トンボ歳時記
No.330. この時期に!? キトンボだらけ(2). 2011.12.29.

しばらくすると,このペアは飛び立ち,産卵を始めました.12月29日に,元気な産卵を見られるとは夢にも思いませんでした.ただ,彼らの動きはどことなくぎこちなく,上下動も少ないスケールの小さな産卵という感じでした.

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▲産卵を始めたカップル.

陽が当たっている浅い岸辺とはいえ,水は,氷が張っているほどの温度です.産卵を始めてほどなく,ペアはまた暖かい岸の石の上に止まり,体を温め始めました.11:43に産卵を始めてから,止まったのが11:45ですので,2分間ほどの産卵でした.

▼産卵を一時休止して,再び暖を取るカップル.
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▲再び産卵を始めたカップル.

11:49,約4分間の休息の後,ペアは再び産卵に取りかかりました.この産卵は1分ほどで終わり,メスが暴れ回ってタンデムを解きました.そしてそのまま背後の木立の方へ飛び去っていこうとしましたが,別のオスにつかまってタンデムとなって連れ去られました.産卵を撮影することができてホッとした気分になったので,オスの数を数えようと,岸を歩いて,片端からオスを撮影していきました,10頭ほど数えたところで,また別のタンデムのペアを見つけました.

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▲2組目のタンデムのペア.メスの腹部背面が赤い.

このペアのメスは,腹部の背面が赤い色になっています.普通キトンボのメスは.腹部背面が赤くならない個体がほとんどのように思いますが,こういう個体もあるのですね.この産卵ペアも先ほどのペアと同じように,産卵しては体を温めるために静止し,といった行動を繰り返しています.さらに,オスがへたれなのでしょうか,産卵の途中で岸辺に止まってしまい,メスは羽ばたいて宙に浮かんでいるといったシーンが,一度ならずありました.

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▲産卵を始めた2組目のペア.産卵中時々休む.
 一番下:オスが止まってしまいメスだけが羽ばたいている.

では,時間を追って,産卵の様子を記録しておきます.

 11:53'54 タンデムのカップルの発見.
 11:57'24 連結打泥産卵の開始.
 11:58'36 産卵を中断して岸辺に止まり暖を取る.
 12:02'00 再び産卵を開始する.
 12:02'32 水際近くの地面に止まり産卵を中断.
 12:02'36 産卵を再開する.
 12:04'14 産卵を中断して岸辺に止まり暖を取る.
 12:06'56 三度目の産卵を開始する.
 12:07'18 水際近くの地面に止まり産卵を中断.
 12:07'22 産卵を再開する.
 12:07'30 水際近くの地面に止まり産卵を中断.
 12:07'36 産卵を再開する.
 12:08'30 産卵を中断して岸辺に止まり暖を取る.
 12:11'04 産卵を再開する.
 12:11'26 タンデムを解いて警護産卵に移行する.
 12:12'12 単独メスは岸辺に止まり暖を取る.
 12:17'24 単独メスが産卵を行う(一時見失う).
 12:18'46 単独メスが岸辺に止まり暖を取る.
 12:22'20 単独メスの産卵の再開.
 12:27'54 単独メスは産卵をやめて木立へ移動.

だいたい2分ほど産卵したら4分ほど暖を取るといったインターバルで産卵をしています.気温を測定できていないので,データとしてはあまりいいものではありませんが,冬の時期の産卵行動が,秋の産卵行動とだいぶん違うことは確かだと言えそうです.

▼タンデムを解いて,警護産卵へ移行.
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▲いったん休息した後,メスの単独産卵へ移行.

ということで,今日は,季節はずれのキトンボだらけを体験しました.ここの個体群は,たぶん年を越すことになるでしょうね.次はお正月に来てみようと思っています.