神戸のトンボたち
K038. タイワンウチワヤンマ Ictinogomphus pertinax
メスの静止.2010.9.18.,神戸市西区.
メスの静止.2010.9.18.,神戸市西区.
 タイワンウチワヤンマはもともと神戸市をはじめ兵庫県下には産しないトンボでした.1950年代の記録では,徳島県の阿南付近より南にしか分布していませんでした.それが現在は北は滋賀県,東は神奈川県にまで分布するようになっています.神戸市の記録はすべて1991年以降のものです.松本(1982)は本種の分布拡大を予測して,はっきりとその文中に記述しています.分布拡大の原因は,私は単純に気温の上昇のせいであると考えています(青木,1992).
 この20年間で,神戸市では西区,垂水区,須磨区などに広く分布が広がりました.そのほか,三宮でみたという報告があったり,六甲アイランドで羽化殻が取れたりといった報告もあります.2001年の観察では,西区の平地のたくさんのため池に本種が飛んでいました.また羽化殻の採集報告も耳にしています.2010年現在,兵庫県では,南部一帯はもちろん,北の方へでは加東市にまで広がっていて,夏のトンボとしてすっかり定着してしまいました.
 神戸市ではふつう7月上旬に羽化します.約2週間で池に姿を見せ始めるようになり,その後10月初旬まで見られます.
青木典司,1992.タイワンウチワヤンマ幼虫の神戸市での越冬記録.Tombo 35(1/4):47-50.