新 トンボ歳時記
No.347. 近くの池でほんのひととき 2012.5.4. 

今日は晴れたり曇ったりといった天候でした.最近私事の仕事が増えて,なかなか遠くへは出られません.今日も近くの池に昼前後に出かけて,じっと観察を続けました.

池ではもうトラフトンボ達が元気に活動を始めていました.オスたちは池の縁に沿ってなわばりを形成し,しょっちゅう追いかけ合いをしています.池全体では20頭くらいのオスがいたでしょうか.交尾態になったペアも次々に入ってきて,これも軽く10ペアを超えました.ただ,飛び回るトラフトンボは写真には撮りにくい相手です.

トラフトンボのなわばり飛翔と交尾飛翔

おまけに今日は,オスが多いせいか,交尾を解いたあと,普通なら近くに止まってメスが卵塊を作り始めるのですが,残念ながらオスに追い立てられて,池の背後の樹林高くに逃げてしまいます.オスが多すぎるのも困りものです.結局,卵塊を作るメスは写真になりませんでした.2回ほど岸辺に止まった個体がありました.交尾を解いて1回打水した後すぐ堤のワラビに止まって卵塊をはき出し始めたのですが,カメラを向けて2枚ほどシャッターを切ると,さっと飛び立ち,樹林へ上がっていきました.

トラフトンボ未熟オスと卵塊を作り始めたメス

まだ若いオスもいて,池の周辺で摂食をしています.時々止まる個体もありました.トラフトンボは今が一番個体数が多いのでしょうね.未熟,成熟,入り交じって飛んでいました.どうやら今年は数が多い年のような感じです.それでも打水の瞬間や卵塊をつくるシーンは撮れませんでした.なお産み落とされた卵紐は6本見つけました.たくさん産卵している証拠です.

トラフトンボの卵紐

今日はトラフトンボ・デーといった感じでした.そんななか,ヨツボシトンボも産卵に訪れました.トラフトンボのなわばりの中で産卵するので,トラフトンボのオスに追われながらの産卵です.あるオスはこのヨツボシトンボのメスに体当たりし,水面にたたき落として,強引にタンデムになろうとしました.ヨツボシトンボはいい迷惑です.でもそんな目にあっても,またしばらくすると産卵に戻ってきました.一方で今日まだ羽化しているヨツボシトンボのオス個体もいました.

ヨツボシトンボ達

さて,今年の課題は,均翅類の羽化の様相を去年に引き続き観察することです.Mnais属の幼虫が採れなかったので,こちらは来年回しになってしまいましたが,今日,イトトンボ科のクロイトトンボの羽化を確認できました.

クロイトトンボの羽化

写真の通り,クロイトトンボは直立型で,翅の伸張はサナエトンボと同じく,根元の方から伸びていきます.また成虫は懸垂姿勢を取らず,足で立っていることが分かります.この方式ですと,水平な位置でも羽化が可能です.クロイトトンボの羽化殻は,よく水平な位置にも着いています.

その他のトンボたち

その他には,フタスジサナエの姿が見えました.またクロスジギンヤンマのメスが池に入りました.残念ながら産卵は行わなかったようです.ということで,今日は短時間でしたが,中身の濃い観察ができました.