トンボ歳時記
No.176. ヒメサナエの観察. 2010.7.19.

昨日の観察で,まだ盛夏の川のトンボは少し早いような感じでしたので,今は盛りのヒメサナエの産卵を見に行くことにしました.

現地に入ったのは9:40ころ.曇りがちでまだヒメサナエのオスは出てきていませんでした.今日は腰を下ろしてゆっくり待つ作戦です.ぽつぽつオスの姿が見え始め,そして10:13にメスが産卵にやってきました.ゆっくり近づいてカメラを構え数回シャッターを切ったとき,メスが突然腹を上にして水面に落ちました.オスが体当たりしてメスを水面にたたき落としたのです.そして起きあがったメスの上に乗り,タンデムを形成しました.

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▲上:産卵に入ったメス.右は腹端に卵塊が見える.中:オスに捕まったメス.
 下:タンデムになって止まったところ.そして交尾(右).

メスは大変な目に遭うのですねぇ.上の写真では,オスに捕まったメスの翅に水滴が付いているのが見えます.タンデムを形成したらすぐに交尾になりました.足元が悪く,そっと近づくことができず,交尾は間近では観察できませんでした.

オスは普通は止まっていますが,稀に水面を往復するように敏捷に飛んでパトロールします.今まであまり観察したことがなかったのですが,今日はカメラに収めることができました.

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▲オスのパトロール飛翔.

その後,10:40,10:54,10:59と次々に「同じポイント」へ産卵にやってきました.産卵前のメスは産卵場所のすぐ上方の柏の葉に止まっています.また産卵が終わるとすぐ横の葉に止まります.

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▲次々に産卵に来たメスたち.いずれもほとんど同じポイント.
 上・下:ホバリングしながら卵塊を作っているところ.
 中左:産卵前のメスが葉上で様子をうかがっている?
 中右:産卵を終えたメスがすぐ近くの葉の上に止まって休憩している.

産卵は,ホバリングしながら卵塊を膨らませ,打水して水中に落とすというものです.上の一番下の写真では卵塊を膨らませているのが見えます.打水の瞬間はなかなかタイミングが合わず,写真に収めることはできませんでした.

その後は現地を離れる13:00過ぎまで産卵には訪れず,結果として産卵は10時台に集中していました.午後に産卵が多くなるという解説書もあり,もう少し待っても良かったのですが,集中力が切れてしまいました.

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▲みんなそろって腹部挙上姿勢.

帰りに流れを見ますと,オスたちがみんなでそろって腹部挙上姿勢をしています.腹部を太陽の方に向けて,影が一番小さくなる位置で静止しています.太陽の熱をできるだけ受けないためという説は本当のように思えます.

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▲今日の外道.上左からオナガサナエ,オジロサナエ,コオニヤンマ.

夏の暑いときは,日陰でじっと産卵を待つという観察が一番楽で成果があります.今日の外道はオナガサナエのメスが一番でした.まだまだ未熟で,やはり盛夏の川のトンボはもう一息という感じです.