今年の梅雨は,週末の晴れが多いです.週間予報では天気は芳しくないような感じなのですが,毎週,直前に予報が晴れに変わるというパターンですね.昨年一昨年と,梅雨時期は幼虫採りに徹していたような所がありました.今年は順調にこの時期のトンボを観察することができます.もっとも,観察に出かけたからといって,成果があるとは限りませんが...

第一の目標はキイロサナエの産卵観察です.午前中は少し雲が多く薄曇り状態でした.しかし午後からは青空が見え,天気は上々となりました.キイロサナエのオスはたくさん出てきており,オスどうしが追尾行動をあちこちで展開するほどでした.

小川に限らず,近くの溝川にもオスが入っていました.先週は溝川はヤマサナエが占有していました.1週間でヤマサナエの勢力が後退したような印象を受けました.今日確認したヤマサナエは2頭だけで,小川に出ているのは1頭でした.完全に流水域はキイロサナエの優勢状態になっていました.

さて,どこに産卵に来るか分からないので,それらしいところあちこちを歩き回ってみましたが,キイロサナエについては,メスの姿すら見ることがありませんでした.うむ,なかなか難しい相手のようです.以前キイロサナエの調査を3年間やったことがありましたが,そのときでも,メスが産卵に来たのを見たのは1,2度だけだったように覚えています.

さて,キイロサナエの産卵がだめなときのプランBとして,トンボ・シーズンの端境期(春季・夏季・秋季種が全部見られる可能性がある)ですので,それらのトンボをできるだけ記録するというのを用意しました.春のカワトンボ科の種(アサヒナカワトンボとニホンカワトンボ)だけは姿を消していましたが,他は結構色々なものが見つかりましたので,今日は観察順ではなく,分類順で紹介していくことにしましょう.

まずは,アオイトトンボ科です.アオイトトンボ属のトンボが数頭羽化をしていました.写真はキイトトンボと一緒に羽化をしているものを選びました.アオイトトンボ属のトンボは秋季種で,これから夏を越して秋が来るまで,林の中で過ごすのでしょうね.いやはや長生きするトンボです.こういった秋季種が羽化しているのと同じ場所で,早春に現れる成虫越冬種であるホソミオツネントンボが,産卵を行っていました.オスも単独で2頭飛んでいました.

次はモノサシトンボ科にいきましょう.この小川にはグンバイトンボはいませんので,モノサシトンボだけになります.これも,同じ池で,産卵を行っていました.もちろんオスも単独で飛んでいました.

続いてイトトンボ科です.この観察地はオオイトトンボが非常に多いところです.オオイトトンボは,おそらく一年二化していると思われますが,そうであるなら今の時期に出ているのは幼虫で越年した世代で,少し大型です.去年夏に来たときは,小型で,うじゃうじゃというほど数が非常に多かったのを覚えています.今日は数はそれほど多くはありませんでした.次の世代で数が増えるのでしょうか... 産卵,交尾など,繁殖活動を観察できました.産卵中にトノサマガエルに食べられるのも見てしまいました.

この池では,クロイトトンボ属はほとんどオオイトトンボです.クロイトトンボは数えるほどしかいません.それでも,1ペアは産卵をしていました.そして何頭かのオスは水面で活動していました.去年の夏には,小川でセスジイトトンボを見ましたので,ムスジイトトンボを除いて,この観察地には,クロイトトンボ属が3種見つかったことになります.

さて,この時期のイトトンボといえば,モートンイトトンボです.ここは湿地状になっている場所が結構あって,モートンイトトンボは過去にも記録があります.案の定,かんたんに見つけることができました.午後に産卵するので,晴れてきた午後,明るいところでの産卵を期待しましたが,残念ながら見つけることができませんでした.未熟な色から成熟色へ変化する途中のメス個体がいて,これはなかなか渋い色彩でした.

そして最後が,夏のイトトンボ,キイトトンボです.夏に出てくるトンボはどうしてこんなに色彩が鮮やかなんでしょうね.いつも書いていますが,熱帯海水魚の世界を彷彿とさせます.キイトトンボはすでにたくさん羽化していて,タンデムになっているものもいました.産卵だけはまだ見ませんでしたが,こちらがあまり注意をしなかったせいかもしれません.

今日はムカシヤンマは見ることがありませんでした.ということで,次はヤンマ科です.ヤンマ科といえば,まずギンヤンマが飛んでいました.意外と数が少なかったです.続いてクロスジギンヤンマ,これは池でパトロール飛翔をたっぷりと見せてくれました.オスは丹念に岸辺から水面に垂れている植物のあたりを,行きつ戻りつメスを探して飛んでいます.一方で先週のようにメスの産卵にはお目にかかることはありませんでした.

次はサナエトンボ科.冒頭のキイロサナエとヤマサナエ以外には,目立ったものはありませんでしたが,ウチワヤンマがもう活動を開始していました.また池に羽化殻も一つついていました.

ウチワヤンマは夏のサナエトンボですが,同時にコサナエがまだ生き残っていました.一度だけ池の畔に姿を現しました.しかしそれより衝撃的だったのは,ムシヒキアブに捕らえられたオスの個体でした.突然水面にぽたりと落ちてきました.アブに刺されると体が麻痺するのでしょうか,コサナエのこの個体は,水面で全く暴れません.わずかに腹部を曲げるような動きをしただけです.アブが体液を吸ったあとの遺体は,アメンボの大切な食料になりました.

エゾトンボ科は,オオヤマトンボが通りすがりに産卵をしたらしいのを見たことと,コヤマトンボが1回通り過ぎたくらいでした.ということで,最後はトンボ科です.まずは先週見たシオカラトンボ属三種そろい踏みを記録しようと考えましたが,今日はオオシオカラトンボが見つかりませんでした.ということで,早春のトンボ,シオヤトンボと,夏が盛りのトンボ,シオカラトンボを掲げておきます.

さて,シオカラトンボとくれば,夏の真っ赤なトンボ,ショウジョウトンボを忘れることはできません.ショウジョウトンボはもうたくさん池に出ていて,オスたちが活発ななわばり活動を展開していました.メスが何回か産卵に入ってきましたが,すぐにオスが集まってきてメスの取り合いです.メスも本当に大変です.何度も別の雄に交尾を強要されながらも,産卵を続けます.池からいったん出ていって,少ししてから戻って産卵を続けることもあります.オスも必死なのでしょう,一度は未熟なアキアカネをメスと間違えて体当たりし,アキアカネは水面に落ちました.少しして無事飛び去りましたけど.

この観察地のトンボ科の最優占種は,多分コフキトンボでしょう.コフキトンボは各地で減っていますが,ここはまだ健在です.今日のプランBの中には,コフキトンボの産卵が含まれていました.これはうまくいきました.短時間ですが,産卵したそうなメスを追いかけるオスがいて,少し待っていると,そのメスが産卵を始めたのです.

これはやっと写真になったという感じです.意外と,カメラを持っているときに出会わないんですね.さて,まだチョウトンボは出ていなくて,あと期待できるのはアカトンボのなかまです.ネキトンボは今日も産卵にやってきていました.ただ,クロスジギンヤンマにこの産卵中のペアが襲われ,食べられてしまいました.あとはアキアカネが羽化をしていました.

ということで,今日は,目撃しただけのものも含めると.20種あまり観察したことになります.春季種ではホソミオツネントンボ,コサナエ,ヤマサナエ,クロスジギンヤンマ,シオヤトンボ,夏季種のうち梅雨時期に活動中心があるものとしてはモートンイトトンボ,キイロサナエ,コヤマトンボ,盛夏に活動中心があるものとしてはキイトトンボ,オオイトトンボ,クロイトトンボ,モノサシトンボ,ギンヤンマ,コオニヤンマ,ウチワヤンマ,オオヤマトンボ,コフキトンボ,シオカラトンボ,ショウジョウトンボ,秋季種ではアオイトトンボ,アキアカネなど,それぞれに含まれるいくつかの種を観察することができ,まさに一年でもっともトンボの種類が多くみられる時期の面目躍如というところです.

最後に今日のゲストです.兵庫県の北と言えばコウノトリで有名ですが,今日,頭上をコウノトリが横切りました.でかっ.

ということでもう12:00を回っているので,寝ることにします.明日も午前中は晴だそうです.体はくたくたですが嬉しい悲鳴です.

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