続 トンボ歳時記
No.634. マイコアカネとアオイトトンボ.2018.9.22.

今日は,少し前の週間予報では雨でしたが,一昨日あたりから晴れ間が出るとの予報に変わってきました.データ放送で見ると,マイコアカネの生息地あたりは,午前9時から晴れマークになっていました.あまりデータ放送は当たらないのですが,全体に回復基調の天気であることは間違いないので,9:30位に着く予定で出かけました.

▲到着したときにオスはもう水辺に出ていた.マイコアカネのオス.

夏に来たとき水がほとんどありませんでしたので,それを心配していました.現地に着いて,池が満水であったのを見て.ほっとしました.空は重たい曇り空でしたが,遠くの方には雲の切れ間に青空が見えています.気温が25度ほどあったことも幸いしたのか,マイコアカネは池に出ていました.9:50,雲がややうすくなり,そこから薄日が差しました.現金なものでとたんにマイコアカネが産卵に入りました.

▲薄日が差したと思ったらすぐに産卵ペアがどこからともなくやって来た.

▲打水した直後.水紋ができている.水紋の中心の白い物体(点)はおそらく卵である.

▲私が近寄るとスゲの間に入り込み産卵する.

▲スゲの間の水面に打水する.連結打水産卵である.

でもこれもほんのひとときのことでした.再び空広く鉛色の雲が垂れ込めました.しばらく待ってもトンボに動きがありませんので,池の周囲を少し歩いて移動することにしました.すると,この曇り空の下,アオイトトンボが産卵しているのを目にしました.さすが寒地系のトンボ,日が差していない曇り空なんて気にしないのですね.

▲曇り空のもとで,ヒメガマの葉に産卵をしていたアオイトトンボのペアたち.産卵痕が見える.

さらに移動すると,アオイトトンボがすぐ近くで産卵しているのを見つけました.まわりに良い産卵基質になる植物がないのか,次々のこの場所にアオイトトンボが集まってきました.そしてついに3ペアでの産卵ショウを見せてくれました.

▲連結植物内産卵するアオイトトンボのペアたち.

▲アオイトトンボのペア2つが所狭しと産卵する.

▲さらに3ペア目が産卵にやって来た.

▲アオイトトンボのペア3つが,同時に産卵している.

▲産卵して命をつなぐペアもあれば,こうやって自然の食物連鎖に取り込まれていくペアもいる.

移動した先には,ポツポツとマイコアカネのオスが止まっていました.空はまだまだ晴れ間が見えるような雰囲気ではありません.マイコアカネのオスと戯れながら,晴れ間が出るのを待ちました.兵庫県南部全般的に午後からは晴れるということですから,それを信じて12時まではここで粘ることに決めていました.

▲マイコアカネのオス.ここのマイコアカネは近づくのにかなり苦労する.2m位寄ると飛び立つのだ.

そうすると,何と言うことでしょう.12:00を過ぎるとあれほど厚かった雲が,天頂の方から割れ始めました.空気が暖かくなり,日が差し始めたのです.するとあっという間にマイコアカネが産卵に入りました.本当にアカトンボのなかまの産卵は日差しに影響されます.

▲産卵に入ってきたかと思ったが,まったく打水しないペアであった.メスの脚が伸びていることに注目!.

しばらく産卵に入ったペアを追いかけてみましたが,一向に打水しません.それよりオスの動きとメスの動きが逆なのです.オスは水面の方に降下しようとしますが,メスは上空へ逃げようとしているように見えます.どうやらこのペア,メスに産卵する気がないようです.オスも難儀なメスを捕まえたようですね.

▲メスの腹部が背側に反っていることに注目.連結して産卵するのを嫌がっているのだ.

▲こういう急降下姿勢は普通はあり得ない.オスとメスで「へ」の字になって降下するのだ.

▲打水直後のように見えるが,打水の水紋ができていない.打空しているだけなのだ.

▲ついにメスが草につかまって,オスに従うのを止めた.それでもオスはメスを放さなかった.

産卵を追いかけていると,交尾態のペアが入ってきました.交尾は飛びながら行われますが,ときどきは静止します.

▲産卵を観察していると,突然交尾態が飛び始める.メスは単独で入ってきたのを捕まえたのだろうか.

▲交尾状態になっているペアも,なかなか近寄ることができない.本当に神経質だ.

空も青空が広がり,産卵があちこちで見られるようになりました.マイコアカネのペアは割合に神経質でなかなか近寄れなかったのですが,目の前で産卵している2ペアのうち,今交尾を解いた方のペアは割合に近くで産卵をしてくれています.そこで,これを徹底的にマークすることにしました.

▲交尾を解いて産卵を始めたペア.実はこの隣にもう一つ産卵ペアがいたのだが,こちらに乗り換えた.

▲こちらに向かって打水したペア.

▲通常はこのようにオスとメスが協力して,「へ」の字になって下降しようとする.

▲打水した瞬間.

▲そして飛び上がって,....

▲再び打水する.

▲メスの脚はきれいに折りたたまれている.協力して産卵しているときはこうなるのだ.

▲打水した後,水紋ができている.

▲その後も産卵を続けるマイコアカネのペア.

最後まで追いかけた後,ペアは離れて,メスは上空へ飛び去っていきました.飛び去るメスを複数のオスが追いかけていきます.そして産卵はまだ続きます.目の前に交尾態のペアが止まりました.

これを撮影したのが失敗のもと,ISO感度を下げて,シャッター速度を落としたのですが,そのまま次の産卵を撮ってしまいました.おかげでプレプレ,写っていたのは3コマだけでした.このペアもよく見ていると,メスが産卵をしたがらないペアでした.

▲実はこのペアも,メスが産卵を嫌がっているのだ.メスの腹部が背側に反っている.

▲メスは脚を伸ばしもがいているように見える.このオスは産卵を終えたメスを捕まえたのかもしれない.

▲このペアも途中で止まってしまった.そして,この後オスがメスを放した.

ひとしきり産卵ショウが終わると,産卵を終えたメスが目の前に止まりました.また,暑い日差しのもと,オスが腹部挙上姿勢を取り始めました.やっと秋晴れの空になりました.でも,産卵は一時に集中してあっという間に終わりました.

▲産卵を終えてオスに放されたマイコアカネのメスが板の上に止まった.

▲腹部挙上姿勢を取り始めたマイコアカネのオス.

産卵場ではたくさんのギンヤンマが低い位置を旋回しながら飛んでいました.初めのうちはメスを探しているのだろうと思っていました.しかし,実はマイコアカネをねらっていたのです.一頭のオスをあっという間に捕まえたと思ったら,さーっと木の上の方の枝に止まり,もぐもぐタイム.

▲マイコアカネのオスをもぐもぐと食べているギンヤンマのオス.

マイコアカネの産卵場はギンヤンマの狩りの場になっていたのです.道理でマイコアカネの多くが神経質なのが分かりました.ギンヤンマを警戒して,少しの動きにも敏感に反応するように学習していたようです.このように考えると,止まっているオスに近づくが非常に難しかった理由も納得がいきます.でもギンヤンマさん,マイコアカネは数が減っているのであまり食べないでください.

マイコアカネの観察の合間にショウジョウトンボが産卵をしていましたので,ちょっと記録しておきました.

▲水面近くを飛んで,連続打水産卵をするショウジョウトンボのメス.

▲このメスも産卵途中でよく止まる.

さらに,アジアイトトンボやアオモンイトトンボもそこそこの数交尾していました.二化目なのでしょうね.

▲アジアイトトンボの交尾.ここでは,注意深く観察すると,産卵も見られそうである.

▲アオモンイトトンボの交尾.

曇りの空模様に悩まされましたが,最後の1時間で今日の目的を果たすことができました.この後ミルンヤンマを見に立ち寄りましたが成果はなく,今日はここまでとしました.