兵庫県の幼虫ガイド
H030. カトリヤンマ Gynacantha japonica
カトリヤンマ終齢幼虫
写真1.カトリヤンマ終齢幼虫(しゅうれいようちゅう).全長35mm前後.2019.7.2.
<特ちょう>
 ヤンマ型をした幼虫で,小型で細い感じのする幼虫です.背中のまん中に黒いスジがあって,その両側に明るい色のはっきりとしたスジがあります.黒っぽい色をした幼虫ではこのスジがはっきりしないことがあります.カトリヤンマには背中のとげ(背棘:はいきょく)はありません.写真3のように,腹の横の部分にはとげ(側棘:そっきょく)があります.一番の特徴は,下唇側片(かしんそくへん;写真2)とよばれるところに,毛が生えていることです.

カトリヤンマのはいきょく カトリヤンマのそっきょく
写真2.カトリヤンマの下唇,下唇側片の上に毛が生えています. 写真3.カトリヤンマの横のとげ.第6〜9節にあります.


<特ちょう>
 マルタンヤンマの幼虫にも下唇側片に毛が生えていますが,カトリヤンマのほうが下唇側片の先のはばが広いです(写真2).マルタンヤンマではこの部分がもっとせまくなります.


<さがす場所のヒント>
 カトリヤンマは池の住人ですが,秋にほとんど水がなくなってしまうような池に住んでいます.池にはふつう一年中水がありますので,そういった池は身近なところにはほとんどありません.しかし,水田は春に水を入れ,秋に稲刈りをした後には水を入れませんから,カトリヤンマのすみかとしてはぴったりです.ですから,もっぱら水田で生活しています.ため池のようなところでも,ときどき水を完全になくしてしまうところがあります.そんなときには,池にカトリヤンマが訪れることがあります.そうなると,幼虫も池でとれることになります.
 カトリヤンマは10月ころに卵を産み,卵のままで冬を越し,春に幼虫になります.幼虫はものすごい速さで成長します.6月中ごろにはもう終齢幼虫になっていて,7月初めにどんどん羽化していきます.羽化を観察したいときは,7月のはじめくらいにとりに行くとよいでしょう.そのころに羽化が近い終齢幼虫が見つかります.とにかく,一年で,幼虫をとることができる期間が非常に短いヤンマです.

カトリヤンマの産卵場所.
写真4.カトリヤンマの産卵.カトリヤンマは,身近な場所では,稲刈り後の水田の土手でよく産卵します.