続 トンボ歳時記
No.657. 晩秋のトンボたち(5) 平地・丘陵地の池めぐり.2018.11.18.

今日も朝から雲一つない快晴.今日は行く予定はしていなかったのですが,この晴天がもったいない気がして,「日当たりのよい平地や丘陵地の池のトンボ観察」ということで,池巡りをしてきました.全部で7つの池をほぼ午前中に回ってきました.家を出たのは9:00過ぎで,最初の池に着いたのが9:30くらいです.気温は14度でしたが,日差しと弱い風のおかげで暖かく感じます.この池は,夏に,アオモンイトトンボのカニバリズムを観察した池です.池を一周しましたが,トンボの姿をまったく見かけませんでした.ということで気にせず次の池に行きました.この池はほぼ完全に水を落としていました.

▲本日2番目の池.過去にはよく来たが,今年は初めて来た.水がほぼ完全に落とされている.

最近秋にほぼ完全に水落をするため池が増えました.でもこれだけ水が落ちていてもオオキトンボなら来ていると予想して池に入ってみました.案の定オオキトンボがいました.ただ,秋の朝のトンボは敏感で,なかなか近寄れませんでした.それ以外には,マユタテアカネ,ナツアカネが,水のない池の中にいました.タンデムのペアが来て産卵したそうに飛び回っていましたが,結局出て行きました.アキアカネかタイリクアカネのような感じです.写真にはありませんが,この池の外でタイリクアカネを見ています.

▲水の落とされた池の縁に止まるオオキトンボのオス.

▲干からびた池の底に止まるマユタテアカネのオス.

▲池の護岸に止まるナツアカネのオス.

次の池は,この池のすぐ隣にある池です.先の池がほぼ完全に水が落とされているのに,この池は満水状態でした.

▲本日3番目の池.コンクリート護岸されている.満水状態.

上の写真の左側の堰堤の上を歩くと,オオキトンボ,ナツアカネ,タイリクアカネ,マユタテアカネなどが飛び立ちました.オオキトンボが飛んで池の方に入っていくと,それを追い回す別のオスのオオキトンボがいました.他にも池の上をオオキトンボが複数飛んでいました.この池はコンクリート護岸した何の変哲もない池なのですが,オオキトンボが活動しているんですね.これの一体どこが絶滅危惧I類なんでしょう? 唯一いえるのは,この池は丘陵の麓にあって,これより上に農地がないということです.つまり薬剤が流れ込まないわけです.

▲堰堤の草地で休むナツアカネのオス.

▲オオキトンボのオス.この池にはオオキトンボがそこそこの数集まっていた.

▲人が近づくとこのようにすぐに飛び上がる.

▲腹部の色が鯛分赤茶色になってきている.オオキトンボのオス.

▲タイリクアカネのオス.本当にタイリクアカネはどこにでもいるという感じ.

次は,水が落とされているもっと大きな池をのぞいてみました.しかしこの池,トンボの姿をまったく見かけませんでした.池によってトンボの濃さがまったく違いますね.ただこの池のそばには,オオキトンボのメスが止まっていました.腹部先端に泥がついており,打泥産卵していたんでしょうね.ここは,さっさと引き上げることにしました.

▲本日4番目の池.管理が行き届いたコンクリート護岸の大きなため池.

▲池の中にはトンボがいなかったが,近くにオオキトンボのメスが止まっていた.

次に目指したのは,例年オオキトンボを観察に行く池です.今年も10月8日にオオキトンボを見に行ってきました.そのときはオオキトンボが来ていました.最近この池は水を落とさなくなりましたので,今日はどうでしょう.池の周りを一周しましたが,オオキトンボを見ることはできませんでした.ただ,池の片隅に抽水植物が茂っているところがあって,そこにマイコアカネが生き残っていて活動をしていました.4頭のオスを見かけました.マイコアカネ君も頑張っているようです.

▲マイコアカネが活動していた,本日5番目の池の片隅にある茂み.

▲マイコアカネのオス.顔面が青みがうすくなってもう白くなってしまっている.

▲日差しを受けて止まっているマイコアカネのオス.

次の池は,上の池の近くにあって,オオキトンボしかいないことがよくある池です.ここもコンクリート護岸されていて水も落とされておらず,なんでこの池にオオキトンボが来るのかよく分かりません.今日はオオキトンボは池の外の道路上に止まっていました.これは写真にはならず,代わりといっては何ですが,タイリクアカネが交尾をしているのを記録に撮ることができました.また別のタイリクアカネのメスが,単独で数回打水するのを見かけました.本当にオオキトンボとタイリクアカネはセットになっています.上の池でも2014年の観察では,オオキトンボとタイリクアカネがたくさん集まって産卵していました.

▲タイリクアカネの交尾.この本日6番目の池ではほとんどトンボを見かけずだった.

時刻は12:00になりました.もう一つだけ池を回ってみることにしました.この11月2日に出かけていった池で,オオキトンボやタイリクアカネがたくさん活動していました.池に着くと,早速打水産卵するペアが目に入りました.タイリクアカネかとも思いましたが,打水後の上昇が小さく,例のアキアカネのチョンチョン産卵に似ています.写真を撮って確認してみましたら,どうやらアキアカネのようです.先日はアキアカネの姿が見られなかったのですが,やっとアキアカネが姿を現しました.アキアカネは,兵庫県南部では,本当に時期的に遅く出現するトンボになりました.

▲池に着いたとき打水産卵をしていたアキアカネのペア.

池の周囲を歩いてみますと,タイリクアカネ,オオキトンボが飛んでいました.ここは,以前来たときには,11:00ころが産卵のピークでしたので,もう繁殖活動は終わっているような感じでした.そんなとき目の前で,オオキトンボのオスがメスを捕まえました.池の上を飛びながら移精行動をしています.そして幸いなことに,すぐ近くの池岸に止まりました.そしてもう一度飛んで再び移精行動をしてから,交尾に移行しました.これもすぐ近くに止まってくれました.

▲メスを捕まえたオオキトンボのオスが移精行動に移行しようとしている.

▲移精行動を終えた止まったオオキトンボのタンデム.オスに比べてメスがでかい!.

▲オオキトンボの交尾.オス・メスの体色は赤茶色になって,渋い感じがする.

オオキトンボのペアが飛び去った後,池岸でまたアキアカネが産卵していました.動きの小さなチョンチョン産卵です.間違いなくアキアカネがやって来ていることが確認できました.この池には,キトンボも姿を見せていました.

▲アキアカネが水際で打泥産卵を行っている.

▲打泥後もあまり高く上がらないで飛ぶ.

▲アキアカネの打泥産卵.打泥の瞬間.

▲キトンボのオス.

今日は,晴天についついつられて,平地や丘陵に集うトンボたちを観察に行ってきました.全部で7種類のトンボたちに出会いました.その中でオオキトンボは7つ中5つの池で姿を見かけました.他のトンボに比べて最も多くなっています.オオキトンボは平地の池で普通に見かけるトンボになっていると言えるような感じです.

まだ11月の中旬,アカトンボたちは元気にしていました.しかし,夏のトンボの姿はすっかり消えてしまいました.今日これらに出会うことをちょっとだけ期待していたのですが,やはりもうほとんど出会うことはないんでしょうね.今日はここまで.