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京都へ遠征,しかし成果はなし... /2009.5.9, a.m.-p.m.

今日は,最近決断が甘くなったのを跳ね返すように,朝から迷わず京都のムカシトンボの産地へ出かけてきました.天気は快晴,気温も20℃越え.現地に入ったのは9時ちょうど.

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▲ムカシトンボの産地.京都府.

しかし結果は惨憺たるものでした.ムカシトンボ成虫は全く姿を見せず,それ以外のトンボの成虫は,アサヒナカワトンボの処女飛行が1頭だけ.サナエトンボの類も皆無でした.

たくさんの羽虫,多分カゲロウ・カワゲラの類だと思うのですが,10時頃から少し開けた林縁を舞い上がるように多数飛んでいましたが,それを摂食する姿は全くなし.川の上をパトロールするオスがいないかと目を凝らしましたが,全く飛ばず.フキやウワバミソウなどの植物につく産卵痕を調べましたが,これも全くなし.本当にムカシトンボはいるのだろうか? と疑いたくなる状況です.かつてはたくさんの成虫が次から次へと飛んでいたところだったのに,昔日の面影はありませんでした.

そこで最後の手段で幼虫をすくってみました.

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▲ムカシトンボの亜終齢幼虫.これらは来年羽化する個体.

写真のように,幼虫は採れるには採れましたが,全部で5頭を確認しただけでした.ムカシトンボの幼虫というのはそれほど採集が難しいものではありません.その他には,ヒメクロサナエ,オニヤンマ,そして,まだアサヒナカワトンボが羽化前の幼虫の状態でした.

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▲左:アサヒナカワトンボの羽化直前の幼虫,右:ヒメクロサナエ若齢幼虫.

時期や時刻が悪かったのかとも考えましたが,最高の天気状態での午前中2時間半の探索で,摂食飛翔する姿を見ることもなく,成熟虫も見ず,産卵痕もなく,幼虫はかなりすくってもたったの5頭,これでは数が減っているとしか言いようがありません.午後になってから活動するのでは,とも思ったりしましたが,兵庫県の例から見て,午前中に姿を見せないという事態はあまり考えられませんし......(ウーム).


ムカシトンボの場所で粘ってもよかったのですが,今日は産卵の写真が撮れる気がしなかったので,場所を移動しました.洛北にある深泥池に立ち寄ってみました.

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▲深泥池.生物群集が国指定の天然記念物になっている.

池のトンボなら少しは見られるだろうと思いましたが,クロイトトンボ,アオモンイトトンボ,それ以外に種名は分かりませんが,1,2種はイトトンボ類がいた感じです.あとは,トラフトンボが飛んでいて,ショウジョウトンボが処女飛行に飛び立っただけでした.丹念に探せばまだ見つかると思いますが,ざっと見渡してもトンボの姿があまり見えないというのが,もはや普通の池とあまり大きく違わないレベルになっているような感じです.

上田・岩崎・山本(1981)によると,深泥池には62種のトンボの記録があり,その中から流水性のトンボや飛来種を除くと止水性トンボが51種含まれています.そのうちこの時期に見られてもよさそうなトンボ種には,ホソミイトトンボ,アジアイトトンボ,アオモンイトトンボ,クロイトトンボ,ホソミオツネントンボ,フタスジサナエ,オグマサナエ,クロスジギンヤンマ,ギンヤンマ,トラフトンボ,ハラビロトンボ,シオカラトンボ,シオヤトンボ,ヨツボシトンボなどがあります.

現地に立つと,植物などは新しい葉が出てきた状態で,確かに「春」なのですが,体感温度は「初夏」といった感じで,どうもちぐはぐな気分になります.気温の上昇がトンボ群集に影響しているのでしょうか......(ウーム).

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▲アオモンイトトンボ(左)とクロイトトンボ(右)

わざわざ京都まで出かけましたが,今日は,完全に空振りといった感じでした.写真で見ると分かるように景観的にはあまり環境が悪くなっているとは思えません.レーチェル・カーソンさんが,「沈黙の春」という言葉で,青々としたキャンパスの森に鳥が啼かなくなったことを表現しましたが,これらトンボ産地も「沈黙の春」状態になっているような気がした一日でした.

<参考文献>
上田哲行・岩崎正道・山本哲央,1981.深泥池のトンボ相の現状と特徴.深泥池の自然と人,深泥池学術調査報告書.京都市文化観光局発行.