新 トンボ歳時記
No.350. 田園地帯のお散歩コース 2012.5.13-(1).

今日は朝から晴天.家から小一時間のところにある田園地帯のお散歩コースを歩いてきました.よく晴れて,気温もさほど高くない,この「高くない」というのが大切で,最近は冬が終わったと思ったら春を通り過ぎていきなり夏といった気温の変化が何か普通のようになっている気がしますが,今日は春らしい穏やかな晴天でした.

まずはムカシヤンマのようすから確かめることにしました.羽化はもう時期的には少し遅いと思いますが念のためというところです.丹念に探すと,羽化殻が2個ついていました.これはひょっとしたら未熟なムカシヤンマに出会えるかと思い少し歩いていると,何と,道に,ムカシヤンマの轢死体が落ちていました.個体数がそれほど多くないのに,未熟なうちからこうやって死んでいくのは残念でなりません.

さて,さらにお散歩を続けました.少し行くと,いましたいましたムカシヤンマのメスが.幸先のよいスタートです.日陰の道路に止まっていました.写真を撮り終わっても全然動かないので,このままだと車に轢かれてしまうと思い,飛ばすために体に触りましたら,地面でばたばたと暴れるだけで飛び立ちません.なんと体がまだ柔らかい,おそらく羽化直後の個体でした.仕方がないので掴み上げ,道路横の草の中に止まらせておきました.

少し行くと,今度はオスが道路に止まっていました.今日のお散歩は本当によくできていて,頭で描いた最良の状態が次々と眼前に現れると行った感じです.この個体も撮影の後,車に轢かれそうな予感がしたので飛ばしました.こちらは結構飛ぶのですが,どういうわけかすぐに道路に戻ってきて止まります.いくら追い立てても道路がよほど好きなのか,人間に嫌気も差さず,道路に止まります.まあ仕方ないので成り行きに任せることにしました.が,予感は的中.今日の帰り道で,やはり車に轢かれた遺体を発見してしまいました.またもや轢死です.本当にこうやって次々と数少ないムカシヤンマが死んでいくのを目にするといたたまれない気がします.ここでは個体数が少ないトンボなのに.

また道をどんどん歩いていきました.いろいろなトンボに出会いましたが,それはまた後で紹介するとして,しばらく行ったところでまたムカシヤンマのオスに出会いました.今日は本当についているようです.こちらは非常にしっかりとした飛び方をし,最後に追い立てると,林の中に飛び去りました.これが普通ですよね.

さて,ムカシヤンマの話はこれくらいにして,今日非常によく目についたのは,オグマサナエでした.昨日,オグマサナエを見るためにわざわざ出かける必要がなかったくらい,今日のコースではオグマサナエがメインという感じでした.毎年感じることですが,出会えるときにはどこへ行ってもいるという感じですね.今日のオグマサナエは,未熟〜やや成熟の個体が入り交じっていて,特にオスが多く見られました.全体的印象としては,前生殖期の終わりころの時期で,オスもメスもまだ池に戻らず,こうやって田園地帯で過ごしているといった感じでした.

このオグマサナエ,どの池で孵ったのか,一度確認する必要があります.これは次回の課題にすることにしました.今日は,お散歩の最後にタベサナエの繁殖活動という目的があるからです.

オグマサナエ以外のコサナエ属はタベサナエです.こちらはどういうわけか,メスばかりが目につきました.きっと産卵意欲のないメスが,田園地帯を飛び回っているのでしょうね.後の観察で,成熟したオスは池の周辺に多数集まっていました.したがって,タベサナエはオグマサナエより少し早く前生殖期を終え,成熟したオスは池に,成熟して産卵意欲のないメスが田園地帯に分かれて生活しているといった印象でした.

ここにはフタスジサナエは全くいないようです.3年くらいここに来ていますが,まだ姿を見たことはありません.これ以外には,ニホンカワトンボ,アサヒナカワトンボ,シオヤトンボ,シオカラトンボなどが見られました.

ということで,最終目的のタベサナエの繁殖活動の観察に向かいました.次の欄に分けて紹介します(続く).