トンボ歳時記
No.173. 中部地方への遠征(2). 2010.7.10.

さて,ここへ来た目的は,エゾイトトンボと,このカオジロトンボです.カオジロトンボにはもう遅いかとも思いましたが,さすが標高があると,まだまだ平地の5月中旬の様相でした.遠くでカッコウが鳴いています.

ファイル 173-1.jpg
▲カオジロトンボのオスたち.

水たまりでは,カオジロトンボのオスたちが,思い思いの場所に止まり,メスの到来を待っています.ただ,彼らも結構敏感で,すぐに飛び立ち,なかなか近寄らせてもらえません.こちらの気配をさっと感じて飛び立ち,ホバリングして様子を見ています.

ファイル 173-2.jpg
▲産卵に来たメスを捕まえたオス.そして交尾に至る.

さて,メスはこっそりと産卵にやってきますが,オスの密度が高いと簡単に見つかってしまいます.オスはメスを捕まえ,しばらく引き回した後に,交尾に至ります.メスを捕まえるとそちらに気が行ってしまうのか,あれほど人を警戒していたのに,私のウェーダーに止まったりもしました.

ファイル 173-3.jpg
▲あちこちで交尾しているカップルを目にする.

交尾時間は結構長く20〜30分は続きます.その間,少し飛んでまわりの様子をうかがったりします.交尾時間が長いせいか,とにかく交尾のカップルが目につきました.

ファイル 173-4.jpg
▲長い交尾が終わり,メスはまず一休み(2段目左),そして産卵に移行する.

交尾はある時突然に終了します.終わると,メスはすぐそばに止まります.かなり疲れているのでしょうね.そして,さっと飛んで数回打水したかと思うと,水面の浮葉に止まったりして動きをぴたっと止めます.そしてまたまわりを伺うようにしてからさっと飛び立ち,数回打水し,止まります.こういった動作の繰り返しです.

ファイル 173-5.jpg
▲写っていないが,オスが警護していると,結構広いところへ出てきて産卵する.

オスはメスを近くで見守っているようですが,あまり警護らしい行動は見受けられません.時にホバリングして産卵メスの上空を飛んでいます.こういう時のメスは,少し大胆に産卵しているようです.打水回数も増えますし,開けたところへ出てきて産卵しています.

しかし,メスはすぐに他のオスに見つかり,強引にタンデム状態にされてしまいます.そしてまた20〜30分交尾します.写真を撮るのにこれほどいらいらする相手はいませんね.1,2分産卵行動をしたかと思うと,すぐに交尾になってしまい,次の産卵を待つこと20〜30分という状態になるのですから...どうりで,交尾のカップルが目についたわけです.納得.

14:00ころになると,トンボたちの動きも目立たなくなり,あちこちに止まって過ごすようになります.これで今日の繁殖活動は終わったのでしょう.あとは午後をゆっくりと過ごすだけです.