続 トンボ歳時記
No.631. リスアカネとマユタテアカネと.2018.9.17.

「チャンスは徹底的に攻めろ」とはいつもの口癖です.今日は昨日の池にもう一度出かけることにしました.リスアカネやナニワトンボが飛ぶこの時期に,水が落とされ,なんとか日が差す時間があり,そして何よりそこにリスアカネとナニワトンボが数多く集結している.これをチャンスと言わずしてなんと言いましょう.今日は,メインターゲットをリスアカネにして,記録を撮ることにしました.なんせ,ナニワトンボとリスアカネはセットみたいなものですから.

リスアカネは,ナニワトンボより少し時間的に早く池にやって来ます.9:30くらいに池に入りました.今日は昨日より雲が厚く,まだ日が差していません.少しすると雲がうすくなり薄日が差してきました.とたんに,リスアカネが産卵に入りました.9:54です.

▲9:54,本日最初のリスアカネのペアが産卵に入ってきた.割合に神経質で近づくのが難しかった.

アカネ属は,日陰で産卵するものでも,日が差しているときの方がよく産卵にやって来ます.これなどはまさにそれです.撮影を終えて少ししたときに,マユタテアカネが交尾態になって飛んでいるのを目にしました.次はマユタテアカネを記録することにしました.

▲マユタテアカネの交尾.オスの赤とメスの黄色とヒメコウホネの葉の緑がいいコントラストをつくっている.

交尾を終えるとすぐに産卵を始めました.地層の間から湧き水が出ていて,水落をした池底に小さな流れをつくっています.その湿地状の流れのところで産卵を始めました.

▲10:08,マユタテアカネの産卵.湧き水でできた池底の流れで産卵している.

今日のマユタテアカネは割合に明るいところで産卵していたので,ピントは合わせやすかったです.今日も打泥するところを集中的にねらい,うまくメスの腹端が水中に突き刺さっているところを撮ることができました.とにかくマユタテアカネは打泥のストロークが高いので,どこに打ちつけるか勘でシャッター切るしかありません.下の写真がその瞬間です.

▲メスの腹部先端が水に突き刺さっている瞬間.マユタテアカネ.

さて,マユタテアカネの産卵が終えるやいなや,次のリスアカネの産卵ペアが入ってきました.最初のペアは割合に神経質で,近づくことが難しかったのですが,今度のペアは近づいてもあまり一気に逃げるというような行動は取りません.

▲10:12から10:14までの間産卵を続けていた,本日2組目のリスアカネのペア.

このペアは,産卵の最後の方で連結を解き,警護産卵に切り替えました.全くの偶然でしたが,オスがメスを放す直前の姿勢が写真に写っていました.オスが上方に向かって離れようとしているのでしょう.オスの体がメスに対して直角に上を向いています.

▲リスアカネのオスが連結を解こうとしている瞬間.オスは上の方に飛ぼうとしている.

その後,一定の距離を取って,オスはメスを見守っています.これもちょうどいい位置で飛んでくれたので,オスとメスの両方にピントが来ました.こういうことってなかなかないのですけどね.

▲連結産卵から警護産卵に移行した.メスの腹端から卵が落ちている.

▲ホバリングして警護しているリスアカネのオス.

▲その下方でメスは単独産卵を続ける.

その後,メスは単独産卵を続け,しばらく後に飛び去っていきました.そのときナニワトンボのオスがメスを捕まえて樹上に飛んで行くのを見ました.木の上で交尾しています.10:25,足下でナニワトンボが産卵しているのを見ました.これ,先ほど交尾していたペアかもしれません.短時間で産卵を終えてメスは飛び去っていきました.

▲10:25,ナニワトンボが足下で産卵をしているのを見つけた.

その後2ペアほどリスアカネの産卵が見られました.今日はハンディのビデオカメラを持って行っていたので,リスアカネの産卵を至近距離まで寄って撮影してみました.この産卵ペアは人なつっこいペアでしたが,やはりさすがのリスアカネもそこまでは寄せてくれませんでした.もう一組のペアは超神経質で,近づくことすらままなりませんでした.

空が曇ってきました.こうなるとアカネ属のトンボたちの動きは鈍くなります.今までかろうじて薄日が差していたのに,これでは待つしかありません.11:09,次の産卵ペアが入りました.最後は例によってオスがメスを放して単独産卵に移行.このオスは警護をしませんでした.そしてメスはすぐに産卵を終えて飛び去りました.

▲11:09,産卵に入ったリスアカネのカップル.本日5組目だったと思う.

記録も十分取れたし,時間的にもそろそろ引き上げることを考え始めたときでした.ナニワトンボが単独産卵をしているのを見つけました.普通はこういうメスをオスが見つけて交尾し,連結産卵をすることになるのですが,このメス,最後までオスに見つかることなく単独産卵を続けました.なんせ,地面すれすれで産卵しているので,なかなか目につきません.産卵を終えた後,しばらく静止して飛び去りました.疲れたのでしょうか….

▲11:16,足下で単独産卵するナニワトンボのメス.砂利の色に同化してなかなか見分けにくかった.

▲約3分間,あちこち移動しながら産卵を続けた.

▲産卵が終わって静止した.メス単独では疲れるのだろうか,連結産卵では静止はあまり見かけない.

ということで,今日は引き上げることにしました.最後に止まっているオスを撮影してからと思い,リスアカネとナニワトンボのオスに向かってシャッターを切りました.でも面白いことに,ことごとく,シャッターを切った瞬間に飛び立ち,その飛び立った瞬間,あるいは飛び立とうとした瞬間が写ってしまいました.不思議なこともあるものです.

▲いずれも飛び立とうとする瞬間のリスアカネのオス.

▲いずれも飛び立った瞬間のナニワトンボのオス.どちらも同じような姿勢をしているのが面白い.

さて,明日はどこへ行こうか….