トンボ歳時記
No.081. ミヤマサナエ探索−兵庫県北部−. 2009.7.5.

今日は,南から停滞前線が北上して来るという予報だったので,北の方の晴れ間に期待して,兵庫県豊岡市の川に,ミヤマサナエの探索に出かけました.過去にぽつぽつと記録はあるところです.時期が少し早いかとも思いましたが,あまり生態を詳しく知らないトンボに,思いこみはいけないと言い聞かせて,出かけてみました.

ファイル 80-1.jpg
▲本日の観察地.左が1ヶ所目,右が2ヶ所目

まず,春にミヤマサナエの幼虫を採集した地点へ入ってみました.ミヤマサナエの姿はありませんでしたが,オナガサナエがもう姿を見せていました.まだ若く体が柔らかそうな個体です.

ファイル 80-2.jpg
▲オナガサナエのオス.全部で3頭ほど姿を見た.

過去,この時期に河川調査をあまりしていないので,もう少し遅い時期のトンボと感じていましたが,アオサナエと混じって止まっているのを見て,またまた認識を新たにしました.いくら調べても,まだまだ知らないことが多いことに気づかされます.

ファイル 80-3.jpg
▲アオサナエのオス.緑色が少し褪せてきて,日齢が進んでいることが分かる.

これ以外には,コオニヤンマ,ハグロトンボ,シオカラトンボ,ハラビロトンボがいました.

この場所では,ミヤマサナエは期待できそうになかったので,別の場所へ移動しました.春にキイロヤマトンボの幼虫を採集した地点です(一番上の写真右).砂がたっぷりとたまった,昔のこの川を彷彿とさせる環境です.

まずはキイロヤマトンボを待つことにしました.20分くらい待つと,水面を下流から一直線に猛スピードで飛ぶトンボがいることに気づきました.キイロヤマトンボかもしれないとは思いましたが,少し小さいようで,種類が確認できません.網を持ち出し,気合いもろとも1頭を採集すると,オナガサナエでした.オナガサナエというトンボは,このように,川面の低い位置を,下流から上流へ,またその反対へと,猛スピードで移動する習性があるようです.

ファイル 80-4.jpg
▲ミヤマサナエのオス.今年のターゲットの一つ.

ちょっぴりがっかりしたのですが,そのとき,目の前の砂地にミヤマサナエが止まりました.ミヤマサナエというトンボは,今までほとんど真剣に探しに行ったことがないトンボで,それを目的にやってきて,こういう風に出会えると,とても嬉しいものです.

ファイル 80-5.jpg←産卵に入ったメスの写真

ミヤマサナエが見つかったので,写真を撮るべく網を置いて水に入ったところ,何かのメスが入って産卵を始めました.肝心なときに網がないので悔しい思いをしながら,連写でとにかくシャッターを切り続けました.あまりにあちこち飛ぶので,とても写真にはなっていませんけれども,この写真でミヤマサナエであることが確定できると思います.この川にはナゴヤサナエも生息していますのでまぎらわしいのですが,腹部先端部の黄色い斑紋はミヤマサナエのものです.

オナガサナエもミヤマサナエもまだ出始めという感じでした.これから9月に至るまでこれらのトンボを見ることができるので,まあ,ゆっくり腰を落ち着けて,今後も観察を続けていく予定です.