兵庫県の幼虫ガイド
H017. オオイトトンボ Paracercion sieboldii
オオイトトンボ終齢幼虫
写真1.オオイトトンボ終齢幼虫(しゅうれいようちゅう).全長21mm前後.2010.4.17.
<特ちょう>
 オオイトトンボはイトトンボ型の幼虫です.体は,表面がすべすべしていて,やわらかい感じです.写真2上のように,腹部のそれぞれ節の横に,黒っぽいはん点が1つずつあるのが特ちょうです.このはん点はうすいものがあります.尾さいの半分より先に,3つの茶色の大きなはん点がならぶものがありますが,ふつうこのはん点は,写真2下のように,うすくなって見えないことが多いです.尾さいの,枝分かれした細かいスジ(気管分枝:きかんぶんし)は,白や黒のまだら色になっています(写真3).

オオイトトンボの背面図と尾さい オオイトトンボのなかまの尾さい
写真2.オオイトトンボの腹部背面と横からの全形図.
腹部横のはん点も,尾さいの大きなはん点も,あまりはっきりしない.
写真3.オオイトトンボのなかまの尾さい
 


<よく似た幼虫との区別>
 オオイトトンボは,クロイトトンボセスジイトトンボムスジイトトンボの幼虫と,とてもよく似ています.ほとんど区別ができません.大きさ,体の模様,下唇の形や毛の数,どれをとってもほとんど同じです.ただ一つ,少しだけちがいが見られるのは,尾さいの形と模様です(写真3).ただ,尾さいはちぎれたり,ちぎれて再生したりすることがあって,形が変化することが多いので,注意が必要です.
 尾さいがいちばん細長いのは,オオイトトンボです.中央に茶色のスジが入るものが多いです.枝分かれした細かいスジは,あまりつまっていなくて,スジとスジの間があいています.クロイトトンボと同じように,茶色の大きなはん点が半分より先に出ることがありますが,うすいことが多いです.ムスジイトトンボは,尾さいのはばが,いちばん広く,とくに半分より先のほうが,少しふくらむ感じです.セスジイトトンボ尾さいは,クロイトトンボのなかまの中で,いちばんはばがせまく,長さも短いです.
 なお,クロイトトンボでは,腹部の横のはん点と尾さいの大きな褐色の斑点は,必ず見られ,ほかのクロイトトンボのなかまのものより,はっきりしています.しかし,結局,区別できないことが多いので,そのときは,クロイトトンボのなかま(クロイトトンボ属(ぞく))ということにしておくようにしましょう.


<さがす場所のヒント>
 オオイトトンボは池の住人です.どちらかといえば,まわりに木々がある池が好みです.モなどの,水生植物が多くしげっている池に見られます.幼虫は,ほぼ一年中採れますが,終齢幼虫を採るなら,4,5月が適しています.幼虫は,水生植物や底にたまった落ち葉の中にもぐりこんで生活しています.

オオイトトンボの産卵場所.
写真4.水生植物がたくさんしげっている池で,モに産卵している,オス・メスのペア.