兵庫県の幼虫ガイド
H001. オツネントンボ Sympecma paedisca
オツネントンボ終齢幼虫
写真1.オツネントンボ終齢幼虫(しゅうれいようちゅう).尾さいをふくめた全長27mm前後.
<特ちょう>
 オツネントンボは腹部が細長く,あしが長い,アオイトトンボ型の幼虫です.体全体がやわらかく,表面はすべすべしています.写真4のように,下唇(かしん)は細長くなく,尾さいは先がまるくなっていて,あまりとがっていません.ふつうこい色をしています.

オツネントンボのあしゅうれいようちゅう オツネントンボのうか
写真2.終齢幼虫の一つ手前の幼虫(亜(あ)終齢幼虫). 写真3.オツネントンボの羽化とぬけがら.


<よく似た幼虫との区別>
 オツネントンボとよく似た幼虫に,アオイトトンボオオアオイトトンボコバネアオイトトンボホソミオツネントンボがいます.
 このうち,アオイトトンボオオアオイトトンボコバネアオイトトンボについては,体をうらがえして下唇の形を見てください.写真4上のアオイトトンボように,細長い下唇であれば,それはこの3種のどれかで,オツネントンボではありません.写真4下のように,オツネントンボはもっとはば広く短い下唇をしています.
 残りのホソミオツネントンボとは,大きさがちがいます.ホソミオツネントンボは終齢幼虫でも,全長が22mmくらいしかありませんが,オツネントンボの終齢幼虫は,27mmくらいあって,見てすぐ分かるほど,大きさがちがいます(写真5).また,尾さいも,オツネントンボはふつうこい色をしていますが,ホソミオツネントンボは,だいだい色ですきとおった感じです(写真5).

オツネントンボのそっきょくとはいきょく オツネントンボの触角と背中のはん点
写真4.アオイトトンボとオツネントンボの下唇の比かく.
アオイトトンボのものは細長いが,オツネントンボのははば広く短い.
写真5.ホソミオツネントンボとオツネントンボの大きさの比かくと
尾さいのちがい.


<さがす場所のヒント>
 オツネントンボは池の住人です.成虫のまま冬をこして,春一番に産卵に現れるトンボです.そのころはまだ,池に植物がしげっていないことが多いので,写真6のように,かれて水面にたおれた,植物の茎(くき)などに産卵します.ですから,水生植物の多い池に集まってきます.卵はすぐにかえり,幼虫はものすごく速く成長します.6月から7月にかけて羽化して成虫になります.成虫はそのまま夏・秋・冬をこします.ですから,幼虫の採れる期間は,5月から7月くらいの短い間です.終齢幼虫は,ふつう6月になってから採れます.

オツネントンボの産卵場所.
写真6.水面にうかぶ植物のかれた茎に産卵する,オツネントンボのオス・メスのペア.