続 トンボ歳時記
No.608. 今日はオオシオカラトンボとチョウトンボ.2018.7.1.

私(わたし)的には,いよいよ夏の始まりです.ニイニイゼミの鳴き声も聞きました.夏のトンボを見に行きます.夏のトンボは普通種が多いのですが,彼らも大切なトンボ仲間.きちんと記録していきます.今日はまずはコフキトンボをということで,それなりに数がいた池に出向きました.でも,いたのは3頭だけ.コフキトンボは6月の観察時より各池で数が減っている気がします.

▲コフキトンボのメス.メスがいても止まっているだけ.

▲コフキトンボのメス.上と同じ個体である.

そのほかには,ウチワヤンマとコシアキトンボがぽつりぽつり止まっているだけです.アカトンボの姿もほとんどなく,少し離れたところにマユタテアカネの未熟なメスが止まっていただけでした.

▲ウチワヤンマのオス(上)とコシアキトンボのオス(下).

▲マユタテアカネのメス.少し離れた木陰に止まっていた.

ただ一つとても数が多く元気だったのはチョウトンボです.あちこちで追いかけ合いをしています.水草の間や,時には空の上の方まで飛んでいきます.まだ未熟な個体もいました.どんどん出てきて池を賑わしています.チョウトンボがこれだけいるのに,なぜコフキトンボはいないのでしょう.本当に理解に苦しみます.

▲キショウブでしょうか,水草の間を飛び回るチョウトンボのオスたち.

▲チョウトンボの追いかけ合いは時には上空に舞い上がるまで行われる.

▲まだまだ羽化が続いているチョウトンボ.オス.

▲羽化して間がないメス.紫地に青緑色に輝く個体.

ということで,コフキトンボは諦め,ナニワトンボの未熟なオスを探しに行くことにしました.ところが,着いた池は水が完全に抜かれていました.改修するということです.いちおう探してはみましたが,何もいるはずがありません.そこで,次は,ハネビロエゾトンボの羽化,あるいは羽化殻を探してみることにしました.ここで偶然知人に出会い,いろいろと案内してもらいました.

▲ハネビロエゾトンボの羽化殻.

羽化殻はありましたが,羽化を見るならもう少し早いほうがいいらしいです.その代わり,未熟なハネビロエゾトンボが摂食飛翔をしているのを見ました.空をバックにすると写真が撮りやすくなるので,少し高いところを旋回飛翔してくれるハネビロエゾトンボの摂食飛翔は,いい撮影対象になります.

▲林縁で摂食飛翔をするハネビロエゾトンボのメス.

▲ハネビロエゾトンボのメス.まだテネラルな輝きが感じられる.

▲低く林のすぐそばを飛ぶハネビロエゾトンボのメス.

成熟したオスが流れを飛ぶのも見ました.まもなく本格的なハネビロエゾトンボの季節になりそうです.

そのあと,ウチワヤンマを見ることができました.池から離れた少し開けた明るい谷筋の木のてっぺんに,メスが何頭か止まっていました.いかにもウチワヤンマがねぐらにしそうな環境でした.

▲木のてっぺんに止まって,ときどき摂食しながら休むウチワヤンマのメス.

▲木のてっぺんに止まっていても敏感に人を感じて飛び立つ.ゆっくり近づいて撮る.

今日は下から見上げる写真ばかりになっています.ちょっと首が痛い感じです.そのあと,知人の方と情報交換をして,帰途につくため駐車場に止めた車でカメラなどの整理をしていますと,駐車場に漏れ出ている水のところに,オオシオカラトンボのメスが産卵に来ました.先ほどまでオスが往ったり来たりしていたのですが,その姿は見えません.オスって肝心なときに姿を消しているなどと思いながらも,メスの賢さに敬服してしまいました.で,早速写真撮影です.

▲下水の蓋が見える.駐車場に水が出てきていて湿地状になっている.

▲打水する場所を探しているのだろうか,オオシオカラトンボの産卵.

▲打水の瞬間で,水が前方に飛び始めているのが分かる.水が濁っているのは卵を含んでいるからだ.

▲球形の水滴が1つ写っているのが分かるだろうか.こんなところでも水を飛ばして産卵している.

▲あちこちへ移動しながら産卵を続けるオオシオカラトンボのメス.

▲打水直後の状態.前方に飛ぶ水滴が写っている(白矢印).

こんなところで産卵しても,水が切れて乾燥したらおしまいです.無駄な産卵になるのでしょう.などと考えていると,オスが帰ってきました.「オス君,さっきまでメスが来ていたのに,きちんと縄張りから離れずに待たないといけないよ」と心の声をかけてやりました.イレギュラーな産卵でしたが,記録としては面白いものが撮れました.

▲メスがいなくなってから縄張りに戻ってきたオオシオカラトンボのオス.

さて,12時も回ったので帰ろうかと思いましたけれど,朝見たチョウトンボのことを思い出し,帰り道にチョウトンボを見に行くことにしました.行った池は太陽光発電設備が建造され,池の環境は大分悪くなっていますが,チョウトンボはそんなことも気にせず,飛び回っていました.ちょうど昼過ぎの産卵の時刻だったのでしょうか,あちこちでメスが産卵していました.

▲メガソーラーが設置された観察池.播磨南部のため池にはあちこちに太陽光発電が設置されている.

▲チョウトンボの産卵.アオミドロがいっぱい浮かんでいるが,それが好きなようである.

▲別の所ではオス色のメスが産卵していた.珍しく後翅の先端まで色が着いている完全なオス型メスである.

池にはもうオスがひしめくように飛んでいます.チョウトンボのメスが産卵に来ると,もうそれは大変,メスは数回打水するごとに次々と別のオスに捕らえられ,交尾を強いられています.でも見ていると,メスはそんなこと気にせずに,産卵を続けているように見えます.あるメスは,次々に接近してくるオスを見事にかわしながら,産卵を続けていました.チョウトンボにとってこれはもう当たり前のことなんだと納得させられました.

▲左右の後翅に切れ目がある個体.下の交尾の写真のメスである.このメス何回も交尾されていた.

▲池の中央を交尾状態で飛び回るチョウトンボ.オスの前翅端に黒色部があって下のオスとは異なる.

▲交尾しながらの飛翔.交尾時間は1分程度.オスはすぐに放して,メスは産卵を再開する.

▲交尾状態で植物の先端に止まろうとする.

▲オスは脚をついて止まろうとしたが,...

▲風が強いのか,草が不安定なのか,すぐに飛び立ってしまった.

池にはショウジョウトンボもたくさん飛んでおり,周辺にはメスが止まっていました.暑いのでしょうね,腹部挙上姿勢をとっています.そう,コフキトンボもいました.2頭見かけました.いてもいいと思う池ですが,ここもやはり,コフキトンボの数は少ないです.

▲ショウジョウトンボのまだ若いメス.腹部挙上姿勢で暑さをしのいでいる.

▲コフキトンボは,腹部挙上せず,逆に腹部を下げて暑さをしのぐ.

コフキトンボはどこへ行ったのでしょう.などと考えながら,もっとも暑い2時ころ,帰途につきました.今日はコフキトンボに始まり,コフキトンボで締めくくりました.最後に久しぶりのゲスト紹介.ジャコウアゲハです.

▲ジャコウアゲハ.