兵庫県の幼虫ガイド
H082. ミヤマアカネ Sympetrum pedemontanum elatum
ミヤマアカネ終齢幼虫
写真1.ミヤマアカネ終齢幼虫(しゅうれいようちゅう).全長13−17mm.2019.6.21.
<特ちょう>
 ミヤマアカネはトンボ型の幼虫です.体全体がやわらかく,表面はすべすべしています.翅芽(しが)は,まっすぐ後ろにのびています.触角(しょっかく)は糸のように細いです.腹の横のとげ(側棘:そっきょく)は第8,9節にあってどちらも短く,写真2のように,第8節のとげが第9節の後ろはしにとどくことはありません.背中のとげ(背棘:はいきょく)は先がするどくとがっていて,腹部の第4−8節にあります.

ミヤマアカネのそっきょくとはいきょく ミヤマアカネの触角と背中のはん点
写真2.腹部の第8,9節の横に小さなとげ(側棘)があります.
どちらも短く,第8節のとげの先は第9節の後ろはしにとどきません.
先のとがった背中のとげ(背棘)が,腹部の第4−8節にあります.
写真3.ミヤマアカネの全体図.全体的に丸っこい感じがします.
触角は糸のように細いです.
 


<よく似た幼虫との区別>
 ミヤマアカネはアカトンボのなかまです.アカトンボの幼虫は,どれもとてもよく似ていて,トンボの専門家でも見分けられないことがあります.とくに,写真6の,腹部の第8節の横のとげが短いグループは,区別が難しくなっています.ですから,区別がつかなくて迷っても,それはしかたがないことです.みなさんもたくさん研究をして,見分け方を見つけてください.
 さて,ミヤマアカネは川や用水路に住むトンボであることに注意しておきましょう.用水路から水田に入りこむことがありますから,水田の住人であるように思えるかも知れません.しかし最近は,用水路がなくなったり,水田で農薬を使っているので,川にいることが多くなっています.ミヤマアカネの住むような川には,マユタテアカネもいっしょに生活していることが多いです.幼虫をすくうと,マユタテアカネがまじることが多いのです.そこで,まずマユタテアカネとの区別を説明しておきましょう.
 一つ目は,下唇(かしん)の長さです.写真3のように,マユタテアカネの方が少し長くなっています.また全体的な感じは,写真4のように,マユタテアカネの方がほっそりしていて,ミヤマアカネの方がまるっこい感じです.さらに,写真6のように,腹部の第9節の横のとげがマユタテアカネより短くなっていて,腹部の第9節の長さより,はっきりと短くなっています.ただし,ミヤマアカネの中には,腹部の第9節の横のとげが長いものがあるので,注意が必要です.
 これらの区別点は慣れないとなかなか分かりづらく,区別できないかもしれません.

ミヤマアカネのそっきょくとはいきょく ミヤマアカネの触角と背中のはん点
写真4.マユタテアカネとミヤマアカネの下唇の長さのちがい.
ミヤマアカネの方が少し短い.
写真5.マユタテアカネとミヤマアカネの全体的な姿のちがい
ミヤマアカネの方が丸っこい感じがする.


 さらにミヤマアカネは,マイコアカネヒメアカネ,そしてタイリクアカネコノシメトンボとも区別がつきにくいです.腹部の第9節の横のとげの長さでは,ヒメアカネがいちばんよく似ています.しかし,ヒメアカネはミヤマアカネよりかなり小さく,湿地(しっち)の住人ですから,ミヤマアカネといっしょに採れることはほとんどありません.

そっきょくの長いアカトンボ5種.
写真6.腹部の第8節の横のとげの先が第9節の後ろはしにとどかないアカトンボの幼虫.大きさと,第8節,第9節の横のとげの長さの比かく.
<さがす場所のヒント>
 ミヤマアカネは川や用水路の住人です.写真7のように,小川にやって来て,腹の先を水面につけて産卵します.卵はそのまま冬をこし,次の年の春に幼虫が誕生します.そして,7月のはじめには羽化して親になってしまいます.ですから,幼虫の採れる時期は,4月から7月に限られています.とくに終齢幼虫は,6月から7月にかけての短い期間にしか採れません.

ミヤマアカネの産卵場所.
写真7.産卵にやって来たオス・メスのペア.小川の流れの上を飛んで,産卵する場所をさがしています.