新 トンボ歳時記
No.432. オナガサナエの観察とハグロトンボ.2013.8.10.

やっとお盆休みが来ました.今年は仕事も私事も忙しく,トンボ観察に出るのは3週間ぶりです.もうすっかり夏になっていて,黄昏ヤンマももうどちらかと言えば終わりかける時期になってしまいました.今年は川を中心に出かけていますので,今日はオナガサナエのようすを見に行ってきました.

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例年の観察地は,今年はツルヨシが繁茂し,以前たくさん産卵に来たポイントは川幅が狭くなっていました.川に入って移動するとオスが1頭止まっていました.オスのいるところにメスが来ると信じて,上の写真のところをポイントと見定め,待つことにしました.

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オスがいるとメスを持って行かれるので,水をかけて退場してもらいました.いつもそうなのですが,オナガサナエのオスと人間のオス(私)とで,メスの取り合いをしています.今日は家を早く出たので,現地に着いたのは8時過ぎです.最初のメスは9時16分に入ってきました.水面を低く飛び回った後,石に止まりました.

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これから産卵するかと思いましたが,これはすぐに飛び去ってしまいました.次に入ってきたメスはシオカラトンボに背中からつかみかかられ,驚いて飛び去ってしまいました.シオカラトンボは自分のメスとオナガサナエのメスの区別がつかないようで,オナガサナエが産卵に入ってくると捕まえようとします.その後またメスが入ってきてちょっとだけ産卵しました.

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そして9時56分,やっと落ち着いて産卵するメスが入ってきました.ゆっくりと落ち着いて撮影ができましたが,ISO200でシャッター速度が速く,全体的に暗い写真になってしまいました.何か欲求不満が残った遭遇でした.

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これはまさに上の観察地写真のところで産卵をしていました.私もだいぶんオナガサナエの好みが理解できてきたように思います.このメスが産卵を終えた後,岸辺のツルヨシの陰からオナガサナエのメスが飛び立ちました.こっそりと産卵に来ていたようです.完全に見落としていたと思った瞬間,シオカラトンボがこのメスをつかまえました.

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ご覧のように,シオカラトンボはオナガサナエのメスを本当につかまえてタンデムになろうとするのです.もっともこの時はタンデムにはならず,メスは離れて飛び去ってしまいました.その後もメスは思わせぶりに入ってきますが,すぐに飛び去ってしまいます.さて,次の産卵メスは10時41分に入ってきました.

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このメスも結構ゆっくりと産卵してくれましたが,私の動きが気になるのか,横を向くことがなく,常に頭をこちらに向けて産卵を続けました.これも上の写真のポイントです.オナガサナエは底のレキが見える浅いところが好きなようで,また少し大きな石がいくつか並んで流れの上に顔を出し,簡単な堰のようになっている場所でよく卵を落とします.などと考えていると,またすぐにメスが入ってきました.10時48分です.

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これは少し違ったツルヨシの生えた岸近くで産卵を行いました.こいつはずっと横を向いた状態で産卵を続けてくれました.この後も産卵に入りましたが,数回打水して飛び去ったり,シオカラトンボに追われたりと,落ち着きがなく,11時14分を最後に,記録はこの7頭しかとることができませんでした.

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初めのうちは産卵に入ったメスの数を数えていましたが,そのうち分からなくなってしまいました.最終的に13頭までは数えたと思います.3時間半でメス13頭ですから,今年は数が多いようですね.記録を取るチャンスの年のような気がします.

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先にも書きましたが,この場所にはシオカラトンボが多いのです.これ,本当に邪魔ですね.コオニヤンマもいました.そうそう,コオニヤンマも11時10分に産卵に入りました.これも来るならここだろうと思っていたポイントに入りました.でも,なんとそこにはカエルがいて,低くホバリングを始めたとたん,カエルが飛びつき,コオニヤンマは慌てて飛び去りました.生き物が多いのはまことににぎやかで楽しいのですが,写真記録を撮るにはムムムという感じです.

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さて,ツルヨシが大量に繁茂しているせいかどうか,...,例年に比べてハグロトンボが多いように感じました.あちこちでオスが追いかけ合いをしています.着いたときから帰るまで休む間もなくやっています.まあ暑い中,オスは本当に元気です.それに比べてメスはまだ産卵している数が少ないようです.時間的なものかもしれません.今年のこの川にはコカナダモが大量に繁茂しており,そこで少数のメスが産卵をしているだけでした.

ハグロトンボは,アオハダトンボのようなディスプレイもなく,あっという間に交尾に至ってしまいます.そして面白いのは,腹部先端を反らせて誇示するのは,アオハダトンボではメスに対してですが,ハグロトンボでは,写真でも分かるように,オスどうしのなわばり争いの場面でオスに対して誇示しているように見えます.腹部先端を反らせる行動は,アオハダトンボのようにメスに対して行うのが起源が古いのか,それとも,オスどうしのなわばり争いの場面で使われていたものがメスの気を惹くディスプレイへと進化したのか,興味がわきますね.

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ということで,今日は11時30分ころに現地を離れました.気温は相当高く,用意した飲み物も底をつき,熱中症に倒れる前に退散です.それにしても気温が異常に高いです.それでもオナガサナエやハグロトンボはこの暑さなど意に介さないように,元気で過ごしていました.帰りにヤブヤンマを見に寄りましたが,1,2頭飛ぶのを見ただけで,産卵には出会えませんでした.そうそう,今日の観察地は川でしたが,その流れの上に,ウスバキトンボの大量の群れが飛んでいました.小昆虫が飛ぶのでしょうかねぇ.

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