神戸のトンボたち
K064. マダラナニワトンボ Sympetrum maculatum(記録地公表種)
オスの静止.1987年.,神戸市西区.北川弘美氏撮影.
オスの静止.1987年.,神戸市西区.北川弘美氏撮影./神戸市RDB:
 この貴重な写真は,拙著「神戸のトンボ」の出版の際に氏よりご紹介いただいたものです.撮影地は西区櫨谷町谷口の南谷大池だと思われます.その後ご縁あって,この写真をいただくことができました.氏によると,何度か通ってやっと撮影できたということです.当時より数はそう多くなかったのでしょう.氏はすでに他界されています.
 本種は松本(1982)の記述によれば,「西区の櫨谷町の丘陵地のみに産する」とあります.実際神戸市でいろいろな情報を集めてみても,これらの地域以外にはほとんど見いだされません.だた一例,裏六甲での記録があります.ただし,まわりに生息できるような環境があるところではありません.
 私の市内での唯一の採集は,1990年の押部谷町高和(清水谷池)でのものです.目撃したのはメス1頭だけであり,その後もこの池にもよく訪れていますが,これ以外にはまったく見たことがありません.その池の環境を見ても,おそらくどこかから飛来したものであろうと思われます.
 現在本種は,兵庫県下でも2017年以来その姿を見ることがなく,今まさに姿を消そうとしている,あるいはすでに消してしまったアカトンボで,2007年に見直されたレッドデータリストで絶滅危惧I類(CR+EN)になりました.
 神戸市の産地であった櫨谷町のいくつかの池は,西神南団地の開発にともなうため池の改修や埋め立てでその生息環境が失われてしまっており,もはや神戸市では生き残りの可能性はないと思われます.
標本で見る消えたトンボたち

かつての生息地南谷大池の現況:西神南団地の一角に残されている.

 神戸市内で絶滅状態と思われる本種について,皆さんの再発見を期待し,過去の生息地名を公表しています.もし見つけたら,トップページ下部に掲載しているメールでお知らせいただけると幸いです.