兵庫県の幼虫ガイド
H073. リスアカネ Sympetrum risi risi
リスアカネ終齢幼虫
写真1.リスアカネ終齢幼虫(しゅうれいようちゅう).全長17mm前後.2011.5.28.
<特ちょう>
 リスアカネはトンボ型の幼虫です.体全体がやわらかく,表面はすべすべしています.翅芽(しが)は,まっすぐ後ろにのびています.触角(しょっかく)は糸のように細いです.腹の横のとげ(側棘:そっきょく)は第8,9節にあってどちらも長く,写真2のように,第8節のとげが第9節の後ろはしこえています.背中のとげ(背棘:はいきょく)は先がするどくとがっていて,腹部の第4−8節にあります.写真3のように,顔を正面から見たとき,下唇側片(かしんそくへん)の上に黒いはん点がちらばっています.

リスアカネのそっきょくとはいきょく リスアカネの触角とかしんそくへんのはん点
写真2.腹部の第8,9節の横にするどいとげ(側棘)があります.
どちらも長く,第8節のとげの先は第9節の後ろはしをこえます.
先のとがった背中のとげ(背棘)が,腹部の第4−8節にあります.
写真3.リスアカネの全体図と,下唇側片
下唇側片の上には黒いはん点があります.
触角は糸のように細いです.


<よく似た幼虫との区別>
 リスアカネはアカトンボのなかまです.アカトンボの幼虫は,どれもとてもよく似ていて,トンボの専門家でも見分けられないことがあります.ですから,区別がつかなくて迷っても,それはしかたがないことです.みなさんもたくさん研究をして,見分け方を見つけてください.
 さて,リスアカネの特ちょうは,腹部の第8節の横のとげが,第9節の後ろはしをこえることです.このように長いとげ(側棘)を持つアカトンボの幼虫は,5種類しかいません(写真4).その中で,顔を正面から見たときに,下唇側片の上には黒いはん点があるのは,リスアカネ以外では,ノシメトンボナニワトンボです.ふつう,リスアカネはナニワトンボよりは大きいのですが,ノシメトンボよりは少し小さいだけで,大きさではほとんど見分けられないでしょう.ノシメトンボとの区別が難しく,ほとんど見分けることができないでしょう.見分けるのがとても難しいアカトンボです.

そっきょくの長いアカトンボ5種.
写真4.腹部の第8節の横のとげの先が第9節の後ろはしをこえるアカトンボの幼虫.大きさと下唇側片上のはん点の有無.
<さがす場所のヒント>
 リスアカネはため池の住人です.写真5のように,ため池の水がぬかれて,岸辺に底が広く現れたようなところで産卵します.産卵は夏の終わりから秋にかけて行われますから,そのころに水がぬかれていたため池で幼虫が採れます.また池のまわりが木でおおわれているところを好みます.ナニワトンボといっしょに産卵しているのをよく見かけます.ほとんどの卵はそのまま冬をこすようで,次の年の春に幼虫が誕生します.そして,7月のはじめには羽化して親になってしまいます.ですから,幼虫の採れる時期は,4月から6月に限られています.とくに終齢幼虫は,6月の終わりから7月のはじめの短い期間にしか採れません.

リスアカネの産卵場所.
写真5.産卵にやって来たオス・メスのペア.水がぬかれたため池の,水がない岸辺で,空中から卵をばらまきます.