新 トンボ歳時記
No.422. またまた「やっと出会えた」クロサナエ. 2013.6.9.

今日は朝から曇りがちであったのですが,昨日の好天の一日を仕事でつぶしてしまったので,とにかく出かけることにしました.先日見たヒメクロサナエの場所へ,今度は産卵を観察に行こうとずっと考えていたからです.私事になりますが,今年の6月は,仕事と私事で,今日とあとは月末くらいしか週末に出かけることができません.なんか悔しい感じです.

さて8:30ころ現地について早速流れを探しましたが,アサヒナカワトンボ以外姿を見ませんでした.そこで,湿地の方に,ヒラサナエを見に出かけました.湿地には名前は分かりませんが,白い花が満開状態でした.

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ヒラサナエはかなり老熟してきていました.と,そんな中に,胸側に2本の黒条がある小さなサナエトンボを見つけました.前回,ヒラサナエでこういった個体を見たので,またそれかと思って近づいたときでした.なんと,クロサナエのオスでした.

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クロサナエは,この5年間,ずっと見たいと思っていたサナエトンボです.毎年かなり意識して探していたのですが,5年がかりでやっと間近に出会えたのでした.それも非常に温和しい個体です.クロサナエはストロボなどを焚くとすぐに樹上に逃げてしまうことが多いと聞きますが,これは接近していくら撮影しても逃げません.

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尾部付属器(上の写真の下側),胸側の黒条が気門をおおっていること(上の写真の上側),など,ダビドサナエではなく間違いなくクロサナエです.十分に撮影してから,何とかこの個体を採集しようと考えましたが,網がありません.一か八か手づかみに挑戦.見事ゲットしました.お恥ずかしい話ですが,トンボ観察歴25年以上,初めて採ったクロサナエでした.以前県外へよく出ていたころには,時々その姿を見ていたのですが,県外へ行くときはたいがい別のトンボが目当てで,その当時はこれほど出会いにくいトンボだとはつゆ知らず後回しにしてきた結果,このようなことになってしまったのでした.いずれにしても,またまた一つの課題を解決したことには違いありません.ヒメクロサナエといい,クロサナエといい,樹上生活を普通にやっているトンボは,本当に姿を見ることが難しいですね.

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さて,そのあと,湿地を隅々まで探索してみますと,山側の,湿地が乾燥しているところで,サラサヤンマがパトロールしているのに出会いました.去年のサラサヤンマの観察地は,今年はこの少雨で完全に湿地が乾燥し,おそらく数が少なくなっているものと思います.実は前回に足を運んだのですが,全く姿がありませんでした.今年は全然違う場所で出会うことができました.時々止まって,なわばりを見渡すところなど,場所は違っても行動は同じでした.

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さて,そろそろヒメクロサナエが産卵に来る時刻です.流れの方に移動し,ここぞと思う場所に陣取って,ひたすら樹上から降りてくるのを待つ作戦に徹することにしました.アサヒナカワトンボが大きなガガンボを捕まえて美味しそうに食べていました.

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そんな時,メスが降りてきました.でも,なかなか落ち着きがありません.そしてカメラを構える間もなく,飛び去ってしまいます.メスは全部で4頭降りて来ました.これは私としては驚異的に多い数字だと思っています.ポイント選びが功を奏した感じです.一度は確実に産卵行動を行いました.でも,一歩動くと,さっと逃げてしまいます.なかなか敏感なトンボです.で,結局シャッターを一枚も切ることなく終わってしまいました.ヒメクロサナエの産卵行動を見たのは,1990年代の神戸以来ですので,ずいぶん久しぶりということになります.浅い流れの小石の上に止まって,静止接水産卵を行っていました.

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12:30ころまで待っていました.空模様が怪しくなってきたのと風が出てきてひんやりしてきたので,今日はここで打ち切ることにしました.「宿題は残しておいた方が今後楽しみです」,と負け惜しみを言っておきます.湿地には,数が減ってきたウスバシロチョウや名も知らぬカメムシの一斉交尾などが見られました.

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帰り際,珍しく,道路に止まるヒラサナエのメスを見ました.