トンボノート
No.846. キイロサナエを見に行った.2022.6.10.

春のトンボが終わって,初夏のトンボに移行しています.川では,アオハダトンボ,グンバイトンボ,コヤマトンボ,キイロサナエなどがこの時期のトンボです.前二者はこの間見に行きましたので,今日は後半の二者がねらいというところです.

▲日向に止まるキイロサナエのオス.

いつもは細い溝川によく止まっているのですが,今日は,オスたちは川の本流を飛び回っていました.ここはいつもホンサナエを見に来るところです.ですから撮影場所がホンサナエとかぶります.


▲いつもホンサナエが止まっているところにキイロサナエが止まって活動している.

ここで待ってもいいのですが,川幅が広いので,もしメスが来てもちょっと手に負えそうにありませんので,場所を変えることにしました.移動する前に,モートンイトトンボとハラビロトンボを見に行きました.


▲モートンイトトンボはたくさん発生していた.

モートンイトトンボのいる休耕湿地には今年は水がたくさんたまっていて,そのせいか,モートンイトトンボは非常に多く発生していました.ただ,もう9時を回っているためでしょうか,交尾態のものは全く見つけられませんでした.


▲ハラビロトンボもいろいろな成熟段階のものが混じって飛んでいた.

ハラビロトンボは渇水にもよく耐えるトンボで,逆に水が多いからといっていつもより多いというわけでもなく,いつも通りたくさん飛んでいました.様々の成熟段階の個体が入り交じって飛んでいるので,まるで展示会みたいです.ここにはヤマサナエもいました.


▲まだヤマサナエも活動をしている.

キイロサナエのいたところのすぐそばに,まだホンサナエが生き残っていました.メスです.結構遅くまで頑張っているんですね.


▲ホンサナエのメス.暑い地面の上でぐったりしているみたいだ.

さて,場所を移動しました.少し細い流れのところでキイロサナエを探すことにしました.ヤマサナエがあちこちに止まっていて,キイロサナエはまだ少ないように思えます.


▲細い流れの部分には,まだあちこちにヤマサナエが止まっている.

流れに降りたとき,足下からメスが飛び立ちました.キイロサナエかヤマサナエか分かりませんが,すぐにそばにいたオスがそれに気づき,あっという間に交尾態になって,山の方に飛んでいきました.やられましたね.このメスは一回打水したので,オスがいなければ産卵を観察できたのに残念です.

まあ,気にしても仕方ないのでもう少し上流の方に行きました.するとコヤマトンボが流れの上を行ったり来たりして飛んでいます.これを狙うことにしました.何百枚もシャッターを切りましたが,今日は成功率が低く,おそらく0.5%程度でした.


▲どういうわけか,右から左へ移動するときしか成功しない.

このコヤマトンボとは1時間近く格闘をしました.でもこれがキイロサナエを待つのにちょうどよかったみたいです.ふと足下を見るとキイロサナエのメスが止まっていました.これ,コヤマトンボに夢中になっているときに産卵していたのかもしれません.写真を数枚撮ったら飛び去ってしまいました.


▲キイロサナエのメスが流れの縁に止まっているのを見つけた.

これでは主客転倒です.これ以後は常に足下にも気を配りながら,コヤマトンボを見ていました.するとやってきましたキイロサナエのメスが.止まって卵塊を作っています.

▲産卵にやってきたキイロサナエのメス.

先とほとんど同じところにやってきました.ここ,産卵ポイントなのかもしれませんね.今回はコヤマトンボは無視して,キイロサナエの産卵を記録することにしました.卵塊を作ると岸に沿って往復するように流れの上をものすごく素早く飛んで打水します.この打水の瞬間は,全く手が出ません.


▲かろうじて写っていた,飛んでいるところ.

飛んでは止まり飛んでは止まりを繰り返しています.結局止まったときしか記録にとることができませんでした.


▲こんな感じで,止まったところばかりになった.

このメスは静止して卵塊形成を行い,打水するという形式の産卵でした.今回はオスに邪魔されず,飛び去るまで観察を続けることができました.オスは実は近くにいたのです.また,ヤマサナエのオスも近くにいました.どちらも気づかずラッキーでした.


▲数メートル離れたところにいたキイロサナエのオス.


▲やはり数メートル離れたところに止まっていたヤマサナエのオス.


▲このオスは近づくと例によって飛び立ちホバリングをした.

この時期はいろいろなトンボが見られるので,あとは,それらとの出会いを楽しみに,ぶらぶらしました.シオヤトンボが生き残っていました.老熟したシオヤトンボのオスです.メスを追って産卵させようとしているものもいました.まだまだ頑張っているようです.


▲老熟したシオヤトンボのオス.

オオイトトンボのメスが単独で飛んでいました.付近にオスが少ないためこんなことになるのでしょうか? モノサシトンボが羽化していました.キイトトンボも羽化していました.キイトトンボの方は,もう産卵している個体もいました.これらを見ているときに,オオヤマトンボが産卵に入りました.残念ながら一往復しただけでしたが,1枚だけピントが来ました.


▲オオイトトンボのメス.


▲羽化直後のモノサシトンボ.


▲オオヤマトンボのメス.産卵にやってきた.


▲キイトトンボの未熟個体.これは最初の休耕湿地にて.

キイトトンボは2ペアが産卵していました.私が近づくと逃げるのですが,産卵している個体の近くが安心するのでしょうか,すぐに戻ってきて近くに止まって産卵しようとします.産卵ペアは別の産卵ペアに対する誘引効果があるようです.


▲キイトトンボの産卵.もう夏が来たみたいに気分になる.

今日の最後を飾るのにふさわしいのは,ハッチョウトンボです.最後にハッチョウトンボを見に行きました.まだ個体数はあまり多くありませんでしたし,どういうわけかメスが見つかりませんでした.


▲ハッチョウトンボのオス.今日はマクロレンズで撮ってみた.

今日はたくさんのトンボに会いました.写真に撮れ(ら)なかったものとしては,コフキトンボ,シオカラトンボ,ショウジョウトンボ,クロイトトンボ,ヨツボシトンボ,ニホンカワトンボなどがいました.そうそう,最後の最後,トンボの自然死というのはあまりお目にかかれませんが,今日はクロスジギンヤンマが死んでいるのを見ました.こういうのは大概アリなどがやってきて体をバラバラにして持って行くのですが,これは宙ぶらりんの状態なので,アリの気づきが遅かったのかも知れません.


▲クロスジギンヤンマの自然死.翅が破れているが鳥にでも襲われたか...

ということで今日はここまでです.