トンボノート
No.774. コサナエ属活動を始める.2021.4.27.

明日からは天気が下り坂で,しばらくは雨や曇り模様の予報です.そこで,今日は,コサナエ属の出現状況を見に行くことにしました.野外観察中,人とすれ違うことは皆無でしたので,いちおう感染防止は果たせたと思います.

最初の池はいつもの池で,フタスジサナエがたくさん出てくるところです.さて,今日はどうでしょう.



▲フタスジサナエのオスたち.まだ体色が薄黄色く,完全に成熟しているとは言えなさそうな個体であった.

現地に入ると,地面からひらひらとフタスジサナエが飛び立ち,「ああ,いつのも景色だな」と胸をなで下ろしました.フタスジサナエたちが飛び回る姿を見ると,本格的なトンボシーズン開幕が感じられます.ここの生息地では,まだオスは完全に薄緑色になっていなくて,池にも出ておらず,成熟まであと一息といったところでした.例年の観察では,オスの方が早く羽化し,メスはだいたい今頃羽化をしています.羽化そのものは観察できませんでしたが,羽化直後の個体や,まだ未熟な個体たちが,芽吹き始めた木々の葉に止まって休んでいました.





▲フタスジサナエのメスたち.まだ未熟な感じがする.2枚目は羽化して間がない個体である.

ここには,一足早く羽化したタベサナエがいます.ただ,まだ池に出ておらず,池の周辺を飛び回っていました.



▲タベサナエのオスとメス.オスは淡色部が薄緑色になり,成熟しているようだ.

ここではオグマサナエを見ることができませんでした.そこで,次の場所へ移動しました,二番目の池では,フタスジサナエたちがすでに成熟し,池の岸で追いかけ合いをして過ごしていました,こちらの池の方が早く成熟しているようです.



▲フタスジサナエのオスたち.体色が薄緑色になって,成熟している.

ひょっとしたら産卵が見られるかも知れないと思い,しばらく待ってみました.しかし,雲が出てきて太陽を隠し,トンボの動きも不活発になりましたので,今日は産卵をあきらめました.池の周辺を歩いてみると,メスが枯れ草に止まって休憩していました.まだ産卵にはちょっと早い感じに見えます.

▲フタスジサナエのメス.

ここにはフタスジサナエに混じって,オグマサナエが池岸で活動していました.薄緑色の淡色部が少し黄褐色気味になるので,オグマサナエだとピンときますが,果たしてそうでした.2頭いました.やはりオグマサナエの数は少ないですね.



▲フタスジサナエに混じって活動していたオグマサナエのオスたち.

よく探すと,周辺にタベサナエもいました.この池で羽化しているかどうかは分からないので,3種が同所で繁殖しているとは言えませんが,まあ,近くに3種がいたことはまちがいありません.

▲タベサナエのオス.ここでは,コサナエ属3種がすべて見られた.

ところで,今日も5,6箇所の池をのぞいているのですが,まったくと言ってよいほどイトトンボの姿がありません.この時期なら,クロイトトンボやアジアイトトンボはいてもよいはずです.おまけに成虫越冬種の姿もまったく確認できませんでした.

そこで,最後に,イトトンボを探しに行くことにしました.4つの池を回りましたが,いたのは,アジアイトトンボの交尾態1ペア,クロイトトンボのオス1頭でした.アジアイトトンボやクロイトトンボがいて,「やった,いたいた」と歓喜の声を上げたほどでした.スゲやスズメノヒエが岸辺に生えた浅い池で,イトトンボがまったく飛ばないというのは,今まであまり経験したことがありません.

▲アジアイトトンボの交尾態.

今日は,トラフトンボを見ていません.そこで,この春もう一度最後に,定点池に行ってみることにしました.しかし,水位が1mほど低くなっており,トラフトンボはおろか,ヨツボシトンボもいません.ときどきクロイトトンボの羽化個体が飛び出す程度でした.この池は冬の間長時間水を落としていたこと,すぐ隣の池が幼虫の存在する冬に池底を掘り返したことなどで,ほとんどのトンボが死滅したようです.特に隣の池がトラフトンボやヨツボシトンボの供給源になっていたようで,これでこの定点池は終わりになるでしょう.近くに種の供給源はないように思われますので.もう復活は当分望めないと思います.

▲完全に池の底が掘り返された.ここは,下の写真のように,ヨシが豊かに茂る浅い池岸の部分だった.
▲同じ場所のかつての姿.この浅い岸部分にヨツボシトンボやトラフトンボが生活していた.〇はトラフトンボ幼虫.