トンボ歳時記総集編 6月

白い軍配状の脚が目立つイトトンボ
写真1.植生豊かな河川中流域.

 グンバイトンボはだいたいアオハダトンボと同じ時期に,多くは同じ場所に生活しています.出現時期もほぼ同じです.アオハダトンボがいるところにはたいがいグンバイトンボが見られますが,逆は必ずしもそうではありません.ただしグンバイトンボは兵庫県の北部には分布していませんので,その地域では,アオハダトンボがいてもグンバイトンボは見つかりません.
 早いところでは5月下旬に未熟な個体が飛んでいます.遅いところでは6月にも羽化が見られます.このあたりも川によって出現時期にちがいが見られ,アオハダトンボとよく似ています.未熟な個体は川を離れて見つかることがあり,未熟なときに多少移動することがあるようです.しかし多くは河原やその周辺の草地の中で生活しています.

写真2.左:6月28日,右:6月13日.オジロサナエの羽化殻といっしょに残るグンバイトンボの羽化殻(左)とグンバイトンボの羽化(右).
写真3.右下:6月10日,他:5月20日.河原の草地で生活する未熟なオス(左)とメス(右上).川から離れた林の中に止まる未熟なオス(右下).
写真4.5月20日.軍配状の中肢・後肢を目立つように広げて飛ぶ,未熟なグンバイトンボ.飛んでいてもよく分かる.

 6月の繁殖期になりますと,朝のうちは河原の草地で摂食をして過ごしているようですが,やがて,産卵活動が見られます.交尾を見ることはあまりありません.一例,午前からお昼ことにかけて,河原の草地で交尾しているペアを見たことがあります.オスは川岸に草が生えているようなところをツイツイと飛び回り,メスを探します.このとき軍配状の脚がよく目立ち,グンバイトンボとすぐに分かります.

写真5.左上:6月24日,中上:6月30日,右:6月10日,下左・中:6月2日.メスを探すオスたち.右は水色が強くでている個体.
写真6.6月25日.グンバイトンボの交尾.草原の中に入りこんで交尾を行っている

 産卵の際,オスは典型的な直立姿勢をとります.これを歩哨姿勢と呼びます.産卵中に同種のオスや他種のオスが近づくと,オスは翅を震わせ,軍配状の脚を広げて,近づく個体を威嚇します.

写真7.左:6月24日,右:6月6日.グンバイトンボの歩哨姿勢による産卵.
写真8.左:6月29日,右:6月25日.グンバイトンボのペアは河原の草陰になるようなところを好んで産卵する.
写真9.6月2日.クロイトトンボのオスの接近に対して(左),同じグンバイトンボのペアの接近に対して(右),軍配状の足を開いて威嚇するオス.

 グンバイトンボはグループ産卵もよく行います.複数のペアが隣接して産卵をする現象です.2,3ペアということが多いです.外国で行われた歩哨姿勢で産卵するイトトンボ科の Pyrrhosoma nymphula を使った実験によると,歩哨姿勢の模型を置くと,置かない場合より産卵ペアがやって来る頻度が高くなるそうです(Martens, 1993).グンバイトンボも歩哨姿勢で産卵しますので,同様のことがいえるかもしれません.直立状態が何らかの誘因になっているのかもしれません.

写真10.左:6月30日,右:6月24日.産卵しているペアのいる場所に飛んで来る別のペア(左).驚かせると2組とも逃げる.
写真11.6月2日.すれ違うように飛ぶ2組の産卵ペア.飛んでいるときも歩哨姿勢を崩さない.
写真12.左:6月30日,右:6月24日.グループ産卵している2組のペアたち.

 グンバイトンボは,ふつう7月中旬ころまで成虫の姿が見られます.8月にも記録はありますが,これは突出したもので,発見地はほぼ同じ場所です.おそらくそこのグンバイトンボの出現時期が遅い傾向があるのでしょう.

写真13.7月9日.まだまだ元気に頑張るグンバイトンボのオス.