デジタルトンボ図鑑−羽化殻編
ヤンマ上科/サナエトンボ科/アジアサナエ属 検索表
 アジアサナエ属4種1亜種のうち,分布域が重なっているのはヤマサナエとキイロサナエだけである.他の2種1亜種はすべて南西諸島の特定の島々に分布し,分布域は重ならない.したがって,通常の同定作業はヤマサナエとキイロサナエの判別だけということになる.ただ,従来分布しない地域での新発見については,慎重に形態に基づく同定作業を進める必要がある.しかしながら,羽化殻を形態的に判別することはまずできないだろう.終齢幼虫の場合は,泥を洗い落として観察できる腹部背面の斑紋が参考になる可能性がある.
検索キー01
01.西表島と石垣島だけに分布する.・・・ヤエヤマサナエ
− 沖縄本島だけに分布する.・・・オキナワサナエ
− 奄美大島だけに分布する.・・・アマミサナエ
− 種子島,九州,四国,本州に分布する.・・・02
var. ヤエヤマサナエ,オキナワサナエ,アマミサナエには,割合明瞭な側棘が腹部第6節から第9節に,また割合明瞭な背棘が腹部第8,9節に認められる.ヤマサナエは種子島には分布していない.
検索キー02
02.腹部第9節の,節の長さに対する基部の最大幅の比が小さい(上図).メスの場合,原産卵弁が長く(a:赤矢印),腹部第8節の側棘より長いか等長(松木・斉藤,1996).・・・キイロサナエ
− 腹部第9節の,節の長さに対する基部の最大幅の比が大きい(上図).メスの場合,原産卵弁は短く(b:赤矢印),腹部第8節の側棘より短い(松木・斉藤,1996).・・・ヤマサナエ
var. 腹部第9節の最大幅と長さの比は,標本を並べて比較すると比較的分かりやすいが,単一の標本を見るときには迷いが生じやすい(上図の数値はこれらの個体の場合の値).メスについては,原産卵弁の長さがはっきりと異なる.ともに北海道には分布していない.ヤマサナエは本州,四国,九州の各都府県に分布し,隠岐,甑列島にも分布する.キイロサナエは秋田県,山形県,宮城県,岩手県,福島県,群馬県,山梨県を除く本州,四国,九州に分布し,種子島にも分布する.
a.キイロサナエメスの腹部先端腹面,b.ヤマサナエメスの腹部先端腹面.

<参考文献>
松木和雄・斉藤洋一,1996.千葉県産ヤマサナエ属幼虫の区別点.房総の昆虫(17):1-16.