続 トンボ歳時記
No.576. ヨツボシトンボの観察.2018.5.1. A.M.

今日はトラフトンボのリベンジで,昨日と同じ池に出かけました.現地に着いたのが10:00ころでちょっと遅かったせいか,トラフトンボはオスが1,2頭水面を飛ぶだけでした.でも,代わりにと言ってはなんですが,ヨツボシトンボが結構たくさん集まっていて,しきりに追い掛け合いをしていました.その日行った場所でたくさんいたトンボを観察するという鉄則で,今日はヨツボシトンボの観察を行いました.

▲岸辺で止まるヨツボシトンボのオス.今日の主役である.

ヨツボシトンボは非常にすばしこく飛びます.ホバリングをするのですが,その姿をファインダーで捉えてピントを合わせたあたりで,必ずと言っていいほど移動しフレームアウトし,シャッターが間に合いません.何度やってもそのタイミングになり,いつもながら難しいトンボだと思います.とにかく連写で,連続シャッターを切りながらピントを合わせるという技で攻めてみました.オスは500枚以上撮りましたが,使えそうなのは1,2枚だけという有様でした.

▲飛翔するオスたち.ものすごいスピードで飛び回るので,写真に撮るときの集中力は大変なもの.

と,そのうち,メスが入ってきて,池岸から5mくらいのところで産卵を始めました.メスは産卵のため水面近くを飛ぶので,オートフォーカスの方が成功率が高くなります.こちらもやたらにシャッターを切り続けました.

▲産卵にやってきたメス.カンガレイの芽生えの中で産卵を開始した.

しかしオスがたくさんいる中に入ってきたメスを,オスが見逃すはずはありません.あっという間に捕まって交尾態になりました.トラフトンボは交尾の時だけは少し長い間ホバリングします.ファインダーで捉え,ピントを合わせ,シャッター1,2回切るくらいの余裕があります.池の岸のすぐ横で交尾態で停止飛翔しました.ただし,ヨツボシトンボの交尾時間はほんの数秒程度,あっという間に連結を解いて産卵に戻ります.

▲複数のオスが産卵しているメスを追いかける.下の2頭がオスである.

▲オスに?まったメスはすぐに交尾を強要されるが,数秒で解放される.岸近くでの交尾.

産卵を再開しましたが,オスはまたこれを見つけ,追いかけ回し,また再交尾.今度は目の前でホバリングして交尾を続けてくれました.チャンスは数秒.完全とはいきませんでしたが,奇跡的にピントの来た交尾態の写真を大きく撮ることができました.

▲目の前で交尾状態になり停止飛翔した.一瞬の出来事で,よく写真が撮れたものだと自分でも思う.

その後もメスは産卵を続けます.ヨツボシトンボは打水産卵をしますが,写真を見ると,水滴を前方に飛ばしています.オオシオカラトンボほど派手ではありませんが.それでもきっと卵を飛ばしているのでしょう.でも,前方に植物のようなものがあるわけでもなく,卵は水の中に落ちるようです.

▲ヨツボシトンボの産卵手順1:まず腹端を水面に近づける.

▲手順2:続いて水面を掻き上げ,水滴を前方に飛ばす.この水滴中には多分卵が含まれているのだろう.

▲手順3:飛んだ水滴が前方に飛び散っているのが,水面の水紋で分かる.卵は水面に落ちていることになる.

▲伸びる水.ちょうど生殖口あたりから水が伸びているのが分かる.多分卵を含んでいる.

▲前方に飛ぶ水滴.腹部先端が水面から離れた瞬間で,上の写真よりほんのちょっと後の状態である.

▲腹部第8節にある膨らみの部分(白矢印).これで水を掻いて前方に水滴を飛ばしている.

ヨツボシトンボのメスの腹部第8節には,オオシオカラトンボなどと同じように,少し横に出た膨らみがありこれで水を掻いているのでしょう.オオシオカラトンボなどは前方の植物や地面に向かって水を飛ばしているので,多分卵をそれに貼り付けているのだと思います(また確かめてみます).しかしヨツボシトンボが卵を飛ばす目的は何なのか,よく分かりません.強引に推測するなら,打水したところに卵が落ちると卵を食べる魚などに見つかりやすいので,それを攪乱するといった意味があるのかもしれませんね.