新 トンボ歳時記
No.372. 思い立って徳島県へ... 2012.7.8.

今年の梅雨は週末がよく晴れる,とは何度も書いていますが,本当にパーフェクトではないでしょうか.梅雨の時期は面白いトンボが何種類か出てくるのですが,週末に雨が降り,観察にチャレンジすることすらできないことが多いのです.今日もまたまた晴れ.ただ今日は,兵庫県北部は午前中雨,近畿南部は一日中晴れとの予報.そこで,時間的に北へ行くのと同じ程度の南へ行こうということになって,徳島県へ,この時期にしか見られないいくつかのトンボを見に行くことにしました.

この時期のトンボというと,言うまでもなくミナミヤンマです.ミナミヤンマの成虫は過去に一度だけ採集に行ったことがあるだけで,生態写真はまだ撮ったことがありません.飛んでばかりいて止まるときは高いところという,やっかいな相手です.まあ,ダメモトで行きました.ところが,現地について間もなく,1頭のメスが流れの上を飛ぶのに遭遇しました.絵に描いたようについていますね.後を追いかけながらついていきますと,案の定少し下流の方で産卵を始めていました.

産卵はハネビロエゾトンボとよく似た感じでした.浅い流れの上を低く飛んで,時々打水します.ただ,打水の回数はハネビロエゾトンボの方が圧倒的に多いです.打水の瞬間はピントが甘くうまく撮影できていませんでした.オスは,数回高いところを飛んだのと,目の前を1度飛んだだけでした.もっと往復しながら流れの上を飛ぶと思っていましたが,一過性の飛び方をしていました.このメスが産卵に来たのが10:00頃で,それ以後は全くメスの姿を見ることがありませんでした.まさにワンチャンスでしたが,来る早々目的を果たしたので,気持ちには余裕ができました.

ところで,2頭目のミナミヤンマメスを待つ間,周りにシコクトゲオトンボが飛んでいるのに気がつきました.オスばかりで,ほんのわずか水がしみ出している小さな壁面にも張りついていました.また少し上の方では,日の当たるところに水のしみ出し口があって,珍しく,日向にシコクトゲオトンボが止まっていました.

11:30ころまでミナミヤンマを待ちましたが,真昼になると飛ばなくなった経験があるので,これで切り上げることにし,シコクトゲオトンボの繁殖活動を観察することにしました.ところが,この場所はオスばかりで,メスの姿がありません.そこで場所を変えてみました.すると,そこにはメスがたくさんいました.

メスはどうやら産卵していたらしく,人の気配を感じると流れから飛び立って,近くの木の枝や葉の上に止まるという感じでした.また交尾のカップルもいました.ちょうどメスをつかまえたところのオスがいて,移精行動も観察できました.メスは腹部を曲げて交尾姿勢になった状態で移精行動が終わるのを待っていました.

移精行動が終わると,すぐに交尾に入りました.ところが,これが結構神経質で,ストロボの光で交尾をやめてしまいます.以前来たときはビデオカメラでの撮影でしたので,ストロボが光るということはありませんでしたからこの神経質さに気がつきませんでした.交尾は20〜30分かかるので,産卵しているメスを探すことにしました.しかし,こちらが見つける前にメスに感づかれ,産卵をやめて飛び立ってしまいます.なんとかこちらが先に産卵メス見つけようと,ここぞという場所で目を凝らしていますと,やっと1頭のメスが産卵しているのを見つけることができました.でもこのメスも神経質で,ストロボの光ですぐに産卵をやめてしまうのです.このシコクトゲオトンボというのはかなり神経質なトンボだということを知りました.

さて,一通り観察ができましたし,まだ時間が12:30でしたので,コフキヒメイトトンボを見に立ち寄ることにしました.現地では,キイトトンボばかりが目につき,コフキヒメイトトンボはやっとのことで1頭見つけただけでした.もう時期的に数が減っているのでしょうか.

この場所にはネアカヨシヤンマも生息しているのですが,それが,目の前をびゅんびゅん飛んでいます.産卵するのを待ちましたが,なかなかそのようすはありません.メスは草の間に沈むように入っていきますがすぐに出てきます.

14:00に帰途につくことにしていましたので,そろそろ帰ろうとしましたら,足元で産卵しているメスがいて飛び立ってしまいました.ちょっと横を向いている間にもぐりこんだようです.大チャンスを逃しがっかりして,帰途につきました.ネアカヨシヤンマに気を取られ,コフキヒメイトトンボをあまり真剣に探さなかったことを反省!.

写真で見て思ったのですが,シコクトゲオトンボとミナミヤンマは同じような色彩をしています.ともに同じ暗いところに生息するということで,一種の収斂でしょうか.そんなことを感じながら帰ってきました.