トンボノート
No.696. ハラビロトンボの観察と… 2019.6.13.

今日は全国的にどこの天気予報も晴れ一色.そこで,この時期が旬のハラビロトンボの観察に行くことにしました.極めて普通種で,あちこちで見かけるトンボですが,群れるほどたくさんいるところは限られています.そしてその後は,今見られるトンボたちの状況を記録しておきます.

▲成熟段階の違うオスどうしが闘争を繰り広げている.

現地には9:30ころに入りました.もう気温も十分高く,ハラビロトンボたちは元気に飛び回っていました.メスもすぐに入ってきて.次々と産卵をしていました.湿地というか休耕田でオスメスが共同生活しているようなものですから,産卵を観察するのに不自由はありません.産卵に入ってきたメスは,もう,すぐにオスに見つかってしまいます.そして交尾しながら飛び回り,他のオスがそれを追いかけ回しと,1頭のメスに5,6頭のオスが群がります.もう乱痴気騒ぎのようです.

▲しばらく交尾飛翔した後,落ち着いたら止まって交尾を継続する.
▲交尾が終わるとオスはメスを放す.そしてメスはしばらく止まってじっとしている時間がある.
▲そしておもむろに産卵を始めるが,他のオスがそれをめざとく見つけ,交尾することも多い.
▲同じオス,別のオス,メスは産卵中に何度も交尾を強要される.

何度かこういうことをしているうちに,ちょっとした隙ができるのでしょう,メスはしばらく産卵を続けます.もちろん,交尾オスは上空で警護しています.しかし,しょっちゅう他のオスが干渉してくるので,それを追いかけ回している間に,メスを取られてしまうこともしばしばです.

▲再び産卵を開始するメス.
▲オスは上空でホバリングしながら警護する.


▲湿地のわずかに開けた水面で打水産卵を行う.
▲時には,茂みの中にもぐり込むようにして産卵することもある.
▲産卵時間は意外と短い.2,3分で飛び去ってしまう.

さて,この休耕湿地には,モートンイトトンボもいます.今日は産卵を見るのは止めて,記録だけ撮りました.メスは未熟な橙色の個体より,成熟した薄緑色の個体の方が目立ちました.もう十分な繁殖活動期に入っていました.

▲モートンイトトンボのオス.
▲モートンイトトンボの未熟なメス.
▲モートンイトトンボの成熟メスの飛翔.

さて,午後からは,別の池に普通種のトンボを見に行くことにしました.この時期は,毎年そうですが,春のトンボの生き残りと,夏のトンボが一緒に見られる時期です.まずは,コフキトンボ.このトンボ私はこの時期の若く美しい個体が好きです.しばらくすると,オスは特に粉が濃くなり,シミが出てきます.







▲風が強いせいでしょうか,みんな同じ向きを向いて止まっていました.

次は春の生き残りのトンボたち.シオヤトンボにヨツボシトンボ,そして写真には撮れませんでしたが,トラフトンボらしいのも飛んでいました.まだ頑張っているんですね.クロスジギンヤンマはまだしばらくは頑張り続ける感じです.

▲シオヤトンボのオス.
▲ヨツボシトンボのメス.まだお腹には卵がいっぱい詰まっているようだ.
▲クロスジギンヤンマのオス.

もう夏のトンボたちもほぼ完全に勢揃いしていました.オオイトトンボ,クロイトトンボ,キイトトンボ,オオヤマトンボ,ハッチョウトンボ,ショウジョウトンボ,コシアキトンボ,シオカラトンボ,…

▲オオヤマトンボのオス.池の周囲をパトロール中.
▲オオイトトンボの産卵.オスは翅をブンブンいわせている.
▲クロイトトンボのオスがメスを捕まえたとき,水に落ちて翅が水に捕らえられてしまった.
▲夏の代表的イトトンボ,キイトトンボの産卵.メスは黄色型.
▲こちらも夏の代表的な派手トンボ,ショウジョウトンボのオス.
▲ハッチョウトンボのオス.まだ数が少ない感じ.もう少しすればいっぱい飛ぶようになるであろう.
▲コシアキトンボの縄張りパトロール.一度交尾が成立したが,メスは産卵せず飛び去った.
▲シオカラトンボの若いメス.眼のエメラルドグリーンは独特.

見に行った一つの池で10種類以上のトンボがいたことになります.この時期は,一年中でトンボが一番多く出現する時期です.さて,最後はキイロサナエ.オスはすでに水辺に出ていましたが,数はまだ少なく,産卵シーズンは少し先になるような気配です.あと10日くらい後に来ると,激しい繁殖活動が見られるような気がします.

▲キイロサナエのオス.

今日一日で15種のトンボを記録できました.ヤマサナエに出会えなかったのが不思議です.全部の観察が終わってから,去年オナガアカネが産卵していたところへ行ってみました.幼虫をさがそうという魂胆でしたが,産卵していた湿地は,完全に水がなく乾燥した状態になっていました.ということで,今日はここまでにします.