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神戸のトンボたち 1.
神戸のトンボの分布の特徴

 神戸市で記録されているトンボ90種(表1 2008現在で92種になっている)を近畿地方で発見されているトンボの種類と比較してみると,近畿地方に生息する止水性(しすいせい)の種(湿地や池沼に生息する種)はほとんど神戸市にも生息していることがわかります.これらのうちで見つかっていないのは,オナガアカネなどの一部の飛来種のみです.一方流水性 (河川など流水に生息するもの) の種は未発見であったり,現在確認が困難なものが多いという特徴があります

 神戸市の地形的要因として,河川が小規模であること,それに対し,ため池が非常に多いことなどがこのようなトンボ相の特徴をうみだしていると思われます.減少傾向にあるトンボの多くが流水性の種で,河川環境の貧弱さに加え,河川改修や水質汚濁によることが大きいと思われます.

 河川中流のきれいな水にすむといわれるキイロヤマトンボアオハダトンボは,過去に武庫川や有野川に記録がありますが,現在の神戸市ではもう生息している場所はなくなってしまったと思われます.また,オオカワトンボハグロトンボなどの中流に生息するカワトンボが減少しつつあることも事実です.流水性サナエトンボ類やグンバイトンボなどは特定の河川に細々と生き残っています.

 大きな河川に生息するナゴヤサナエ,オオサカサナエ,兵庫県北部に生息しているコサナエ,ヒラサナエなどは神戸市には分布していません.ただしメガネサナエについては,須磨海岸で偶然に飛来したと思われる個体が採集されています.

 もう一つ面白いのは,寒い地方のトンボの個体数が結構多い点です.オオルリボシヤンマは六甲山地に多産しています.同じく六甲山地には,数はオオルリボシヤンマに比べると圧倒的に少ないのですが,ルリボシヤンマも生息しています.エゾトンボは櫨谷(はせたに)を中心とした田園地帯や,六甲山地のすそ野に広がる田園,山ろく地帯,丹生山地に点在する湿原に見られます.かつては市街地でもあちこちで飛んでいたといわれています.ヨツボシトンボは西区,垂水区,須磨区のため池でそこそこの数見られますし,アオイトトンボは各地でふつうに見ることができます.



トンボ相の特徴をまとめてみると,上図のように神戸市は大きく5つの特徴ある地域に分けることができる.
  1. 武庫川と道場:河川性のトンボ.
  2. 丹生山地と北区の田園地帯:山間地の田園に適応したトンボ,湿地性のトンボ.
  3. 西区を中心とした播磨の平野・丘陵:田園地域に適応したトンボ.
  4. 六甲山地と市街地:渓流性のトンボ,高地の池沼にすむトンボ.
  5. 市街地市街地でも生活できるトンボ.


 私は,神戸市は,トンボの分布状況から見て,大きく5つの地域に分けられると考えています.上の図と下の表はそれを示したもので,大河川中流(道場町),中小河川中流(北区),池沼(西区),寒冷地・源流(六甲山),人工的水域(市街地),といった区分に分けることができます.これらの各地域で見られるトンボは,それぞれの地域の水辺環境の現状を見事に反映しているといえます.

<表1>神戸市の各地域とトンボの分布状況

市内全体の採集地点数に対する各地域内での採集地点数で分類.
+++:90%以上,++:50%以上90%未満,+:10%以上50%未満,±:10%未満,−:なし.
採集地点数が50%以上になる地域には色を付けた.
青色:流水性種,緑色:止水性種,ベージュ:湿地性種.
※印:偶然の飛来によって採集された種.
種 名 棲息水域 六甲山 西 区 北 区 道場町 市街地
ムカシトンボ 源流 +++
ヒメクロサナエ 源流〜上流 +++
ルリボシヤンマ 寒冷地止水 ++
ノシメトンボ 止水 ± ++
コノシメトンボ 止水 ± ++
アオイトトンボ 止水 ++ ± ±
マルタンヤンマ 止水 ++ ±
アキアカネ 止水 ++ ±
ハネビロトンボ※ 止水 ++
キイトトンボ 止水 ± ++ ± ±
アジアイトトンボ 止水 ± ++ ± ±
クロイトトンボ 止水 ± ++ ± ±
フタスジサナエ 止水 ± ++
カトリヤンマ 止水 ± ++ ±
ギンヤンマ 止水 ± ++ ± ±
ハネビロエゾトンボ 細流 ± ++ ±
ヨツボシトンボ 止水 ± ++ ± ±
ショウジョウトンボ 止水 ± ++
ナツアカネ 止水 ± ++ ± ±
リスアカネ 止水 ± ++ ± ±
キトンボ 止水 ± ++ ±
コシアキトンボ 止水 ± ++ ± ±
セスジイトトンボ 止水・中流 ± ++ ± ±
オグマサナエ 止水 ++ ±
タベサナエ 止水 ++
アオヤンマ 止水 ++ ±
ネアカヨシヤンマ 止水 ++
オオヤマトンボ 止水 ++
トラフトンボ 止水 ++
ハラビロトンボ 止水 ++ ±
マイコアカネ 止水 ++ ± ±
ナニワトンボ 止水 ++
マダラナニワトンボ 止水 ++
チョウトンボ 止水 ++
アオモンイトトンボ 止水 ++ ± ±
ウチワヤンマ 止水 ++ ±
コフキトンボ 止水 +++ ± ± ±
ベニイトトンボ 止水 +++
コバネアオイトトンボ 止水 +++
タイワンウチワヤンマ 止水 +++ ±
オオギンヤンマ※ 止水 +++ ±
ベッコウトンボ 止水 +++
タイリクアキアカネ※ 止水 +++
アメイロトンボ※ 止水 +++
アオビタイトンボ※ 止水 +++
ムスジイトトンボ 止水 +++
オツネントンボ 止水 ++
オオキトンボ 止水 ++
オオイトトンボ 止水 ± ++
タカネトンボ 寒冷地止水 ++ ± ±
ミヤマカワトンボ 上流 ++
ダビドサナエ 上流〜中流 ++
オジロサナエ 上流〜中流 ++
ミヤマアカネ 上流〜中流 ++
ニシカワトンボ 上流〜中流 ++ ± ±
コオニヤンマ 上流〜中流 ++ ±
コヤマトンボ 上流〜中流 ++
ヤマサナエ 上流〜中流 ± ++ ±
アオサナエ 中流 ++
オオカワトンボ 中流 ++
キイロサナエ 中流 ++
モートンイトトンボ 湿地 ++
サラサヤンマ 湿地 ++
ムカシヤンマ 湧水湿地 ++
アオハダトンボ 中流 +++
キイロヤマトンボ 中流 +++
オナガサナエ 中流 +++
メガネサナエ※ 大河川下流 +++
オニヤンマ 細流・上流 ± ±
コシボソヤンマ 上流〜中流 ±
ミルンヤンマ 上流 ± ±
グンバイトンボ 中流
ホンサナエ 中流
ハグロトンボ 中流 ± ± ±
ホソミイトトンボ 止水 ± ± ±
ホソミオツネントンボ 止水 ± ±
ヤブヤンマ 止水 ± ±
シオカラトンボ 止水 ± ±
マユタテアカネ 止水 ± ± ±
ウスバキトンボ 止水 ± ±
モノサシトンボ 止水 ± ±
オオアオイトトンボ 止水 ± ±
オオルリボシヤンマ 止水
クロスジギンヤンマ 止水 ±
オオシオカラトンボ 止水 ±
ネキトンボ 止水 ±
タイリクアカネ 止水
ヒメアカネ 湿地 ± ±
エゾトンボ 湿地 ± ±
シオヤトンボ 湿地 ± ±
ハッチョウトンボ 湿地 ± ± ±

(次ページへ続く)
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