トンボの体のつくり
成虫の体のつくり
 トンボは昆虫です.昆虫の特ちょうは,からだが三つの部分に分かれ,それぞれ頭(あたま)胸(むね)腹(はら)とよばれていること,また脚(あし)が6本あること,翅(はね)が4枚あることです.トンボのからだもはっきりとそのようになっていることがわかります.ただし,昆虫の中には翅が2枚のものや,ないものもあります.

成虫の体のつくりと各部の名前
キイロサナエ♂:オスには副性器と上・下付属器がある.
成虫の体のつくりと各部の名前
ヤブヤンマ♀:メスには副性器はなく産卵管と尾毛がある.
成虫の体のつくりと各部の名前
マユタテアカネ♀:産卵管ではなく産卵弁を持つメスの種類もある.
成虫の体のつくりと各部の名前
コバネアオイトトンボ♀:均翅類には四角室がある.
 には,複眼(ふくがん)とよばれる大きな「目」があります.この大きな「目」のおかげで,飛びながらでも,飛んでいる小さな虫をみつけてつかまえることができます.あと,エサをたべるための口(くち)や,みじかい触角(しょっかく)があります.

 には,大きな翅(はね)が4枚と,つかまえたエサをにがさないように,するどいとげのある脚(あし)が6本あります.一つ注意しなければならないのは,前脚がちょうど首のように見える部分についていますが,この部分は「胸」の一部です(詳しくは前胸(ぜんきょう)といいます).

 には,10の節(ふし)があり,これはトンボの大切な特ちょうです.胸に近いほうから,腹部第1節(ふくぶだいいっせつ),第2節,・・・のようによびます..

翅のつくり
翅のつくり.上:アオヤンマ(不均翅類),下:アオイトトンボ(均翅類).
 トンボのはねは,大空を自由に飛びまわれるように,軽くじょうぶにできています.翅脈(しみゃく)というすじが,網の目のようにはりめぐらされていて,そのあいだの翅室(ししつ)という部分に,透明なまくがあります.翅脈は骨組みの役割をしています.特に前縁近くの翅脈は,山と谷が交互になっていて,翅を強くするのに役立っています.

 トンボとよくにた昆虫はたくさんいますが,はねに結節(けっせつ)三角室(さんかくしつ)縁紋(えんもん)などがあるのが特ちょうです.均翅類では三角室の代わりに四角室(しかくしつ)があり,また縁紋(えんもん)はないものがあります.


トンボの体のつくり
オスとメスの見分け方
 オスでは,腹部第2,3節に,副性器(ふくせいき)とよばれる,メスとの交尾(こうび)につかう器官(きかん)があります.メスでは,第9節に産卵管(さんらんかん)があるものと,第8節に産卵弁(さんらんべん)をもつものがあります.トンボのオスとメスは,この副性器があるかないかで区別できます.副性器は横から見ただけでは見えないことがあります.必ずうら返して見てください.

 腹部第10節の先には,メスでは尾毛(びもう)とよばれるきかんがついていますが,オスでは上付属器(じょうふぞくき)下付属器(かふぞくき)とよばれるものがついていて,メスと連結するときに使われます.

マユタテアカネの交尾
交尾のしかた(マユタテアカネ).
オスはメスの複眼の後を上付属器と下付属器ではさみ,
副性器を産卵弁のすきまからさしこんで交尾する.
トンボの体のつくり
幼虫の体のつくり
 トンボの幼虫のすがたは 均翅類と不均翅類とでは 大きくちがっています.

不均翅類の幼虫(コヤマトンボ)
均翅類の幼虫(ムスジイトトンボ)
上:不均翅類の幼虫(コヤマトンボ).下:均翅類の幼虫(ムスジイトトンボ).
 トンボの幼虫は,えらで呼吸しています.えらは肛門(こうもん)のなかの,直腸(ちょくちょう)というところにあります.ですから,外からは見えません.均翅類のトンボでは,尾さいとよばれるえらが3枚ついていて,これを使って呼吸しているといわれています.しかしこれがちぎれてとれても生きていますので,その役割ははっきりしていません.不均翅類では尾さいはなく,肛錘(こうすい)とよばれる突起物があります.

 大きな幼虫には,翅芽(しが)とよばれる,翅を収めるいれものがあります.小さな幼虫ではまだできていないか,あってもとても小さくめだちません.

 側棘(そっきょく)とは横のとげ,背棘(はいきょく)とは背中のとげのことです.これらは,幼虫の名前を決めるときに大切な区別点になります.

 幼虫の体でいちばんびっくりするのは「あご」です.正しくは下唇(かしん)といいいますが,折りたたみ式でのびるようになっています.これをすばやく出して,エサをとらえます.下の写真はトラフトンボが下唇をたたんでいるところと,オニヤンマの下唇をのばしたところです.

下唇
下唇.左:たたんだところ(トラフトンボ),右:のばしたところ(オニヤンマ).