トンボノート
No.763. 行楽日和,午後のお散歩.2020.10.25.

今日は快晴の行楽日和.ふつうなら目的を持ってトンボを見に行くことになりますが,ちょっと疲れ気味.というのも,昨日,オオキトンボのビデオ撮影に出かけてきて,いささか食傷気味になっていたからです.でもこの天気に家に閉じこもっているわけにもいかず,今年の観察予定で残された最後のトンボ,オオアオイトトンボの下見に出かけることにしました.合わせて,田園地帯でトンボの状況観察です.

▲ヒメアカネのオス.

最初に森林公園へ行きました.ここはかつてオオアオイトトンボの写真をたくさん撮った場所です.でも,トンボ自体がほとんどいませんでした.広い公園を歩き回って,近くで見たのはヒメアカネ1頭のみ.あとはアカネ属らしいのが2頭ほど飛んだのを見ただけでした.そこで,次に稲刈り後の水田が並ぶ,谷筋の田園地帯に行ってみました.ここの水田の電柵には,数年前には,キトンボ,ネキトンボ,ナツアカネ,アキアカネ,リスアカネなどが止まって摂食していました.水田の上を飛ぶカトリヤンマの姿もときどき見かけました.でも,今日見たのは,ナツアカネとアキアカネがせいぜい数頭,キトンボ1頭だけでした.まったくトンボがいないといっていい状態でした.

▲ナツアカネのメス.2,3頭見かけた.
▲アキアカネのオス.3頭ほどいた.

こんなによい天気の午後,トンボがほとんどいない谷筋の水田地帯,ため池も水田と並んで2つあります.約40分,6000歩ほど歩きましたが,本当にトンボがいません.わたしは,福島第一原発事故の3年後,南相馬市の,そのころまだ避難指示解除準備区域であった小高区に仕事で入ったことがあります.暖かい日差しの田園地帯を車で走ると,信号は点灯しており,街は動いているのですが,そこには人っ子一人いませんでした.今日のこのトンボがいない水田地帯を歩いていると,このときのことを思い出し,なんかとても不安を覚えるような心境になりました.何か得体の知れないことが進行しているような不安です.本当にトンボはふつうの場所から消えてしまうのではないか,もう赤とんぼに思いをはせた日本人とトンボの関係性は過去のものとなってしまったのではないか,といった思いが湧いてきました.

ま,感傷はこれぐらいにして,気を取り直して,別の池にオオアオイトトンボを下見に行きました.

▲池面の上に張り出した樹木の枝ぶり.

ここは前から目をつけていたところで,オオアオイトトンボの姿も見ています.しかし,オオアオイトトンボは,その周辺も含めて姿がありませんでした.写真のように,産卵してくださいというような枝振りが水面に覆い被さっています.いたのはアオイトトンボとアジアイトトンボでした.アジアイトトンボはオスばかりが7,8頭元気に飛んでいました.まだ若々しく,11月頃までは活動を続けそうな個体ばかりでした.

▲アオイトトンボのペア.私が歩いたら驚いて飛び出た弾みか,水面に落ちたタンデムのペア.元気に飛び去った.
▲まだ若々しいアジアイトトンボのオス.メスは目につかなかった.

ここにはアカトンボは姿がありませんでした.アジアイトトンボの写真に,カイガラムシらしきものがたくさん写っていますが,ここは農薬を使っていないんだろうな.

というようなひとときでした.昨日のオオキトンボの観察はビデオの記録が目的でした.ここに公開しておきます.


兵庫県とその近隣のトンボたち:オオキトンボの産卵ショウ

明日からしばらく休息して,もう少し寒くなってから,アキアカネ,タイリクアカネ,オオアオイトトンボなどを見に行くことにします.