トンボノート
No.685. コサナエとホンサナエの観察.2019.5.10.

今日から三連続晴れのもよう.まずは,コサナエとホンサナエを見に行きました.兵庫北部へは一週間前に行ったのですが,コサナエはまだ出始めという感じでしたし,ホンサナエには出会うことはできませんでした.もう十分出てきているでしょう.まずはコサナエから.現地に9:10ころ到着すると,コサナエの姿がまったくありません.ちょっと肩すかしを食らった感じでした.待つしかありませんので,待っていますと,メスが入ってきました.居ることは居るようです.最初のメスは気づくのが遅れ,撮影を逃しました.写真は2回目のメスです.

▲メスはこんな感じで入ってくる.草の間で音もなく産卵するので見逃すことが多い.


▲草の間で産卵を続けるコサナエ.

そのうちオスもポツポツと降りてきました.今年は去年より個体数が少ないのは事実のようです.メスも結局この後1頭入っただけでした.



▲なんか今日のオスはのんびりしている感じだ.

この池には,コサナエ以外にもいろいろなトンボが活動していました.まずはヨツボシトンボ.最近はヨツボシトンボも数が減ってきた感じがします.ここは,10頭くらいのオスが池を飛び回り,追尾行動を盛んにやっていました.メスも3回ほど産卵にやって来ましたけれども,もう,オスに終われて大変でした.数回打水したと思ったら交尾,の繰り返しです.何度も何度も違うオスと交尾を強要されていました.

▲止まっている時間はほんのわずか.落ち着く間もなく飛び回っていたヨツボシトンボのオス.
▲産卵にやって来たヨツボシトンボのメス.
▲打水の直後.打水の波紋と,水を前方に飛ばした水滴の波紋が見える.
▲打水の直後であるが,常に逃げ回っている.

クロスジギンヤンマもオスが2頭,飛んでいました.時々出会って追尾し,3頭目が入ってきたら池の外へ追いやっていました.小さな池ですので,クロスジギンヤンマはこの池では2頭分の縄張りが限度のようです.メスも産卵にやって来ましたが,オスに追われてすぐに逃げていってしまいました.ヨツボシトンボにしても,クロスジギンヤンマにしても,これが従来の姿ですね.メスは落ち着いて産卵ができないという…

▲池を縦横に飛び回ってパトロールするクロスジギンヤンマのオス.
▲産卵にやって来たクロスジギンヤンマのメス.

オオイトトンボは,まだ羽化している個体をたくさん見ました.しかし成熟個体の数が増えてきて,今日は産卵しているのを見ることができました.もちろんオスはあちこちで飛び回っています.産卵しているペアにちょっかいをかけるオスもたくさんいました.

▲オオイトトンボのオス.
▲通常の産卵姿勢.オオイトトンボ.
▲他のイトトンボがまわりをうるさく飛び回ると,オスは立ち上がって羽ばたく.

これら以外には,前日観察したホソミオツネントンボもまだまだ元気に活動していましたし,ホソミイトトンボの数が増えたような気もしました.池は昼ごろになると,いつの間にか,賑やかな春の池になっていました.

▲まだまだホソミオツネントンボの活動も続いている.
▲ホソミイトトンボは数ペアが産卵,単独オスも目立った.

さて,後半は,ホンサナエです.ホンサナエの繁殖活動は,昨年の観察から夕方ということでしたから,移動時間はたっぷりあります.ゆっくりと移動しました.現地に着くと,なんと,空が曇ってきました.やや厚手の薄雲?に太陽が覆われ,風も強くなり気温が下がってきました.ホンサナエは3頭のオスが暖かそうなコンクリートの上に止まっているだけでした.今年は数が少ないのかなと思いしばらくは見ていました.



▲時々薄日はさすものの曇ってしまった.影が淡いあるいはないのが分かるだろう.ホンサナエのオス.

川の上を飛ぶ個体もいません.去年はいっぱい飛んでいたのに.今年はホンサナエも個体数が少ない年なのか…,と,ちょっとがっかりしました.川岸に座っていると眠くなってきたので,空も曇っているし,仮眠をとりました.そして,2時過ぎにもう一度様子を見て,状態が変わらなければここまでにすることにしました.しかし状況は変わらず,相変わらずコンクリートの上にオスが止まっているだけです.ところが,すぐ横に,メスが突然飛来して,卵塊を作り始めました.14:08です.

▲卵塊をつくるホンサナエのメス.

俄然元気が出てきました.アドレナリンが出てきたのでしょうね.ただ,長靴を履かず,運動靴で座っていたために川に入れず,このメスはいい角度で撮ることができませんでした.さてこうなると,ウエーダーに履き替えて,完全装備で待つことにしたのは当然の流れです.曇っていて涼しい風が吹いているので,夕方の雰囲気になってメスがやって来たのかも知れません.待っていると,オスが突然飛び立ち,タンデムになってメスを山へお持ち帰りしました.産卵にやって来ているようです.こういう夕方にやってくるトンボは,曇りもまんざらではないようです.こうなると不思議なもので,どこからともなくオスが現れ,去年ほどではないものの,数頭のオスが川面を飛び始めました.



▲水面をパトロールするホンサナエのオス.腹部をやや持ち上げ頭を下げた姿勢で飛ぶ.

ところが,皮肉なことに,雲がだんだんと切れてきて,晴れ始めたのです.普通なら喜ぶところですが,ここでは逆.こうなると,もう夕方まで待つしかありません.陽が山の稜線に沈むまで観察を続けることにしました.オスたちは飛んだり,川の中にできた州に止まったりしています.



▲ひとしきり飛ぶと,時々止まって休憩する.ホンサナエのオス.

その後も時々メスが入ってきましたが,今日のオスたちは素晴らしく,次々とメスをゲットし連れ去っていきました.陽はどんどんと西に傾いていきます.いつの間にかオスの姿が消えていました.そして川面に涼しい風が吹き始めました.繁殖タイムの感じです.オスもいないし,ここでメスが入ればと空想していましたら,オスが1頭戻ってきました.いやはや去年もそうでしたが,こういうオスっているんですね.やがて,夕方が来て,山の稜線に陽が沈もうとする時刻がやって来ました.このオスはまだ粘っています.一方メスは全然やって来ません.昼下がりに数頭来たのが今日のピークだったんでしょうか? 

▲私と一緒に最後まで頑張ったオス.影が長くなって夕方であることが分かるであろう.

1頭だけ水面を高速で飛ぶメスが来ましたが,これは産卵しませんでした.そしてついに日没.先のオス君も姿が消えていました.彼も諦めたんだな,と思っていると,頭上をタンデムになって飛び去るホンサナエが….やられましたね,彼はきっちりとメスをゲットし,今日最後の収穫を得て,山へ帰っていきました.いや,あっぱれオス君.今日は君たちに負けました.今日はメスがのべ7回入ってきました.うち2回は通過のみ,4回はオスに連れ去られ,1回だけ卵塊づくりを観察,という結果になりました.まあ,写真記録は撮れませんでしたが,元気にホンサナエが活動していることは確認できましたので.これで良しとしました.18:30観察終了.

▲空高く飛び上がってメスをお持ち帰りするオス.今日はこればかり見せられた.