トンボをさがしに行こう
トンボをさがしに行こう
 トンボの観察をするには,トンボを見つけなければなりません.最近は昆虫の数も減って,トンボをさがすのも難しくなってきていますが,それにも負けずにトンボをさがしに出かけてみましょう.でもその前に一つ注意を!

 トンボに限らず,野外へ生物をさがしに出かけると,そこには危険がいっぱいあります.特にトンボは水辺にいるので,水の事故にあう危険性が高いでのです.危険なため池や川には絶対に近づかないようにしてください.自然の中へ出かけるときは,必ず大人と出かけ,その人の指示にしたがって行動しましょう.子供どうしで出かける場合は,池のある近くの公園やビオトープ,よく整備された親水公園(しんすいこうえん)・自然公園などにしておきましょう.

 兵庫県南部で安全にトンボを観察できる公園は,たとえば西宮市の甲山森林公園,芦屋市の総合公園,神戸市須磨区の奥須磨公園,神戸市北区の森林植物園から修法ヶ原・市が原にかけての地域,神戸市垂水区の平磯公園,明石市の明石公園,加東市のやしろの森,高砂市の市の池公園など,たくさんあります.まずは身近なところでトンボをさがしてみましょう.そして大きくなったら自然の中へ出かけて行くようにしましょう.

神戸市立森林植物園にある長谷池 神戸市の奥須磨公園にある小松池
神戸市立森林植物園にある長谷池 神戸市の奥須磨公園にある小松池
公園にも十分トンボが住みつきそうな池があるので,こういったところをさがそう.



トンボをさがしに行こう
トンボの成虫はほぼ一年中見られる
 まずトンボをさがす季節についてお話しましょう.ここでさがすトンボは,親のトンボ,つまり成虫ですが,成虫は種類によって,見ることのできる季節がちがいます.多くのトンボを見たければ,4月から観察を始めなければいけません.トンボは夏の昆虫だと思っている人がいるかもしれませんが,トンボの中には,4,5月ころにしか見られないものがいます.そして,秋は11月に入るまで観察を続ける必要があります.秋遅くにしか見られないものもあるのです.

 春の季節トンボ(春季種:しゅんきしゅ)は,だいたい4月の終りころに成虫があらわれ,6月のはじめにはすがたを消してしまうトンボたちです.これらのトンボの中には,みなさんがあまり目にすることのない,めずらしい種類がたくさんふくまれています.

ヨツボシトンボ オグマサナエ
春季種:ヨツボシトンボ
5月の連休ころにたくさん見られる
春季種:オグマサナエ
春早くに羽化し4〜5月に卵を産むサナエトンボ
ニホンカワトンボ サラサヤンマ
春季種:ニホンカワトンボ
5月中植物の茂った小川で見られる
春季種:サラサヤンマ
5月ころに湿地の上を音もなく飛ぶ小型のヤンマ


 夏の季節のトンボ(夏季種:かきしゅ)は,だいたい5月の終わりころに成虫があらわれ,早いものは7月中に,遅いものでは9月ころにすがたを消してしまうトンボたちです.種類としては一番多いトンボたちです.夏に日当たりのよい池で見られるトンボたちは色あざやかなものが多く,日かげでは大型のヤンマたちがひっそりとくらしています.

キイトトンボ コシアキトンボ
夏季種:キイトトンボ
夏に植生の豊かな池を飛びまわる
夏季種:コシアキトンボ
日陰の多い池で水面上を往復して飛びまわる
ショウジョウトンボ チョウトンボ
夏季種:ショウジョウトンボ
夏に真っ赤の色が鮮やかな池のトンボ
夏季種:チョウトンボ
7〜8月ころ直射日光の当たる暑い池を飛ぶ
オナガサナエ オニヤンマ
夏季種:オナガサナエ
真夏の小川で,石の上などに止まっている
夏季種:オニヤンマ
真夏の昼間に木もれ日のさす小川の上を往復して飛ぶ
ヤブヤンマ コシボソヤンマ
夏季種:ヤブヤンマ
夏の夕方群れになって上空を飛ぶが昼間は林の中にいる
夏季種:コシボソヤンマ
8月ころ林の中のすずしくうす暗い小川の上を飛ぶ


 秋の季節のトンボ(秋季種:しゅうきしゅ)は,成虫の出現は意外と早く5月終わりから6月にかけてなのですが,夏の間,うす暗い林の中や高い山の上で目立たないように生活し,秋になってから水辺にあらわれるトンボたちです.これらのトンボたちのほとんどは,秋に卵を産みますので,卵のまま冬を越すことになります.

アオイトトンボ コノシメトンボ
秋季種:アオイトトンボ
9月ころにたくさんのペアが産卵を行う
秋季種:コノシメトンボ
10月を中心に産卵に来るアカトンボ
キトンボ カトリヤンマ
秋季種:キトンボ
12月ころまで見られるオレンジ色のアカトンボ
秋季種:カトリヤンマ
10月中ごろ水がなくなった水田などに産卵にやってくる


 最後は,早いものは4月終わりころにあらわれ,10月ころまで続けて見ることができるトンボたちです.みなさんにとっても身近な種類が多いのが特ちょうです.

シオカラトンボ ギンヤンマ
季節性のない種:シオカラトンボ
4月から10月はじめまで見ることができる
季節性のない種:ギンヤンマ
4月から10月はじめまで見ることができる
アジアイトトンボ ウスバキトンボ
季節性のない種:アジアイトトンボ
4月から10月はじめまで見ることができる
季節性のない種:ウスバキトンボ
南方からの飛来種で春は少ないが6月ころから10月まで見られる


 さて,真冬にはトンボはいないだろうと思うかもしれませんが,実は成虫で冬を越すトンボが3種類います.ホソミオツネントンボホソミイトトンボオツネントンボです.つまり,成虫は1年中見ることができるということになりますね.

ホソミオツネントンボ ホソミイトトンボ
成虫越冬種:ホソミオツネントンボ
成虫で冬を越し春早くに産卵に来る
成虫越冬種:ホソミイトトンボの越冬型(えっとうがた)
夏にあらわれる夏型(なつがた)もある


 このように,たくさんのトンボたちを観察しようとすると,トンボのあらわれる季節をよく知って,その時期に,そのトンボのいる水辺へ出かける必要があります.では,次にどこへ出かければよいかをお話ししましょう.


トンボをさがしに行こう
トンボは種類によって好きな水辺がちがっている
 トンボは,種類によって,好きな水辺がちがっています.

 水辺とひとことでいっても,池,川,湿地(しっち)など,いろいろな種類がありますね.また,同じ池でも,水草の多い池,水草がほとんどない池,山中の日陰(ひかげ)の小さな池,田んぼの中の日当たりのよい広い池,など,見た感じがずいぶんちがう池があります.川でも,浅い小川,石がごろごろした山の川,平地を流れる広くて大きな川など,やはり見た目のちがいがあります.

 トンボたちは,これらのちがいを見分けて,自分の好きな水辺へ集まってくるのです.ですから,たくさんの種類のトンボを観察しようとすると,いろいろな水辺へ出かけていって観察する必要があります.


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トンボは季節によっている場所がかわる
 さて,トンボは羽化したあと,しばらくみじゅくな期間をすごします.このときに,水辺からはなれる種類が多いのです.ですからみじゅくなトンボは,水辺以外のところにいるものがあるのです.こういったトンボを見つけるためには,トンボの習性をよく勉強するしかありません.

 たとえば,カトリヤンマは,秋が来るまでの夏の間,林の中に潜んでいます.アキアカネは,高い山に上がっています.ハグロトンボニホンカワトンボは,川の近くの林の中にもぐりこんでいます.イトトンボの多くは,池のまわりの草原にちらばっています.オグマサナエフタスジサナエなどは,池の近くの道ばたに止まっていたりします.このようにみじゅくな時期のトンボは,危険な水辺に近づかなくても見られるので,安全に観察できるメリットがあります.

カトリヤンマ未熟 カトリヤンマ成熟
未熟なカトリヤンマ 2016.8.3.
夏は樹林の中でひっそりとくらす
成熟したカトリヤンマ 2012.10.10.
秋深くなると夕方に産卵にやってくる


 いずれにしても,トンボに興味(きょうみ)を持ち,トンボを見たい気持ちを強く持ちつづければ,1年間で30〜50種類くらいのトンボを見つけることができるでしょう.


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トンボには,水辺に現れる時間がある
 トンボは,水辺に現れる時間があります.だいたいのトンボは朝から夕方まで水辺で見られますが,いくつかの種類のトンボや,またトンボの産卵などを観察しようとすると,一日の中の時間を選ぶことが大切になります.

 ヤブヤンマなどの林の中で暮らす大型のヤンマを見たければ,昼間林の中へ出かけてもなかなかそのすがたを見ることはできません.また水辺で待っていてもほとんどすがたを現しません.こういったトンボを見るには,夕方日がくれたころに,開けた谷筋へ出かけて空を見上げてみましょう.大型のヤンマが飛ぶのが見られるかもしれません.むかしはどこでも見られた風景ですが,最近は数が非常に減ったので,あきらめずに,いろいろなところでチャレンジすることが大切です.

昼間樹林で過ごすヤブヤンマ 夕方大空を飛ぶヤブヤンマ
ヤブヤンマのオス
昼間は樹林の中でメスをさがして過ごしている
ヤブヤンマのメス
夕方には谷間の上空を飛んでエサをとる


 また,トンボが卵を産むところを見たければ,種類によって卵を産みに来る時間が違いますので,その習性(しゅうせい)をよく勉強して,チャレンジする必要があります.いくつか紹介しておきましょう.

 まず春や秋の,比較的すずしい季節のトンボは,だいたい午前10時過ぎからお昼ごろまでに産卵にくる種類が多いです.春のサナエトンボやカワトンボのなかま,秋のアカトンボのなかまはだいたいこの時間帯です.でも,秋のオオアオイトトンボは午後から夕方にかけて,春のサラサヤンマや秋のカトリヤンマも午後から夕方にかけて産卵することが多いです.

 暑い真夏のトンボは,オスが水辺に現れる前の早朝に産卵に来る種類があります.林の中のすずしいところで卵を産むヤンマなどの種類は,午後に産卵することが多いです.

 いずれにしても,トンボとの知恵くらべです.これがトンボ観察の楽しみでもあります.なかなか見られなかったトンボが見られたり,めずらしいトンボの行動が観察できたりすると,自分だけの大切な秘密がもてたような気がして,わくわくする気分になれますね.みなさんも,トンボと知恵くらべをして,色々なトンボのいろいろな活動を観察してみましょう.


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トンボの観察のまとめ
 では,最後に,トンボの観察のポイントのまとめをしておきましょう.場所を中心に分けてみました.これらの風景の写真を見て,みなさんの家の近くや,観察に出かけた自然公園などに同じような風景のところがあれば,季節をよく考えて,いそうなトンボをさがしてみましょう

林に囲まれた水草の多い池



開放的で水草が少しあって岸辺のなだらかな池

夏季種(6〜 9月):コシアキトンボ
秋季種(9〜11月):アオイトトンボ


平地の水草が多い池

春季種(4〜 6月):オツネントンボトラフトンボ


川の上流の浅くてはばのせまい小川

夏季種(6〜 9月):オニヤンマミヤマカワトンボ
秋季種(9〜11月):ミヤマアカネ
一年中:なし


林の中のうす暗い川の上流

春季種(4〜 6月):アサヒナカワトンボ
秋季種(9〜11月):ミルンヤンマ
一年中:なし


水草がいっぱい生えている川の中流

秋季種(9〜11月):ミヤマアカネ
一年中:なし


林に囲まれた湿地

春季種(4〜 6月):サラサヤンマハラビロトンボ
夏季種(6〜 9月):エゾトンボ
秋季種(9〜11月):ヒメアカネ
一年中:なし


水田や用水路そして休耕田の湿地

春季種(4〜 6月):モートンイトトンボ
夏季種(6〜 9月):オオシオカラトンボ


林のそばにある明るい農道
 みじゅくなトンボをさがす場所です.


都市公園にある池

春季種(4〜 6月):なし
夏季種(6〜 9月):なし