兵庫県の幼虫ガイド
H010. ハグロトンボ Atrocalopteryx atrata
ハグロトンボ終齢幼虫
写真1.ハグロトンボ終齢幼虫(しゅうれいようちゅう).全長43mm前後.2011.5.5.
<特ちょう>
 ハグロトンボはカワトンボ型の幼虫です.体全体が固い感じです.尾さいは長く,腹部の長さの半分以上あります(写真3上).尾さいは固く,両側の尾さい側さい)はぶ厚く,中央の尾さい中央さい)はうすく板のようです.触角(しょっかく)は第1節がとても長くなっています(写真2上).


<よく似た幼虫との区別>
 ハグロトンボは,ミヤマカワトンボアオハダトンボと,とてもよく似ています.このうち,ミヤマカワトンボとは,体の大きさや,触角の第1節の長さで区別できます.写真3のように,ミヤマカワトンボ終齢幼虫は,尾さいをふくめた全長が60mmほどもありますが,ハグロトンボは43mmほどです.また写真2のように,ミヤマカワトンボの触角の第1節は,ハグロトンボより明らかに長いです.

ハグロトンボとミヤマカワトンボの触角 ハグロトンボとミヤマカワトンボの大きさのひかく
写真2.ハグロトンボとミヤマカワトンボ触角第1節の比かく.
ハグロトンボよりミヤマカワトンボの方が長くなっています.
写真3.ハグロトンボとミヤマカワトンボの全体の比かく.
ハグロトンボの方がミヤマカワトンボより小さい.


 アオハダトンボとの区別は,とても難しいです.ほとんど区別ができないといってもよいでしょう.ただ,終齢幼虫のメスについては,はっきりと区別する方法があります.アオハダトンボのメスの翅芽にたくさんのスジが走っていますが,その前のへりの先の方の部分が,少し曲がっているのです(写真2).ハグロトンボは曲がらず,まっすぐです.これは,アオハダトンボのメスの翅(はね)に擬縁紋(ぎえんもん)とよばれる白い点があり,その部分のスジが曲がっていることから来ています(写真5下).オスについては,翅芽の形が少しちがうことで区別します.翅芽の後ろのへりが,まっすぐになっているように見えるのがハグロトンボ,ゆるくカーブしているのがアオハダトンボです.これは,成虫の翅(はね)の形が少しちがうことから来ています.

ハグロトンボとハグロトンボのしが ハグロトンボとハグロトンボのはねのかたち
写真4.ハグロトンボとアオハダトンボのメスの翅芽の比かく.
アオハダトンボでは,前のへりの先のほうのスジが曲がっています.
アオハダトンボの翅芽の後ろのへりは,ゆるくカーブしています.
写真5.ハグロトンボとアオハダトンボの成虫の翅(はね)の比かく.
アオハダトンボの翅芽の後ろのへりは,ゆるくカーブしています.
 


<さがす場所のヒント>
 ハグロトンボは川の住人です.兵庫県では,平地をゆったりと流れる川に住んでいます.写真6のように,メスは水の流れに生えているモや,植物の葉などに産卵します.ですから,植物のたくさん生えた川を好みます.成虫は,ふつう6月から川に現れます.産みつけられた卵はすぐにかえって幼虫になります.ハグロトンボは,冬前に終齢幼虫になるものが少ないので,春早く終齢幼虫になっているものは,アオハダトンボの可能性が高いです.

ハグロトンボの産卵場所.
写真4.川の流れに沈んでいるモに産卵する,ハグロトンボのメス.