続 トンボ歳時記
No.587. 川は次の季節に移り始めた.2018.5.20. Part-1.

天気予報は10時くらいから北部も晴れマーク.それを信じて兵庫県北部に向かって道を走らせていました.ところが,遠坂峠を越えるあたりから雨が降り出しました.今日はただでさえ気温が上がらない予報.これでは北部のトンボ観察は無理と判断して,和田山から転進,南の方に向かって走りました.天気はだんだんと晴れてきて,青空が見え,日が差し始めました.このときのうれしさはちょっと表現できません.晴れ間が出たら暖かくなるという自分の希望的観測による決断で北部を目指したわけですが,やはり,安定した天気の南部にはじめからすればよかったです.

▲今日の観察地の風景.本流は水量が多くは入れないので,側流で調査をした.

さて,まずのねらいはアオハダトンボ.果たして出ているか,そして繁殖活動は始まっているか,それを確かめに行くことを目的にしました.

▲アオハダトンボのオス.もう十分成熟していると思われる.翅を開いたり閉じたりしている.

▲アオハダトンボのメス.メスもたくさん流畔の植物に止まっていた.ただ産卵意欲が見られなかった.

アオハダトンボはもうたくさん飛んでおり,十分成熟しているように見えました.でも,もうお昼前なのに,産卵している個体はまったく見つかりません.オスがメスを刺激するように飛んでも,メスは離れたところへ飛んで逃げる始末.産卵する気がないようです.後もう少し時間が必要なのかな.まあ,今日はその確認が目的だから,などと考えながら川の中を移動していると,やっと,1ペアが,警護と産卵をしているのを見つけました.

▲唯一産卵しているのを見たペア.産卵メスとそれを警護するオスはお互い背を向けている.

▲葉の表面に産卵しているメス.

▲警護しているオス.

▲透明な水(ちょっと濁っているが)の緑の植物に産卵するアオハダトンボ.きれいなトンボである.

後にも先にも,このペアだけでした.アオハダトンボは不調でしたが,ほかにいろいろと面白いものが見られました.まずはグンバイトンボです.アオハダトンボの産卵を探して流れを歩いていると,処女飛行に飛び立つグンバイトンボを2頭見つけました.

▲処女飛行に飛び立って止まったグンバイトンボのオス.

細い流れをかき分けるように歩きますと,草の中からグンバイトンボが飛び出してきます.目立つ脚の白い「軍配」を際立たせるような飛び方をします.こちらのグンバイトンボはやや齢が進んでいるようでした.

▲草をかき分けて歩くと,こうやってグンバイトンボが飛び出す.

▲草に止まろうとする直前の飛翔.

▲止まった瞬間で,まだ翅が閉じていない.

▲やや齢が進んでいると思われるオス.

▲メスもいたが,案外見つけにくかった.

しかしグンバイトンボもタンデムを形成しているペアはまったく見られず,こちらも産卵にはやや早い感じでした.あと1週間はかかりそうな感じです.もう少し淡色部が薄緑色をしないとだめでしょうね.来週の週末くらいに来ると,アオハダトンボもグンバイトンボも繁殖活動が見られるかもしれません.

さて,ここは川ですが,流れの緩いところにクロイトトンボがやって来ています.こちらは交尾に産卵と,繁殖活動が行われていました.

▲クロイトトンボの交尾.猫の額ほどのワンド状の流れが緩やかな淵にクロイトトンボがやって来ていた.

▲クロイトトンボの産卵.水色のメスとタンデムを形成して産卵している.

メスの体色が緑のものと水色のものが記録できました.なんてクロイトトンボと遊んでいますと,大きなトンボが羽化しているのを見つけました.一瞬コシボソヤンマ?と思いましたが,よく見るとコヤマトンボです.行ったり来たりしたついでに観察しますと,だんだんと羽化が進んでいるのが分かります.

▲コヤマトンボの羽化.一番上の写真の状態を見たとき,一瞬コシボソヤンマかと思った.

最近の他のブログのトンボ写真を見ていると,広角レンズで景色を入れて撮るのがはやっているようです.そこで私も一枚撮ってみました,よく晴れていて絞り込めていますから,周辺の景色も結構鮮明に写っています.

▲羽化するコヤマトンボを,広角にして撮影した.

さて,アオハダトンボが産卵し,グンバイトンボやコヤマトンボが羽化し,ここの川は明らかに次の季節に移行し始めています.先日出かけた川ではニホンカワトンボがたくさんいました.この川は,アオハダトンボがたくさんいるのにニホンカワトンボの姿が見えないのが不思議ですが,いたとしたら,アオハダトンボという出現季節2番手のカワトンボに移行している状況が見て取れたでしょうね.ちょっと別の川で撮った写真を挿入しておきます.

▲ニホンカワトンボのペア.この後で行ったミヤマカワトンボの川で撮影したもの.

さて,サナエトンボのなかまにも,次への移行が見え始めています.この川にはタベサナエが春早くから出現していました.まだ生き残っていますけど,オスはかなり老熟が進み,メスは残り少ない産卵に向かって体力をつけているような状況でした.

▲老熟が進んだタベサナエのオス.

▲まだ若さが残っているタベサナエのメス.

次はホンサナエ.これも老熟が進み始めています.ここの川はどちらかといえばレキ底で,ホンサナエの好む底質ではないと思うのですが,以前にもここでホンサナエを見ています.今日はのべ3頭(実質は2頭かもしれない)の個体を見かけました.

▲ホンサナエのオス.ごらんのようにレキ底の川にホンサナエがいる.

▲ホンサナエの季節ももうすぐ終わりだ.最後の伴侶を待っているのだろうか.

ホンサナエに混じって飛んでいたのが,アオサナエです.こちらも結構早い時期に出ては来ますが,やはりホンサナエよりは少し後で,シーズンも長いです.

▲アオサナエのオス.まだ若々しい.

最後はヤマサナエ.ここのヤマサナエの出現は結構早いです.というか,ヤマサナエに限らず,あらゆるトンボの出現が早い感じです.オジロサナエの処女飛行と思われるトンボを見かけました.

▲ヤマサナエのオス.ここのヤマサナエは十分成熟した若いオスたちである.

▲驚かせると,こちらを見ながらホバリングする.

▲上のホンサナエが止まっていた石を横取りしたヤマサナエのオス.こうやって力関係が変わっていく.

ということで,下調べ的調査は大成功の感じでした.後日,よく晴れた日,水量も減ったころを見計らって,ゆっくりと観察に来ることにしましょう.この後は,ダビドサナエの時に観察できなかったミヤマカワトンボの産卵を見に行くことにしました.この晴れの天気なら,ひょっとしたら,というところですね.(Patr-2.へ続く)