トンボ観察記
No.535. 真夏のトンボたち その八 コオニヤンマの観察.2016.8.9.

公開が後先になってしまいました.真夏のトンボたちその八です.コオニヤンマの産卵を観察しました.コオニヤンマは夏の川の代表選手で,大きくよく目立ち,また上流から下流までどこにでもいるトンボです.でも,体の大きさに比べて頭が小さく,また獰猛で,他の小さく可憐なトンボたちを容赦なくとらえて食べてしまうので,好感を持つにはちょっと抵抗感があるトンボでもあります.オナガサナエの観察に合わせて,観察しました.

0809-101▲朝早くより「出勤している」コオニヤンマのオス.

コオニヤンマも,オナガサナエに負けず朝早くから出勤しています.オスはサーッと川に入ってきて,適当な位置に止まり,なわばりを形成します.他のオスが入ってくると激しく追尾して追い払います.またちょっと驚かせると,さっと飛び立ち,ホバリング飛翔して様子を見ます.ヤマサナエなんかもこういう行動はよく見られます.

0809-102▲驚かせると,ぱっと飛び立ち,しばらく停止飛翔して様子をうかがう.

でも,今日は珍しく,2頭のオスのコオニヤンマが,仲良く? 隣り合わせで止まりました.あとから来た方が先住者に気が付かなかったのだろうと思いますが,先住者の方も止まるのは見えたはずですのに,追い払おうとしませんでした.とても珍しい縄張りオス同士のツーショットです.

0809-103▲珍しい,なわばりオスのツーショット.ある意味どちらも食われる危険が!.

さて,時刻は9時過ぎ.川岸に座ってトンボたちを待っていると,目の前に,本当に目の前にメスが産卵に入ってきました.

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0809-105▲目の前に産卵に入ってきたメス.腰かけたまま楽々の撮影.

産卵しているメスは結構警戒心が強くて,遠くで産卵しているときに近づこうとすると,ちょっと産卵を中止して様子を見ることがあったりします.でも,これは向こうから入ってきたメスです.メスは草陰などに隠れて産卵するのをよく見かけます.きっと,私を岩かなにかと勘違いして,私の陰に入って産卵しようとたくらんだに違いありません.

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0809-112▲細かく移動しては打水場所を探す産卵メス.腹部は胸部と同じくらい太く感じられる.

コオニヤンマの産卵は,しばらくの停止飛翔のあと,1回打水して放卵します.停止飛翔中に卵塊をつくっているようです.打水とはいうものの,コカナダモの密生しているところをねらって腹端を打ちつけています.

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0809-106▲打水の瞬間.チョンと腹端を当てるような感じで,ある種のトンボ科のように水をかくような動作ではない.

産卵は約2分間続き,飛び去って行きました.成熟メスの腹部は本当に太く,その産卵を目の前で見ていると迫力があります.本当に獰猛でなければ,好きになれるんですけど,….羽化して飛び立ったばかりの小さなオジロサナエやオナガサナエ,美しい翅をもつアオハダトンボ,そして同種のコオニヤンマにさえにぱくりと噛みつきムシャムシャやる姿は,いやはや,これが肉食者だというべきすごい捕食者というよりほかはありません.