新 トンボ歳時記
No.395. 秋を探しに... 2012.9.15.

今日も秋を探しに,特に目的地も定めず,出かけてきました.気持ちは秋のトンボモードに完全に切り替わっているのですが,いかんせん,天候がまだ夏! 今日も気温が30℃越えという予報でした.まずは神戸市内の,一昨年ナニワトンボがたくさんいた池に行ってみることにしました.

今年は雨が少なく,予想通り池の水位が低く,ナニワトンボ好みの環境になっていました.しかし,ナニワトンボの姿を全く見ませんでした.あれほど一昨年には数がいたのに,全く見られないというのはある意味トンボの環境変化に対する反応が徹底しているという感じがしました.昨年は雨が多く,ナニワトンボの時期に,池は常に満水状態で余水吐けから水があふれ出ていくような状況でした.ナニワトンボはそのときからほとんど姿を見ませんでした.多分この生息地を捨てて,好みの環境を求めて分散していったものと考えられます.

池では,日向に夏のトンボ,日陰に秋のトンボ,といってもマユタテアカネが数頭いただけですが,というふうに場所を分けて活動していました.ということで,次の池,ここは私がサイトBと呼んでいるところですが,そこへ移動することにしました.ここも多分水が落とされているだろうと予想して出かけましたが,ずばりその通りでした.この池は水が多いことが多く,なかなか全周囲を歩いて観察できるチャンスがありませんので,今年はラッキーです.

ナニワトンボがいました.池の日陰側にたくさん集まっていました.15頭以上はオスが止まっていたでしょうね.これだけいると,産卵にやってくる可能性は大です.ここでしばらく観察を続けることにしました.

例によって,ナニワトンボと一緒にリスアカネもいました.リスアカネは,私が到着した少し後から,産卵ペアが次々と入ってきました.久しぶりのアカトンボの産卵です.無造作に近づくと,一定の距離を保って離れていきます.久しぶりなので,アカトンボなんて簡単に近づけると思いこみがあったのですが,大間違いでした.

入ってきたときは連結産卵をしていますが,適当なときにオスはメスを放し,単独産卵に移行します.オスはすぐそばで警護しながら見守りますがやがて止まってしまいます.

単独産卵になると動きが少なくなり,一ヶ所で停止飛翔状態になって,産卵を続けることが多くなります.ただサナエトンボのように卵をぱらぱら落とすのではなく,アカトンボの仲間の打空産卵は,「打空」の名の通り,腹部を下方に振って卵を投げ飛ばします.

さて,リスアカネは次々と入ってきましたが,ナニワトンボは全く産卵にやってきませんでした.リスアカネは7月から産卵をしているトンボですので,暑さはきっと平気なんでしょうが,ナニワトンボはやはり暑すぎて,卵が十分成熟できていないのでしょうか? 秋の低温はアカトンボには必要な気がします.

この池でも,やはり日向ではタイワンウチワヤンマやギンヤンマのような夏のトンボが,そして日陰では,リスアカネやナニワトンボやアオイトトンボのような秋のトンボが,場所を異にして活動しているのが印象的でした.栗の実もまだ青く小さく,秋はやはりまだ足踏みしているようですね.12時前にはここを後にすることにしました.

ということで,アカトンボが期待できそうにないので,今度は一気に高原へルリボシヤンマでも見に行くことにしました.高原ならもう秋が来ているかもしれません.

いましたいました,ルリボシヤンマがもう飛んでいました.ルリボシヤンマというと,秋深いトンボのイメージがありますが,意外と早くから出ているのですね.2頭飛んでいて,時々追いかけ合いをしていました.まだ暑いせいか,ゆっくりホバリングせず,飛び回ってパトロールしていました.まだ本格的なルリボシヤンマのシーズンではないように感じました.

アカトンボの姿は,わずかにヒメアカネが1オスいただけで,他は全くなく,仕方ないので,林の中を歩いてみることにしました.ミルンヤンマを期待しましたが,まったくいる気配すらありません.登り切ったところに小さな水たまりがあり,タカネトンボが飛んでいました.全体が見渡せ,周回しながらホバリングしてパトロールしていましたので,写真に記録するチャンスだと思い,ここでしばらく観察を続けました.メスが一瞬産卵に入ってきましたが,私の動きが大きすぎたせいか,すぐに姿を消しました.またここにもルリボシヤンマが入ってきました.メスも産卵したそうに池の片隅でホバリングして,姿を消しました.

さて,ゲストのキリギリスたちは少数が産卵を始めていました.こちらももう少し季節が進まないとだめですね.ということで,今日の秋探しも,まだ中途半端な感じで終わってしまいました.気温がもう少し下がってからのようですね.あと1週間か...