トンボ歳時記
No.300. オナガサナエの観察. 2011.8.7.

今日は久しぶりに夏らしく,青空と高い気温に恵まれました.私は夏が大好きで,まぶしい太陽と青い空に,濃い緑の強いコントラストを見ると,もう俄然元気になります.ここ数日台風の影響で曇りがちだった欲求不満が一気に解消しました.ということで,かんかん照りの中へ,県西部まで,オナガサナエの観察に出かけました.

オナガサナエは,タイワンウチワヤンマに負けないくらい,暑さに強いサナエトンボです.私の今までの観察では,日中のもっとも暑いときに産卵によく来るのを見ています.今日も現地入りしたのは11:36でした.

川にはいると,浅瀬の部分にオスが1頭止まっていました.太陽は最も高くなるころで,止まるとすぐに腹部挙上を行います.不思議とオスはこれ1頭しか見あたりません.ここは幼虫がたくさん採れるところで,もっといるかなと思っていたので,ちょっと不安になりました.

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▲観察地の風景.
 2段目・3段目左:たった1頭だけいたオス.
 3段目右:失敗した真っ黒の写真.
 下は,3段目右の真っ黒だった写真を修整したもの.落下する卵塊が見える.

このオスの写真を撮っていると,目の前にメスが産卵に入りました.11:41です.ホバリングしながら,同じ場所で卵塊を落としています.トンボの方から私の目の前に産卵に入ったので,カメラを向けても,全然気にせず産卵を続けました.最後に打水して離れていくまで約1分間,十分撮影して,来た早々目的を果たしたと今日の「つき」を喜びました.ところが撮影画像を見るとみんな真っ暗.そう,ISO100のまま1/1600でシャッターを切っていたのです.このときの自己嫌悪感は,今思い出すと笑えますね.でも最近のデジカメはすごいものです.修整したらちゃんと見える写真になりました.これが上の一番下の写真です.

ファイル 301-2.jpg
▲12:34.4回目に入ったメス.
 上:卵塊が腹端を離れた瞬間が写っている.
 中:ほぼ同じ場所でホバリングしながら産卵を続けるメス.
 下:打水して(水面に波紋が見える),旋回し,飛び去る直前のメス.

さて,オスの数が少ないので,最初のメスを逃したことがどう響くか不安でいっぱいでしたが,それは全くの杞憂に終わりました.この日,13:28の最後の個体までに,なんと10回以上もメスが産卵に来ました.ただ,よく観察していると,同じメスが何度かに分けて来ていたようで,個体数はもっと少ないように思いました.

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▲13:10.8回目に入ったメス.上,下の写真では,落下する卵塊が見える.

2回目に入ったのは12:12.メスはあちこち飛び回って,間欠打水産卵を行いました.数コマ写真にはなりましたが,こちらの思惑とは全然違うのでがっかり.3回目は,まったく産卵に来たのに気づかず,足元のヨシの根際でこっそりと産卵していたようでした.産卵が終わり一気に飛び上がったのを見て,また後悔.このころ「今日は失敗か」といやな予感がしていました.

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▲13:13.9回目に入ったメス.
 やっと,水面ぎりぎりでホバリングし,移動しない産卵個体に出会えた.

その後,12:34,12:43,12:55と産卵に入ってきましたが,じっとせず移動しながらの産卵で,近づくとさっと逃げるといった感じの追いかけっこ状態が続きました.ますます最初の個体がシャッターチャンスであったことを,しみじみと感じていました.

13:03に,少し離れたところにメスが入り(7回目),すぐに姿を消しました.その後13:10に,そのメスが再び現れ,これが8回目です.この個体は,中肢をだらんとさせる癖があって,それと分かります.これはだいたい同じ場所で少し長い間産卵を続けましたので,遠巻きにしながら,なんとかものにできました.

ファイル 301-5.jpg
▲13:18.10回目に入ったメス.水際の草陰で産卵.
 下から2段目:途中でヨシの間に入って休憩するメス.
 一番下:その後再び産卵を始めたメス.カウントとしては11回目.13:20.

その後,13:13,13:18と続けて産卵に入り,これらの個体は,同じ場所でホバリングを続けるという,こちらの願い通りの産卵をしてくれ,やっと手応えのある写真が撮れました.こうなればと,ビデオカメラを持ちだし,ビデオ撮影に乗り出しましたが,次の13:28に入ったメスを最後に,ぴたっと産卵が終わってしまいました.まあ,欲を言ってはいけませんね.熱中症にならないうちに今日は引き揚げることにしました.14:30でした.

オナガサナエは,どちらかといえば普通種のサナエトンボですが,こんなに産卵に出会えることはめったにあるものではありません.今年のトンボとの出会い,まだ「つき」があるようです.