立ちました.まだ産卵する気は残っているようなのでついていくと,なんと,ジャゴケに止まって産卵をしてくれました.わずか1分ほどのことでしたが,なんとまあサービス精神の豊かなメスなんでしょうね.まだまだパフォーマンスを見せてくれるかと期待しましたが,カゲロウのような小昆虫が目の前を通りすぎたとき,それをくわえ,上空へ飛び去ってしまいました.

神戸のムカシトンボをカメラに収めたいと願って15年,なかなか来なかったということもありましたが,やっと実現することができました.今日は久しぶりに達成感を味わいました.なお,現地ではヒメクロサナエの羽化殻が3つ着いていました.次はヒメクロサナエです.

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▲ヒメクロサナエの羽化殻.

写真に夢中になっているときにブユに耳を咬まれて血が出ていました.トホホ.