続 トンボ歳時記
No.644. オオキトンボ再挑戦.2018.10.13. Part-1.

今日は午前中晴天の予報で,これはテレビ各局の天気予報で一致していますので,アカネ属の観察にはもってこいの日となりそうです.今年まだ観察していないアカネ属はアキアカネとノシメトンボですが,これらは兵庫県の北部で観察しようと予定しています.兵庫県北部は今日は一日曇りの予報で一致していますので,南部で,すでに観察を終えたアカネ属の再挑戦ということになります.チャンスは徹底的にの信念のもと,先日出かけた池へ,オオキトンボとキトンボを観察に行くことにしました.今日は太陽光を生かして,できるだけ順光で記録することにしました.写真の枚数が膨大になりましたので,まずはオオキトンボから紹介していきます.

現地に入ったのは,9:20でした.池はまだ静かで,一見するとトンボはまだ飛んでいませんでした.空は青空,少し雲が出ていましたが,まずまずの天気です.10分ほどしたとき,オオキトンボが池面を飛び始めました.オスの停止飛翔です.

▲オオキトンボの活動の始まり,水面上をホバリングしてパトロールを始める.

9:35,早速オオキトンボの産卵ペアが入ってきました.先日は10:20ころでしたので,晴天のせいか,早い出勤という感じです.今日は太陽を背にする位置で撮ろうと,水に入ってトンボより太陽側へ行こうとするのですが,なかなか思うようにいかないものです.オオキトンボは岸から離れたところで産卵するので余計に難しいです.このメス,よく見ると腹部が曲がっているようです.多分羽化時に何か事故があったのでしょう.でも産卵は不自然なこともなく行われていました.

▲9:35,今日一番目のオオキトンボの産卵.メスの腹部が曲がっている.

▲岸から離れたところで産卵して,岸近くにはなかなかやってこない.

▲どういうわけか,逆光側へ行くのだ.

次に入ってきたのはキトンボの産卵ペアでした.これはPart-2.で紹介するとして,次のオオキトンボを待ちました.少し間が空いて,10:13,次のペアが産卵に入ってきました.今度は少しだけ岸近くで産卵してくれました.また,私が太陽を背にする位置に立っても,あまり位置を変えずに産卵を続けてくれました.でも,一定の距離を置くような動きは続け,近寄ることはなかなか難しい.この池のオオキトンボは非常に神経質な気がします.

▲10:13,今日二番目のオオキトンボのペア.

次のオオキトンボは,10:26に入りましたが,かなり岸から離れたところで産卵するばかりでした.このペアはギンヤンマに追われて,タンデムを分離し,途中でどこかへ行ってしまいました.そう,このギンヤンマ,オオキトンボの産卵場を狩猟場にしているギンヤンマなのです.

▲10:26,かなり岸から離れた場所で産卵するを続けるペアであった.

さて,この後怒濤のごとくと言ってよいほど,次々に産卵に入ってきました.まず10:29のペア.近づくことができず遠くから記録を撮るだけで終わりました.続いて10:31.もう複数のペアが産卵している状態になりました.こうなってくると,撮りやすいペアにカメラが向きますので,もう,どれがどれか分からなくなりました.

▲10:29,岸からかなり離れた位置で産卵を続けた.また私とも距離をとり続けた.

▲10:31,次のペアが入ってきたが,この時点で複数のペアが産卵している状態になった.

先の10:31のペアの後,11:00を過ぎるまで,途切れることなくオオキトンボが産卵に入ってきました.その間,撮った写真を確かめる間もなく,記録を撮り続けました.これほどたくさんのペアが産卵に来てくれると,トンボの観察も楽しくなります.トンボがいないと嘆いていたのが嘘のようです.

▲10:42.10:31のあと,少し間が空いたのは,キトンボを観察していたためである.

▲10:42.打水の瞬間をこの位置から見ると,相当の勢いで水を打っていることが感じ取れる.

▲10:45.間もなく打水に移行する直前の姿勢.

▲10:46.打水が終わった後の姿勢.オス・メスの角度が上と異なる.

▲10:46.打水の後かなり高く上がっていることが分かる.

▲10:46.水面に近づいて,打水に移行する直前.

▲10:49.複数のペアが産卵していることが分かる.

▲10:51.トンボより太陽側へ移動しようと岸を走ると,それを追い越すようにトンボも同じ方向に飛ぶ!.

▲10:55.もう,とにかく,近くにいたものを撮るという感じで撮影している.

▲11:00.今日は逆光にならないよう意識して撮影したので,明るい写真になっている.

▲11:00.引きずるように打水している.

写真に撮影時刻を添えておきましたが,間が空いているのは,2回ほどキトンボの観察をしていたためです.その間もオオキトンボは次々と飛来して産卵をしていました.結局11:30くらいまで産卵は続いたようです.11:00を過ぎると,キトンボの産卵の方が優勢になりました.オオキトンボは産卵を続けてはいますが,目立たなくなりました.そんななか,最後に,ギンヤンマがオオキトンボのペアを補食するのを見てしまいました.思わずシャッターを切ったのでピントが甘いのですが,大切な記録ですので,ここに収めておきたいと思います.

▲11:20,このペアがギンヤンマに襲われるのだ.オオキトンボのオスがペアを見ている.

▲この産卵ペアを襲撃するギンヤンマと,かわして逃げるオオキトンボのペア.

▲なおも執拗に追いかけるギンヤンマ.

▲ついにギンヤンマがペアの後ろのメスにつかみかかった.

▲もつれあう,ギンヤンマとオオキトンボのペア.

▲少しもつれながら飛び回った後,オスはメスを放して難を逃れた.

ギンヤンマは,このオオキトンボの産卵場を往ったり来たりしながら飛んでいます.見ていると,特にタンデムで産卵しているペアをよく追いかけています.カエルが跳ぶがごとく,打水するオオキトンボめがけて水面に飛び込んだこともありました.明らかに捕食しようとしているのです.タンデムで産卵するペアは動きが遅くなるので,狙いやすいのでしょう.オオキトンボのペアはうまくよけて産卵を続けていますが,時には捕まってしまうようです.絶滅危惧種が普通種のギンヤンマに食われるという構図は,人間にとってはなんとも皮肉な光景ですが,これも自然の食物連鎖なのですね.絶滅危惧種といってもかつてはたくさんいたわけですから,本来,他の捕食者の餌となっても立派に個体数を維持できていたわけです.そういう意味では,今後もこの池のオオキトンボの個体数が維持されていけるなら,絶滅危惧種を「維持」できる健全な生態系がここにあるということの証拠です.捕食者を人間の手で減らさねばならないようになれば,もはやその生息場所の生態系は壊れているという証拠でしょう.

帰る前,オオキトンボのオスが日向で休憩していましたので,一枚記録しておきました.

▲静止するオオキトンボのオス.


さて,この記事の最後に,その他のトンボたちを記録しておきます.キトンボとオオキトンボが優勢で他のトンボたちになかなか目がいきません.今日はコノシメトンボは少なく,オス数頭が水面に出てホバリングしていました.産卵は1ペアだけ目撃しました.タイリクアカネがやって来ていました.あと,アオイトトンボはたくさん活動していました.面白かったのはコフキトンボがまだ生き残っていたことです.小型の個体で,多分二化目でしょう.

▲コノシメトンボオスのパトロール飛翔.

▲タイリクアカネのオス.

▲アオイトトンボのオス.

▲アオイトトンボの交尾.

▲コフキトンボ.