続 トンボ歳時記
No.609. 長期豪雨の後で.2018.7.10.

今はちょうどヒメサナエの観察に適した時期です.しかし降り続いた雨で川の上流域はまだ危険な感じがして,行くのをためらっています.川の水位は依然高く,上流近い中小河川は泥水が流れています.山はまだたっぷりと水を含んでいて,崩落の危険性は減っていないでしょう.ヒメサナエのいるような上流はきっと河床がとても荒れた状態になっていると思われます.この週末くらいになれば水量は落ち着き,崖崩れの心配も減ると思いますので,一度様子を見に行ってみることにしたいと思います.ヒメサナエ,オジロサナエ,ミヤマサナエ,オナガサナエと,川に入りたい時期なのに,これだけはどうしようもありません.

今日は,近所をぶらっと回って,長期豪雨によるトンボのダメージを「感じ」とることにしました.まず,オオシオカラトンボはたくさんいて,豪雨の影響を感じさせないようでした.

▲あちこち水が流れていて湿地状になっている道や流れに止まっていたオオシオカラトンボ.

エゾトンボが摂食飛翔をしていました.この場所で知人に出会い,「大阪の方ではエゾトンボが本当に見られなくなった」と言っていました.たしかに,エゾトンボも各地で減少傾向が感じられます.今年はちょっと注意してみてみたいと思いました.

▲エゾトンボのオスが摂食飛翔をしている.高度はやや高い.

ヒメアカネが,エゾトンボが摂食飛翔している湿地で,数頭羽化していました.豪雨の後で羽化した彼らは運がよかった.ひどい雨を水の中でやり過ごしたことで,安定した天気のもとで成長していくことができます.

▲羽化直後のヒメサナエのメス.

次に,平地の明るい池に行ってみました.コフキトンボが生き残っているかを調べに行ったのですが,姿は完全に消えていました.いたのは,チョウトンボ,ウチワヤンマ,ウスバキトンボでした.チョウトンボは結構たくさんいましたが,それでも豪雨前より減っている感じがしました.オオヤマトンボが飛んでいました.待っても帰ってこないと思っていると,メスを捕まえて木の高いところへ飛んでいきました.おめでとう.

▲チョウトンボ.各池でそれなりの数が飛んでいた.

▲ウチワヤンマのオス.

▲日を避けて太陽から見て裏側に止まるウスバキトンボのオス.

最後に見たのはクロイトトンボのメス.翅や体に豪雨を乗り越えた跡が感じられる個体でした.よくがんばったね.

▲豪雨を乗り切った感じのするクロイトトンボのメス.

なんせ1週間雨が降り続いたわけですから,雨は我慢できたとしても,餌が採れずに飢えていたと思われます.かなりのトンボにダメージがあったのではないかと推測しています.明るい池でもギンヤンマの姿をまったく見なかったですし,他にはコオニヤンマ1オス,シオカラトンボ数個体,ハグロトンボ3オス,ショウジョウトンボ2メスと,オオシオカラトンボとチョウトンボを除けば,トンボのほとんど飛ばない,本当に静かな森と池でした.