神戸のトンボたち
K093. ヨツボシトンボ Libellula quadrimaculata asahinai
オスの静止.2023.5.11.,神戸市北区.
オスの静止.2023.5.11.,神戸市北区./神戸市RDB:
 神戸市において,かつて本種は各地に普通にみられましたが,最近はかなり減ってきたように感じられます.2023年に久しぶりにその姿を確認できました.
 特徴的なことは,六甲山地の高標高地にはあまり見られないことです.元来が北方系の種ですが,神戸市において比較的涼しい六甲山に数が少ないということは,本種が生息地として平地や丘陵地を好むことを示していると思われます.神戸市でいちばん標高の高いと思われる記録は金剛童子山のものでしょう(関西トンボ談話会,1974-1977).
 日本アルプスをいただく長野県においても本種は低地から低山地に棲息すると記述されています(長野県のトンボ,1977).松本(1982)は「以前山間にため池がたくさんあった頃には六甲山地には格別多いトンボのような印象を受けた.」と記述していますが,残念ながらこれがどの程度の標高のものか記述がないので分かりません.
 神戸市では羽化は早く,4月の下旬頃から始まっていると考えられます.同属のベッコウトンボより少し遅れるようです.成虫の活動期間は7月の上旬までにおよび,これもベッコウトンボより1カ月ほど長いようです.幼虫は植物の枯れたものがたい積している所などで採集されます.羽化殻はヨシの茎などについており,比較的低い位置についていることが多いようです.
 北区での観察では,羽化が近い3月初めには,終齢幼虫の他,亜終齢幼虫がたくさんいますので,羽化期間は一斉ではなくやや幅を持って続くものと思われます.